My News Japan My News Japan ニュースの現場にいる誰もが発信者のメディアです

ニュースの現場にいる誰もが発信者のメディアです

ipadで新聞はプラスサムも、出版はゼロサム必至

情報提供
BlogsIMG_A20100129040736.jpg

盛んに報道されてるappleのipadは、なかなか魅力的だ。日本の会社から、こういったワクワクさせる新製品が出てくる予兆すらないことが、日本経済の閉塞感を象徴していると感じた。日本でsonyが電子書籍にいったん参入して撤退したのは、端末がダサくて、事務的で、appleのようなワクワク感がなかったからだと思う。あのデザインと楽しそうでサクサク動く操作性を見る限り、ipadは成功するに違いない。

となると、日本の新聞社と出版社の対応が見モノである。

■新聞はプラスサムゲームに参加せよ

私なんか新聞記者時代は毎日6紙に目を通していたわけだけど、今では一切、紙の新聞を読まなくて平気になった。それでも、ipadで5紙(朝毎読産経日経)の紙面イメージのままに、ささっと目を通せるのなら、5紙合計で3千円くらいなら、払ってやってもいいかな、と思う。何をトップニュースとして扱っているのかで世論が誘導(形成・洗脳)され、それに逆らわない政策をマニフェストに掲げた政党が政権をとるので、物理的なゴミが増えないエコなipadなら、毎日所要1~2分はその作業に費やしてもいい。

この場合、これまでゼロだった需要が3千円分増えるわけだから、新聞社の取り分が1紙6百円のうちの半分、3百円だとしても、3百円分が増収だ。おそらく、いま新聞を定期購読していない20代30代の若者が、今後、何らかのきっかけで突然、定期購読し始めるとは考えにくいから、新聞社にとってはチャンスだろう。

私は、ヤフーニュースのトピックスが若者の新聞購読数を減らしている、とみている。あれほど便利に速報で見せられたら、紙なんていらねーよ、毎日投函されても捨てるの大変だし、となって当然だ。だから、朝日や日経がヤフーに配信しないのは当然の戦略だし、読売・産経・毎日はまったく頭が悪いと思う。ヤフーからいくら貰っているのか知らないが、生涯読者を減らすインパクトのほうが大きいはずだ。1人失えば年4万円、50年で200万である。

では、ポータルと同様に、ipadへの配信もすべきでないのか。私が新聞経営者だったら、ipadへの配信は、とりあえず販売店への卸値(月2千円とか)から始めて、反応を見ながらどんどん値下げしていくだろう。月2千円でアップルに卸すなら、消費者は3千円、4千円払うことになるから、契約数はそう伸びないが、新聞社の損はありえない。

単純に1:1で置き換わるなら新聞社の取り分は減らず、販売店がジリジリ苦しくなって廃業に追い込まれるだけ。朝日は「ASA」にかなり出資もしちゃってるから自分の首を絞めることになって販売店の統廃合に時間がかかるが、日経の場合は販売店との資本関係は基本的にないはず(毎日の販売店などに配ってもらっている併売)だから、置き換わっても困らない。プラス、新たな契約者分が増益に貢献する。

ipadでも、紙面イメージのまま配信するようにすれば新聞広告は見られるわけで、紙面広告の価値は下がらないはずだ。つまり、ヤフー配信がゼロサムゲームなら、ipadは明らかにプラスサムのゲームで、しかも確実に計算できるから(ヤフー配信はマイナス面が見えずらいが)、参加しない理由がない。

■出版は絶望的…希望は、ブランド

アマゾンが印税7割と言っているのは、独占販売契約を結んだ場合だろう。それは書店にも並べてもらいたい著者にとっては困る話なので、紙との併売契約になって、おそらく印税3割くらいで、appleやamazonがボロ儲けするのだと思うが、それでも私はipadでも喜んで出すだろう。流通チャネルは多いほうがいいに決まっているからだ。

相乗効果で従来より紙が売れるということは考えにくいので、出版社の雑誌部門はともかく、書籍部門のほうは、確実に売上を減らすこと間違いなしだ。

新聞はやりようによってはプラスサムにできるが、書籍はゼロサムゲームに突入する。新聞社は自社の正社員がコンテンツ(記事)を書いているが、出版社でコンテンツ(書籍)を書いているのは外部の著者だから、ここが決定的に違う。

新聞記者が「オレの記事は価値が高いから新聞紙面に限らずipadにも売ることにしました」と言い出すことはできないが(サラリーマンだから当然だけど…)、書籍の筆者にはそれができるし、積極的にそうする十分な動機がある(多くの人に読んでもらいたいから書くわけだし、印税も増やしたい)。

出版社は、自分らでipadのような魅力的な端末を開発する努力を怠ってきたのだから、もはや、どうしようもない。かなり絶望的だと思う。リストラ、身売り、合併、縮小均衡…。

私としては、sonyや任天堂が参入して印税競争を繰り広げていただきたい。これまで一律10%で競争がなかったのがおかしい。では、出版社には何が残るのだろう。

・目利き

これまで出版社には、新人発掘の「目利き」の機能があった。出版会議が毎月あって、そこで「我が社の出版物としていかがなものか」みたいなのが議論され、晴れて烙印を押されたものだけが、市場に流通する。だが、ipadは流通コストが安いことから参入の敷居が低くなり、市場原理が働いて、ipadからブレイクする著者も出てくるはずだ。

・ブランド

とはいえ、どんなに売れても、どんなに儲かっても、逆に「お金で買えない価値がある」というのも世の常だ。ipadで100万部売れるのと、岩波新書で100万部売れるのでは

この先は会員限定です。

会員の方は下記よりログインいただくとお読みいただけます。
ログインすると画像が拡大可能です。

  • ・本文文字数:残り973字/全文3,194字
公式SNSはこちら

はてなブックマークコメント

もっと見る
閉じる

facebookコメント

読者コメント

※. コメントは会員ユーザのみ受け付けております。
もっと見る
閉じる
※注意事項

記者からの追加情報