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顧客は何に紐づいているのか?

情報提供
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横軸:顧客が紐づいているものが個人か組織か
縦軸:報酬水準≒スキル難易度の高低
 

僕は会社選びの軸を示した本を出している。最近、Q&Aで質問に答えていて、1つ重要な軸に気づいた。「その会社の顧客が、何についているのか、社員についているのか、会社(法人・ブランド)についているのか」である。

これは、完全な終身雇用の継続が難しくなり、ドラッカーの言葉を借りれば「会社の寿命より個人の寿命のほうが長くなった」時代背景を考えると、重要度が増していく視点といえる。

仕事人生の途中で勤め先の会社が買収されたり、自分が所属する一事業部がたまたま社員ともども売却されたりした場合に、次の会社で社員がどう扱われるのかを左右するからだ。

顧客が組織に紐づく職業

左記の図は、横軸「顧客が紐づいているもの」、縦軸「スキル難易度≒報酬水準」で職業をマッピングしたものだ。

左に行くほど、顧客は法人(会社組織)についている。たとえば赤・青・緑のメガバンクにしても、野村・大和といった大手証券にしても、営業先が会って話を聞いてくれるのは、会社の看板があるからだ。特に銀行は、融資を止められたら倒産しかねないので、どんなに営業マンがダメ人間であっても、丁重に扱われる。(そのような生ぬるい環境では人材は育ちにくい。)

同様に、たとえばANAにキムタクのようなスターパイロットがいて、パイロットが○○さんだから全日空に乗りたいの!と考える人はいない。顧客はANAという会社のブランドにつくのであって、個人ではない。好みのCAがいるから同じ時間帯の同じ便に乗ろうというビジネスマンは一部にいるような気もするが、ほとんどの客はCA個人で乗る便を選ぶこともない。そもそもCAやパイロットを顧客は選べない。(選べるビジネスモデルのLCCが今後できてもおかしくはないが現状ではない)

新聞記者も、ほぼ看板商売だ。朝日や日経という看板があるから記者クラブに入れて、会見に出て、記事が書ける。そして、記事は無署名が原則であり、朝日や日経というブランドで提供される。

僕は最初の赴任先が福岡だった。そのとき、地方支局と東京を転々としてきたデスクに聞いたことがある。「地方で取材した人脈って、続くもんなんですか?」と。答えは「いや、切れるね。リセットされてやり直しだ。大事なのは、人脈がなくても話を聞き出すスタイルを確立することだ」というものだった。

そのときは、日経新聞という看板で商売してるんだから、そんなもんなのか、と思ったが、同時に、そういう職業人生は嫌だな、とも感じた。重要な情報源をいかに蓄積しているかは記者にとって不可欠な資産なのに、会社都合で転々としていたら、一生、職業人として一人前になれそうもない。そもそも名刺の力で取材しているうちは一流の仕事人にはなれないと思い、独立心が高まった。

顧客が個人に紐づく職業

逆に、右側の職業というのは、顧客が個人についている。最初は政治家が典型かと思ったが、よく考えたら、投票のときに必ずしも個人名を書いてもらわなくても、政党という組織への投票で杉村太蔵的な当選が頻繁に起こる仕組みだから、最右翼ではない。顧客(=有権者)は政党と政治家に半分ずつくらい紐づいている。

では最右翼は何かというと、お笑い芸人や作家、アーティストだろう。顧客は完全に個人名で選ぶ。読者は、村上春樹が書いた作品だから読むのであって、それが講談社から出ているのか中央公論新社から出ているのかは、どうでもよい。

エイベックスのような音楽業界では、顧客はアーティストだ。アーティストにはファンがイコールで紐づいているので、顧客=アーティストはプロデューサー個人につく。松浦勝人は浜崎あゆみをプロデュースし、成功させた。だから浜崎は、エイベックスという会社ではなく、松浦という個人についた

エイベックスのお家騒動では、依田氏と松浦氏が争って、アーティストが紐づいていた松浦が勝ち依田が退いた。この事件が教えるのは、顧客(=アーティスト)を自分につけられる職業は不確実性に強い、ということだ。組織が買収されようが、売却されようが、浜崎がついてれば勝ち、顧客が自分についていれば勝ちである。それが、音楽プロデューサーという職業人が目指すところだろう。

右上を目指して仕事をせよ

図の赤い矢印は、目指すべき方向性だ。

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