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02/12 2012
 今回発売となった新刊は、前回までの反省(ターゲット読者がエリート層に限定されて市場が小さすぎ)のもと、対象マーケットを日本語が読める労働者全員と就職を意識した学生、つまり約7千万人くらいに定め、総務省統計局の職業分類をもとに主だった職業をすべて図のなかにプロットし、かつ判定チャート図まで入れて、あらゆる職業の人に役立つものとする、という超親切な設計とした。

 対象マーケットの広さに加え、切り口の新規性(類書なし&新たなコンセプトの提示)、カラ―図版によるわかりやすさ、それらを凝縮したタイトル&装丁…と、著者の知名度以外は、売れる要素をすべて満たしている。

 昨日からアマゾンは「一時的に在庫切れ 入荷時期は未定です」になってしまった。楽天も「入荷予約」。セブンネットも売り切れ。アマゾンには800冊くらいは卸したようだが、1日平均100冊以上売れて、発売1週間ではけてしまった。初版1万部に加え7千部増刷中で、増刷には2週間はかかる(イマドキ、技術革新で5日くらいに短縮できないのか?)。

 売れずに在庫が積み上がっているよりは好ましいが、買おうと思った人の手に届かない、という申し訳ない状況である。地方で小さな書店しかない地域など、ネットに頼っている人も多いだろう。僕は、必要としている人にだけ届けばいい、必要以上に売れる必要はないと思っているが、必要と感じた人でも「入荷未定」では注文できない。

 一方で、リアル書店はというと、紀伊国屋はさすがに新刊コーナーに積まれているが、昨日、大手のジュンク堂を2店舗(西日本地区)まわって見たところ、どちらも転職コーナーの棚にひっそりと飾られ、そのエンドにもなく、全体の新刊コーナーにもなかった。店内の検索機で調べたら、その店には在庫が31冊もあった。

 ネットで買いたいと思った人には在庫切れで届かず、リアル店舗には在庫が有り余っていて新刊コーナーにも並ばず、回収するわけにもいかない。このギャップは許容すべき範囲なのか?元コンサルの私には、このチグハグで不合理な現状が放置されているのが不思議でならない。

■2つの「はやさ」
 問題は、ここ数年のソーシャルメディアの浸透を含むネット販売に対応できる体制になっていないことだ。ネット上(ツイッターやフェイスブック)の、いわゆるソーシャルフィルタリング(あの人がこう薦めたものは間違いない…)を参考に読む本や観る映画を選択する人は、確実に増えている。

 その、リアルと比べたネットの特性は、取り上げるのが早く(時間)、伝播も速い(速度)、という、2つの「はやさ」にある。たとえば今回でいえば、ビジネス書系の著名な書評ブロガー(僕は面識もなければメルアドも知らない)が、まだリアル書店に並ぶ前におそらくネット経由で購入して書評を載せ、すぐにはてブに800超のユーザーがブックマークし、勝間氏の言う「はてブトルネード」現象として伝播し、アマゾン配送センター在庫は2日で切れ、出版社在庫も1週間と持たず消えた(書店には大量の在庫がある)。

 こうなると、楽天&アマゾンのアフィリエイタ―の動きにブレーキがかかる。紹介しても数字がカウントされないからだ。書評ブロガーは、主に自分の「目利き力」(文章表現力や分析力、伝える切り口)による社会への影響力をカウントしたい動機で動いている。必ずしもカネ儲けのためにやっているわけではない。そもそも、書評アフィリエイト収入で生計を立てている人はおらず、主な収入になるほど儲かる仕組みになっていない。せいぜい、こづかい程度である。どれだけ自分のブログ経由で売れたかを見るのが楽しみでやっているのだ。

 だから、今回もそうだったように、誰よりも早く、いち早く発売と同時に入手し、書評を書く。スピードは優れたアンテナの張り方を示す「目利き」の重要な要素である。そして、数字で返ってくる反応に喜びを感じる。だから、注文が減って数字にカウントされなくなる「品切れ」は最悪なのだ。そこからの波及も減る。紹介をやめる人も増える。

 自発的に仮想営業マンとして動いてくれるアフィリエイタ―は、極めて健全だし(読者にとって役立たずの書評家は売れないから淘汰される)、著者・出版社・読者の誰しもにとって、ありがたい存在といえる。また、ネットの世界は圧倒的にレバレッジが利くので、人によっては、営業マン数十人分の仕事と同じくらいのバリューを発揮する。その邪魔をしないことが、どれほど重要か。

 もちろん、販売の予測は難しいので、今回のアフィリエイト対応書店(アマゾン・楽天)の在庫切れは、そんなものだと思う。むしろ初期としては十分だったくらいだ。それ自体は、特に問題ではない。問題は、在庫切れの際の、出版社からの補充体制のほうである。

■正しい販売戦略
 答えを言うと、初版1万部を刷る場合には、4千部くらいはネット向け在庫として、当初2週間だけ、いつでもアマゾン市川などの配送センターに数日で補充できるよう、出版社在庫を確保しておくことだ。はてブトルネードは、起きるかもしれないし、起きないかもしれない。それでも、起きることを想定しておき、起きなかったことを確認してからリアル店に在庫を流すほうが、戦略としては正しい。なぜなら、リアル店舗は2週間遅らせてもダメージは少ないが、ソーシャルメディア上では致命的となるからだ。

 リアル向けには、当初6千部あれば、主要書店で平積みにはなる。リアル書店については、ネットの様子を見てから、実質的に2~3週間、発売を遅らせることになっても、何ら問題はない。リアル書店に足を運ぶ習慣がある人は定期的に店頭に行くので、それが今だろうが、3週間後スタートであろうが、買うものは買うからだ。リアルはいい意味でのろい。

 ところが、ネットは全く違う。瞬発力勝負だ。前述のように、2つの「はやさ」がキーワードなので、発売直後にしかチャンスはない。書評ブロガーは3週間も遅れて書評を書くなどプライドが許さないし(紙の書評やリアル書店の店頭PRでは3週間後でも普通だ)、最初の1週間でブログやツイッターなどで瞬間的に伝播して興味喚起した際にクリック1つで注文できないと、2度とそのツイートやフェイスブックフィードは読まれない。流れていってしまうからだ。だから、初期のアフィリエイト対応在庫は、決定的に重要なのである。

 「品揃えが取り柄です」(=コンシェルジュ的センスではなく)をうたい文句にするジュンク堂のような図書館系書店に、発売当初から各店30冊以上も入れる意味があるのかというと、答えは明らかにノーだ。三省堂などのように、事前の目利き店員との交渉で興味を示し、新刊コーナーに置いてくれる商談がまとまった店には、もちろん入れる。だが、もはや出版点数の増加から倉庫業者のように品さばきに忙しくて目利きにまで手が回らない大多数の書店には、2冊ずつでも、2週間後の納入でもよい。誰も困らない。機械的に発売日に30冊入れても、1週間後になっても新刊コーナーに並ばず大半は書店裏の倉庫に眠っているのだから、急ぐ必要は全くない。

 もちろんこれは、すべての書籍にあてはまるものではない。誰も注目していない御用ライターや、ネットと隔離されて生きている学者などが著者の場合は別だ。はてブトルネード発生の可能性が低いからだ。それなりにSNSを日常的に利用している私のような著者の場合の話である(僕はネット新聞のオーナーだから、ニュースサイト上で告知でき、ツイッターでも告知できるから、ネットから注文が入るのは当然だ)。

 書籍販売における発売直後(数週間)のKSF(Key Success Factors)は、「アマゾン楽天の在庫をなるべく切らさないこと、その補充体制を万全にすること」である。ソーシャルメディア時代に入ったのはここ数年のことなので、出版社もなかなか追いつけないだろう。ゼロベースで販売・マーケ戦略を再構築すべき時期だと思う。

 というわけで、本書に興味を持たれたかたは、ウェブ上の書評(はてブ、アマゾン…)などソーシャルフィルタリングを活用のうえ内容を吟味し、リアル書店に足を運んでいただくか、アフィリエイトはないがリアル系通販をご利用いただきたい。

紀伊国屋ウェブ

丸善ジュンク堂ウェブ

 
08:04 02/12 2012 | 固定リンク | アクセス数(1931) | ブログトップへ | <<前へ | 次へ>> 

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渡邉正裕(WATANABE Masahiro)
(株)MyNewsJapan代表取締役社長/編集長/ジャーナリスト。ほぼすべての主要企業内ホワイトカラーに情報源を持つ。現役社員への取材に基づき企業の働く環境を一定基準で評価する「企業ミシュラン」を主宰。日経新聞記者、IBMのコンサルタントを経てインターネット新聞を創業、3年目に単年度黒字化。
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