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01/24 2016
 私は働き手の立場で取材して12年になるが、全職種をカバーするうえで、介護は欠かせない職種だ。親兄弟も含め、いずれ多くの人に関係してくる介護問題。じっくり取材して計2万3千字にまとめた。

介護福祉士&ケアマネ 「芸能人呼ぶカネあるなら給料上げて!」非効率事業者が淘汰されない、官製低賃金労働者

介護福祉士&ケアマネ 整形外科通いも当り前、低ストレス・重労働でキャリアパス見えず…

 介護職がかなり足りなくなる(既に足りない)という話は、厚労省の“予算獲得ポジショントーク”を加味したとしても、たぶん本当で、今後、大きな社会問題になりうる。足りなくなる理由は、重労働&低賃金でなり手がどんどん増える状況にないから。これは厚労省も半ば認めている。

 記事の最後に解決策を書いたので、再掲しておこう。
 ようは、こういうことだ。

①介護保険制度という法律によってサービスの売値が決められてしまっている

②経営側としては、コストをいかにカットするかを考えるしかない

③一番大きなコストは人件費だ

④介護労働者の賃金をカットして私腹を肥やそう&さらに大きく儲けるための設備投資資金に充てるため内部留保にしておこう

 つまり、売値だけを規制している以上、このサイクルが回り続けて、介護職の賃金が上がるわけがなく、低位安定が続く構造なのである。これが、特養の社福が平均3.1億円の内部留保を持っている背景でもある。

 サービスの売値を規制する以上は、人件費の下限(最賃)も規制しなければいけない(A案)。または、歯医者でやっているように「混合診療も可」(保険以外のサービスも可=混合介護の解禁)として、売値に自由度を持たせる(B案)。この2つの、どちらかしか方向性はない。

 後者(B案)の「混合介護」については現在、八代尚宏教授が書いているとおり、事実上、禁止されている。ただ、顧客が弱ったお年寄りということで、解禁するとトラブルが増える可能性がある。中期的にはやるべきだと私も思うが、即効性の高い解決策としては、A案を先にやるべきだと思う。

 たとえば1時間の生活支援サービスだと、3千円が介護保険から事業者に出て、半分の1500円が訪問介護員に時給として支払われる、というのが現状だが、この3千円のほうを上げても事業者の内部留保と放漫経営に使われるだけだから、絶対にダメである。1500円のほうを「最低賃金1600円」と上方向に規制するのだ。

 そうなると、3千円-1600円=1400円のなかを、いかに効率化してコストダウンするか、という競争になる。IT投資をする、機械化する、M&Aで規模の利益を追求する、といった、介護の効率化が進む。1600円を払えない事業者は倒産して貰い、もっと払っても良質なサービスを維持できる事業者だけに生き残ってもらわなければいけない。

 その健全な競争を進めるために、サービスレベルの透明化が不可欠となる。顧客フィードバックの仕組みと、その開示制度がない限り、外から評価しようがないからだ。以下、そういう要旨で解決策を提示した。

◇解決策として
 介護市場は、書籍の定価販売を義務付けた再販規制のある書籍市場と似ている。本は、再販で末端価格を統制できてしまうために値引き競争がなく、中小零細出版社でも多数、生き残りやすい。民主国家において、多様な言論を確保するという目的に適った仕組みだ。その一方で、講談社・小学館・集英社のような大手総合出版社が過剰な利益を得やすくなっている。この3社は従業員の賃金が異常に高く、平均年収1300万円以上はある。

 介護も同様に、介護保険制度でサービスの販売価格が予め決められ、価格競争はない。国が必ず支払ってくれるため、とりっぱぐれもない。この手の市場では、大手のみが規模の利益を得やすく、儲かり過ぎてしまう歪みが生じる。

 介護の場合、出版における「多様な言論」にあたる「多様なサービス」が必要かというと、そもそもサービス内容まで行政に細かく決められており、むしろ多様性のない一律なサービス提供が求められている。

 運営主体への給付額をアップしたところで、労せずして、「内部留保」と「社福や医療法人の理事長(経営者)ら」に利益が回ってしまうだけ。したがって、現場介護職の平均年収を100万円上げたいなら、制度設計を改革する必要がある。

 1案として、以下を提示する。簡単に言うと、もっと「介護事業者」に厳しくし、「利用者」と「介護労働者」に利益を配分すべき、ということだ。

①各資格ごとに最低賃金を設定

 たとえば、初任者研修修了者1200円、介護福祉士1400円、認定介護福祉士(国が現在、構想中でまだ存在しない)1600円、ケアマネ1800円、主任ケアマネ2000円、などと、民間よりもかなり高めに最賃を決める。

 ただしその分、事業者に支給される介護給付費の総額を増やす余裕は国の財政としてないため、よりメリハリのついた使い方に変える。たとえば、生活支援で「買い物」が認められているが、これは月1回などに制限をつける。ほとんどの場合は買うものが決まっており、通販や、スーパーの配達サービスで事足りるからである。

 「買い物支援には、疑問を感じています。昔からやっていたから、通販を使ったことがないから、という理由で、おばあさんが言ってもきかない。雨でも台風でも、車いすで買い物に行く、と言い張る。4千円分の食料品を買うために。それで、ヘルパーは1時間、1520円の時給を貰い、その2倍強が介護予算から出ています」(Aさん)

 予算がじゃぶじゃぶにあるわけでもない、産油国でもない日本で、この使い方はぜいたくというほかない。もっと命にかかわる、本当に必要不可欠なサービスにのみ、使われるべきだろう。

②利用者によるフィードバック(顧客満足度調査)を厳格に運営

 最低賃金を上げるだけでは、その最低賃金水準に張り付き、介護の質も上がらないため、事業者間の競争原理が、確実に働くようにしなければならない。現状は、だまっていても利用者(顧客)が増え続ける成長市場を背景に「ぬるま湯」となっており、非効率が温存されている。

 解決策として、利用者が選択する際の役に立つ「顧客評価結果」を公表する。アマゾンの出品者への評価やウーバーの利用者評価結果は、いずれも5点満点で表示されているが、あれに近いものである。

 この適正な運営を、行政の最重要業務の1つに位置付ける。現状では、訪問介護の場合、「地域包括支援センター」からの紹介で事業者に申し込みが来るケースが多いというが、これは、利用者がどこの事業者に頼めばよいかわからず、選択するにせよ「近所の噂」程度しかなく、確たる情報がないからだ。

 ここで1つ障害となるのが、利用者からどうフィードバックを得るか、である。たとえばBさんが所属する大手医療法人では、利用者に満足度調査をしても、ちゃんと書かないのだという。

 「利用者さんの声が一番なのに、『ちょうどいい』ばかりで、差が付かないんです。日本人は本音を言わないし、悪い評価をしたら、バレて報復されるんじゃないか、と恐れている。アンケート箱みたいにして持って行って『絶対匿名だから』といくら言っても、信用してもらえないんです」

 顧客評価制度は、このように、運用が難しい。しかしこれがないと、介護職の人手はずっと足りない状態が続くため、やる気のない人(事業者)やダメな人(事業者)が淘汰されず、健全な介護職の労働市場が育たない。乗り越えねばならない課題である。

 最賃で底上げを図ったうえで、徹底した利用者ベースの競争を促進し、評価の高い介護サービスを提供する法人には、より多くの利用者が集まり、給与水準も上がる。競争に敗れた法人は潰れるか、優秀な法人に経営統合される。そして全体の効率が高まり、給与水準が上がり、利用者満足度が高まる。このサイクルを作らねばならない。

 現状で、訪問介護事業で「粗利5割」(Cさん)というビジネスは、まともな経営者にとっては十分に魅力的で、利益をあげられるはずだ。経営センスがなく無駄なコストを放置してしまう零細事業者は、淘汰されたほうが国民のためである。

 競争が続くと、最終的には統合が進み、少数の大規模法人が生き残るはずだ。介護というのは、コンサル会社のように、独創性や独自性が競争力の源泉になる仕事ではなく、同じ内容のサービスを均質に確実に提供する仕事だからである。その場合、IT化、機械化投資を行い、無駄なコストを省いた会社が、より高い給与を支払え、よりよいサービスを提供できるようになる。

 極端に言えば、全部統合してしまって同じ情報システムで、同じ会計システム、同じ給与管理システム、同じ介護保険点数申請システムにしてしまえば、間接業務の無駄を省け、その分を現場の給与に還元できるわけだが、それでは独占の弊害で競争がなくなる。この分野での適切な競争を促す公取の役割は大きい。

 現状の、乱立した多数の法人の経営者給料や間接部門のコストは、本来、介護サービスを全国に効率的に提供するという目的に照らして、全く必要がない。そのうえ、さらに平均3.1億円も貯め込まれた内部留保は、元は我々国民が納めた介護保険料や税金である。最賃の設定と顧客評価を軸とした介護事業者に対する競争政策で、事業者側の立場に偏った介護政策を転換しなければならない。

 
20:13 01/24 2016 | 固定リンク | アクセス数(2307) | ブログトップへ | <<前へ | 次へ>> 

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渡邉正裕(WATANABE Masahiro)
(株)MyNewsJapan代表取締役社長/編集長/ジャーナリスト。ほぼすべての主要企業内ホワイトカラーに情報源を持つ。現役社員への取材に基づき企業の働く環境を一定基準で評価する「企業ミシュラン」を主宰。日経新聞記者、IBMのコンサルタントを経てインターネット新聞を創業、3年目に単年度黒字化。
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