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IT活用で善意が活きる社会に

情報提供
ヨセミテという会社を去年始めたお2人に会って話を聞いた。「ITを公共政策に」というコンセプトでやってる志の高いベンチャーだ。それだけなら思いつく人もいるかもしれないが、ポイントは、やる人間が技術も実績もカネもある、という点。

楽天IPOと「フォートラベル」のカカクコムバイアウトでダブル成功を収めた津田全泰氏と、ミクシィ創業メンバーIPOの塚田寛一氏が経営している。既に2人ともミリオネアだから、短期的な利益などおかまいなしに、ビジョナリーカンパニーを目指せる。しかも技術も経験もあるから失敗の確率も低い。

2人とも普通の会社に入らず「いきなりベンチャーに就職」という奇特組だ。塚田氏など東大法学部だから、気が狂ったと思われても仕方がない状況だったろう。

津田氏は楽天三木谷氏のもとで、塚田氏はミクシィ笠原氏のもとで、社員10人未満のスタートアップ時代から成長を支えてきた超ハードワーカーだったのに、その面影を微塵も感じさせない。

通常のビジネスマンや不況で汲々とするベンチャー経営者と違って、もう全身から余裕たっぷりオーラ。だから成功できたのか、成功したからそうなったのかは今となっては分からない。もう少しプレッシャーがないと事業は進まないんじゃないか、と不安に感じたくらいだ。

成功するベンチャーというのは、こういう優秀な学生を惹きつけ、最大限、使い倒すのだな、と実感した。そして、2人ともタイプが似ていて、実に運の良さそうな、上司にかわいがられそうな顔をしている、と思った。

いろいろ興味深いプランを聞いたが、発表前は差し障りがありそうなので、私のほうからお話したことを書きとめておく。


私も「公共政策にITを活用する」との理念に賛同する。現在の日本は、人間の善意が生かされにくい残念な社会だ。寄付の税額控除すらろくにできないし、政治献金の税額控除もできない。生活者よりも財務官僚の裁量が優先される官僚主権国家だ。これをITの力で変え、民主国家らしくしていく余地はいくらでもある。

たとえば私はコンビニで釣り銭をユニセフなどの募金箱に入れる。小銭はうざいし、募金したほうが気分がいいからだ。最近、iDやエディで決済するようになり、小銭が出なくなったから、募金額が減った。だが私の善意が減ったわけでは全くない。善意を活かす仕組みが、日々の生活から1つ消えただけだ。

人々が持つ善意を、最大限いかせる社会というのは、すばらしい社会である。だが、コンビニ募金の例でいえば、募金額はIT化によって減ってしまったことになる。ヨセミテがやるべきなのは、この逆のことだ。IT化によって善意が活きる仕組みづくりである。

たとえば、EDYで決済した額の1%をプールする仕組みを作る。それをどの団体に寄付するかは、自分で決めることができるようにする。環境でも教育でも人権でも、その人が興味を持つ分野の、具体的なNGO名(ユニセフなど)も指定できるようにする。

その、募金→プール→募金先指定→団体の情報公開(どう活かされているのかが分かる)のウェブ上のプラットフォームを、ヨセミテが作って運営する。楽天のように、人気NGOランキングなど、CGMで培ったノウハウを適用。ミクシィのようなSNSも組み込み盛り上げていく。

ここで決定的に重要なのは、運営会社だ。こういう話は、たいてい週刊金曜日などから連想される、ちょっとあやしげで間違いなく貧乏な市民団体系の人たちが考えるので、一般社会人からの信用を得られにくい。

だが、ヨセミテの最大の強みは、経営者2人が、「もう私たちは億万長者だから、これ以上悪いことをしてリスクを冒して稼ぐモチベーションが、何もないんです」と言い切れることだ。

そして第2の強みは、楽天とミクシィという2大CGMを成長させたというITブランドをまとっており、優秀なウェブシステムを運営してくれるだろう、という信頼感である。さらに学歴も含め、信用を担保する条件は、すべては揃っている。

経団連の「1%クラブ」には嫌悪感を示す若者も、ヨセミテの2人になら運営を任せるだろう。経営情報を開示すれば誰も文句はいわないだろう。経団連のような、政治力にモノを言わせてカネ儲けをしているイメージは2人にはない。起業によるカネ儲けはリスペクトされるべき存在なのだから、堂々と運営に乗り出してほしいのである。

日本では2ちゃんねるのように、負のエネルギーを増幅するITは盛んだが、善意を増幅させるITプラットフォームがない。だから、それをやるんです!と宣言してほしいのである。

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 2017/01/02 23:32
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