判決日に東京地裁前で黒薮氏の支援者らが配布したチラシ。裁判の背景には、偽装部数報道を妨害しようという読売の意図が感じられる。
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ジャーナリスト・黒薮哲哉氏と読売新聞社の法務室長・江崎徹志氏との間で争われた著作権裁判で、東京地裁は3月30日、黒薮氏の完全勝訴とする判決を下した。江崎氏が要求していたネットサイトからの催告書の削除は認められなかった。裁判所は、催告書に著作物性がないことに加え、そもそも作成者は江崎氏ではなく喜田村弁護士である可能性が高いと認定。江崎氏が催告書の作成者である、という虚偽を前提に起された訴訟そのものに疑問を投げかけた。虚偽の事実をもとに、裁判制度を利用して口封じを図るSLAPPを起こした読売の責任は重い。
【Digest】
◇虚偽の事実を根拠に提訴
◇SLAPPが日本に上陸
◇火種となった回答書
◇催告書は喜田村弁護士が作成か?
◇「喜田村弁護士に相談しました」
◇MNJにも催告書
◇催告書の著作物性も否定
◇虚偽の事実を根拠に提訴
東京地裁の清水節裁判長が判決の主文を読み上げると、傍聴席から弾けるような拍手が沸き起こった。
「原告の請求を棄却する。訴訟費用は原告の負担とする」
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訴訟の発端になった回答書。喜田村弁護士らは、この文書が著作物であると言いがかりをつけた。
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3月30日、午後1時35分。
勝訴の瞬間だった。被告の汚名が消えた瞬間でもある。
読売新聞西部本社の江崎徹志法務室長がわたしを著作権法違反で提訴したのは
、昨年の2月だったから、第1審が終わるまで1年あまりの時間を要したことになる。裁判は、当初予想していたよりもはるかに早いテンポで進んだ。
判決から数分後、判決文を読んでわたしと弁護団は判決の中である重大な事実
認定がなされているのを確認した。弁護団は、それを声明の中でも明らかにした。
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東京地裁は、「(黒薮注:問題となった催告書の)作成者が原告であると考えることはできない」と判示した。本件催告書の「実質的な作成者は、原告とは認められず、原告代理人(又は同代理人事務所の者)である可能性が高い」と判断したのである。読売新聞社は、本件催告書の作成者が江崎氏ではないことを知りながら、本件訴訟を起こしたことになる。
つまり、読売新聞社は、本件訴訟それ自体が本来成り立たない請求であることを知りながら、虚偽の事実を根拠として裁判を起こしたのである。
(声明の全文はここをクリック)
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声明は端的に言えば、読売は催告書の作成者が江崎氏であると偽って裁判を起こしたという趣旨である。
ちなみにこの声明のタイトルは、「読売新聞社は、司法制度を利用した言論弾圧を真摯に反省し報道機関・言論機関としてあるべき行動をとれ」となっている。
◇SLAPPが日本に上陸
SLAPPという言葉が日本で使われるようになったのは、ここ数年の現象である。わたしが知る限り、ジャーナリストの烏賀陽弘道さんが、みずからが被告にされたオリコン訴訟を指して使ったのが最初だ。この外来語を大胆に意訳すれば、言論封殺を目的とした裁判のことである。解決したものも含めると、これまでに次のようなSLAPPが起きている。
※武富士VS三宅勝久、山岡俊介、寺沢有、野田敬生
※キャノンVS斉藤貴男
※革マル派VS西岡研介
※オリコンVS烏賀陽弘道
※安部晋三VS山田厚
わたしを提訴したのは、表向きは企業ではなく、江崎氏個人であるが、同氏は読売新聞の法務室長なので、実質的には読売新聞社が相手だったといえよう。
実際、江崎氏の代理人は、
真村訴訟や
平山訴訟
などこれまで読売の新聞販売店訴訟で「活躍」してきた喜田村洋一弁護士であった。本当に江崎氏が個人的に仕掛けた訴訟であれば、わざわざ東京在住の喜田村弁護士に代理人を依頼することはなかっただろう.....この続きの文章、および全ての拡大画像は、会員のみに提供されております。
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判決文で、著作物性の有無について述べた部分。
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判決文のうち、催告書の作成者が原告の江崎氏ではないことを検証した部分。 |
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