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潰れそうな大学名を非開示 受験生の立場無視の検察・裁判所天下り先審査会

情報提供
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大学の定員割れと決算書の小科目の情報非開示を決定した内閣府情報審査会会長・清水湛(あつし)氏の経歴。東芝HPより
 今年6月、兵庫県の聖トマス大学と神戸ファッション造形大学、LEC東京リーガルマインド大学が、相次いで来年度以降の学生募集の停止を決定した。少子化で、今後ますます、経営に行き詰まる大学は増える。そこで受験生が大学を選ぶ際の判断材料にするため、私大経営ランキングの作成を試みたところ、経営情報を握る文科省天下り先の特殊法人は、非開示の一点張り。理由を聞くと、検察・裁判所の天下り先の審査会が非開示の最終決定を下したからという。天下り役人が2重にのさばって受験生を犠牲にしている醜悪な構図だ。
Digest
  • 64大学が経営危機
  • 受験生には「知らしむべからず」
  • 「情報公開しても黒塗りになります」
  • 検察・裁判所の天下り先「情報公開・個人情報保護審査会」年収1806万円
  • 「受験生の視点ゼロ」の非開示理由
  • 「経営実態が明らかになるので非公開」審査会

◇64大学が経営危機
◇受験生には「知らしむべからず」
◇「情報公開しても黒塗りになります」天下り特殊法人
◇検察・裁判所の天下り先の審査会は年収1800万
◇受験生のためという視点ゼロ
◇「経営実態が明らかになるので非公開」審査会

64大学が経営危機

大半の私大は国の補助金を受けて運営されているので、行政は各学校の経営状態を把握しているに違いない。そう思って調べてみたところ、案の定、文部科学省の天下り先の特殊法人「日本私立学校振興・共済事業団」が、破綻危機の私大を調べていることがわかった。

それは07年12月21日付の日経の夕刊の「私大・短大『経営困難』98法人 15法人が破綻危機」というタイトルの記事。記事によれば、同事業団が入学者数動向や現金収支(キャッシュフロー)、外部負債、運用資産に着目して、経営状況を7つに分類したところ、全国の大学のうち64大学と34短大、計98法人が経営困難状態のイエローゾーンにあったという。

イエローゾーンのうち最悪の「いつ潰れてもおかしくない」が、9大学、6短大、計15法人。2番目に悪い「在学中に破綻の可能性」は、11大学、1短大、計12法人。「蓄積資金を取り崩してなくなれば破綻」が38大学、22短大、計60法人。「黒字だが借金過多」が6大学、5短大、計11法人とある。だが、肝心の大学名が伏せられている。

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上は経営がヤバイ大学の実態を行政がしっかり把握していたことが明るみになった07年12日21付の日経の夕刊の記事。下は、その日経記事について日本私立学校振興・共済事業団が報道関係者向けに見解をまとめた文書

受験生には「知らしむべからず」

そこで筆者は、日本私立学校振興・共済事業団に「経営困難の98法人はどこですか?」と聞いてみた。しかし、「情報公開はしない」の一点張りで埒が明かない。理由を聞くと、「日経新聞の報道後に問い合わせがよくくるので、それについて当事業団の見解をまとめた文書があるので送ります」という。FAXで送ってもらった。その文書は「日経夕刊(12/21)記事の概要と補足説明」というタイトルの3枚刷りのペーパー。読んでみるとこんなことが書いてある。

「今回の記事は、12月18日に開催された私立大学社会的責任(USR)研究会のフォーラムにおいて、日本私立学校振興・共済事業団の職員がアドバイザーとして報告した内容の一部を、日本経済新聞社の記者が記事にしたものです。

記事の元となったUSR研究会の資料は私学関係者向けの内部研修資料として提供したもので、受講者に分かり易くするために担当者がコメントを付けたものです。このまま抜本的な対策を取らずにいたら資金ショートに至ることもありえるという意味で、私学経営者に危機意識を持ってもらうために、やや誇張したコメントを付けましたが、事業団として公式にこの表現を決めているものではありません」という。

そして「B4(最悪ランクのこと)であっても不採算部門の廃止、遊休資産の処分、大幅な人件費の削減などの抜本的な対応をとることにより正常状態に戻ることが可能な場合もあります」という。

「正常状態に戻ることが可能な場合もあります」という言い回し等々、読めば読むほど、ますます15法人の破綻危機というのはかなり信憑性が高いという気がしてきた。肝心の大学名の情報公開については、こう書いてある。

「私立学校の情報の公開については、その公共性と社会的責任から、自ら公開すべきものです。現在取り組んでいる経営改善方策を説明することで、社会からの信頼を得ることが必要です」と。

自ら公開しないからこそ、突然ボコボコ大学が潰れて社会問題になっているというのに、「自ら公開すべき」というだけ。これでは到底、血税で運営される公共の特殊法人としての「社会的責任」を果たしているとはいえない

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上が今年6月現在の情報公開・個人情報保護審査会委員名簿。赤線が検察、裁判所の天下りOB委員。下は同審査委員会の07年度の実績。行政の情報不開示の決定を「妥当でない」として開示するよう決定したのはたったの2%

上は、大学の定員割れ、決算書の小科目の情報非開示を決定したときの内閣府情報審査会のメンバー。赤枠で囲んだ第一部会の面々が担当した。下は、その時の答申(私立大学・私立短期大学入学志願動向の個別データの不開示決定に関する件、03年8月1日に答申)に記された同審査会が大学の定員割れの実体を公開しない理由

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読者コメント

孔子によると2009/07/04 14:08会員
有澤 誠司2009/07/01 20:14
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