偽装され巨大化した発行部数、景品を使った拡販手口、記者クラブや産学癒着。世界のメディア界で異色の存在となった日本の新聞社を、海外メディアはどう見ているのか。米国のクリスチャン・サイエンス・モニターやオーストラリアのディプロマットを舞台に記事を書いてきたジャーナリストの神林毅彦氏に、率直に語ってもらった。神林氏は、日本で常態化している偽装部数が米国の新聞社で発覚したら「即刻つぶれるだろう」と言う。
【Digest】
◇給与水準より報道に生きがい
◇偽装部数の問題を取材
◇新聞社を批判できない大学教授
◇新聞を過信する日本人
◇パック・ジャーナリズム
◇記者クラブの廃止が必要
---かつて包丁を景品に使って新聞拡販をやった大新聞社がありますが、同じ事を米国でニューヨーク・タイムズがやればどうなりますか?
銃で撃たれますよ(笑)。危険な時は、本当に撃っていいんですから。米国では、押し売りはできません。他人の意見を押しつけられるのを非常に嫌う国民性ですからね。
日本の新聞社が採用してきた「押し紙」制度や景品を使った拡販などを見ると、新聞社には封建制度がそのまま残っているという気がします。また、真村さんの事件に象徴されるような(新聞社と販売店主の)徒弟関係も、封建制度の名残でしょう。
---海外から来た記者は、日本の新聞をどのように見ていますか?
日本で発行される英字新聞について言えば、彼らは日本の英字新聞を非常につまらないものに感じているようです。たとえばDAILY YOMIURIやJAPAN TIMESを読んで、彼らがもらす典型的な感想は、「これって、大学のカレッジ・ペーパーじゃないか」ということなんです。紙面の内容が貧弱なんです。推測ですが、調査報道が少ないこと、ワイヤー(通信社)のニュースやコラムが多いことが原因だと思います。
また、日本の新聞は同じような記事が多く、情報が少ないのに、記者の給料が高いので、多くの外国人記者が不思議に感じているようです。
| | | カレッジ・ペーパーとは、大学の学生が発行している新聞。規模の大きな大学では、月曜日から金曜日まで、週5回発行されることが多い。大学当局からは独立した編集権を持ち、たとえば特定の学部を批判することもある。 |
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◇給与水準より報道に生きがい
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『クーリエ・ジャポン』の7月号に掲載された米国紙の発行部数ランキング。日本の新聞社の発行部数がいかに異常かが分かる。
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---専属でない場合、米国の新聞社の平均的な原稿料はいくらぐらいですか?
安いですよ。長さにもよりますが、1000ワードぐらいの記事で、1本300ドル前後が相場です。しかし、そんな安い原稿料でも競争が激しいのです。原稿料をそれほど気にしないライターも少なくないと思います。わたしも含めて記事を発表する喜びの方が大きいようです。
クリスチャン・サイエンス・モニターの場合は、記事を書く前に、300~400ワードの概要を編集長へ送ります。
それから意見交換をします。編集長のOKがでれば、記事を仕上げます。しかし、このハードルがかなり高いのです。記事を送った後、またそこで修正や訂正などを経て、最終原稿にします。とくに、この過程でとても多くのことを学ぶことができるわけです。もちろん、英語の勉強にもなりますよ(笑)。
---新聞社の専属記者の待遇は?
ミシシッピー州の地方紙の初任給は、130万円~150万円ぐらいです。いいところで180万円。200万円はいきませんね。もちろんミシシッピー州の物価は安いですが、大卒者の初任給が平均で200万円弱ぐらいですから、新聞記者の給料は平均以下です。
フロリダ州の中堅クラスの新聞で、わたしの友人が働いていました。彼女は大学院を卒業していますが、初任給は350万円ぐらいでした。大卒の場合は、300万円を割ります。
中堅クラスの新聞の編集長になると500万円から600万円ぐらいだと聞きます。
ニューヨーク・タイムズクラスになると、.....この続きの文章、および全ての拡大画像は、会員のみに提供されております。
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「押し紙」(偽装部数)を回収するトラック。ビニール梱包に使うヒモの色は、社により異なるので、トラックが複数の系統の配売店を回っていることが分かる。
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社説を第1面に掲載する日本の新聞。これは2007年5月3日付の『毎日新聞』。
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