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出世とリストラの新条件

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出世とリストラの条件は、これで決まる。自分の属する業界を念頭に置いて考えてほしい
 30代~40代「やや負け組含みな正社員」がターゲット読者と思われる『週刊ポスト』。20代から特に何も考えず会社のいいなりになり、なんとなく営業をやったり、何となく研究をやってきた、そして『週刊SPA』を読みふけり、気がついたらポストの読者になっていた、という人も多いはず。次のリストラのターゲットはあなたかもしれない。どうすれば出世できるのか、また、どうすればリストラされずにすむのか考えてみよう。
Digest
  • 若手には「厳しい成果主義」
  • 中高年社員にはリストラ危機
  • 労働分野の既得権温存政権
  • 完全規制企業
  • グローバル市場競争企業
  • 専門分野を持つ、リーダー人材になる
  • 激変する②準規制企業

(本原稿は『週刊ポスト』10/23日号記事「ソニー、野村証券、みずほほか出世とリストラの(新)条件」の企画相談に乗った際のメモ)

10月2日に発表された「雇用調整助成金」受給者、つまり社内失業者は211万841人(2009年8月、速報値)にのぼり、10か月連続で増加中の「完全失業者」数361万人(8月)とあわせると、572万人も失業している。就業者数は6260万人(8月)なので、実質失業率は8.4%とかつてない高水準だ。

若手には「厳しい成果主義」

日本では、この10年の間、非規制産業を中心に、急激に若い世代限定の成果主義が導入され、若い世代でのみ、年功序列を改める動きが進んだ。

日本の国内法においては労働条件の不利益変更の制限が厳しいため、40代以降の社員は成果がなくとも降格はほとんどされず、解雇もない。そこでそのしわ寄せが若い世代にきたのである。20代30代のまだ昇給していない世代だけが成果主義となり、昇格に重いハードルが課されたのだ。偽の成果主義だった。

つまり、若い人ほど出世の条件が厳しくなり、本当に一部のデキる人しか出世できない。かつては大卒なら全員が課長になれ、半分くらいが部長になれた企業でも、今の20代30代で課長になれるのは3人に1人だけ、といった例も続出している。

みずほ銀行の若手社員は、こう言っていた。「以前はほとんどの行員が課長級までは昇格できたが、現在では、生涯の間で、同期の半数程度しか昇格できないと社内では言われています。つまり課長代理(年収800万円程度)のまま行員人生を終える人が半数もいる」

中高年社員にはリストラ危機

不利益変更(降格・減俸)や解雇ができないといっても、ここ1年のように業績が急激に悪化すると、希望退職者を募集して、かなり恣意的に退職プログラムに応募させるケースも増えている。日本IBMでは今年5月、社員3人が、退職強要の差し止めと一人当たり330万円の損害賠償を求める訴訟を起こした。いずれも40代、50代の社員だ。

日本では解雇の金銭的解決が制度化されていないため、不幸なことに、自発的に辞めるよう「仕向ける」しかない。事務系から営業系への無茶な配置転換や、地方への配転、そしてIBMのように延々と面接を重ねて退職プランを説得するなどの行為で、会社側がネチネチと退職に追い込む手法がとられることになる。

つまり、20代30代は、どうやって同年代との競争に勝って出世しようかと頭を悩ませ、40代50代はどうやってリストラを免れようか(今の給与を守るか)と頭を悩ませているのが現状だ。この流れが、急激に強まっていると感じる。

労働分野の既得権温存政権

そんななか誕生した鳩山政権は、雇用調整助成金を継続、支給要件も緩和する方向で、人材の流動化を阻む政策を強化。これは「連合」の意向を受けてのものだ。鳩山政権がスタートした9月17日、最初の来客は、民主党の有力支持団体「連合」の高木会長であり、連合は「労働者を一社内に閉じ込め、正社員として終身雇用されるべき」という考え方を持つ。

現政権はパナソニック労組出身の平野官房長官、トヨタ労組出身の直島経済産業大臣と、労組の露骨な利益代表者が政権のど真ん中に入り、連合のしがらみから逃れられないため、労働分野の改革(つまり成長分野への人材のシフト)は、できない運命にある。「労働分野の既得権温存政権」だ。

さらに問題なのは、民主党政権にマクロ経済政策や成長戦略が見えないこと。小泉政権下では、連合の既得権は温存されつつも、規制緩和・構造改革によって雇用は増え、失業率は低下した。だが民主党のマニフェストには規制緩和・競争政策のキの字も、構造改革のコの字もない。

となると、雇用は減り、税収は減り、「痛み止め」の雇用調整助成金の財源もなくなり、企業は社内失業者をリストラ、そのリストラ費用がかさみ若手の人件費も増やせない。どうみても民主党政権の雇用政策は絶望的な一時しのぎだ。このジリ貧のサイクルが4年間も続く。

いわば瀕死の患者に痛み止めを打って問題を先送りし、根本治療は行わない。こうした環境下では、今後の出世の基準、リストラの基準は何によって決まり、どのように変化していくのか。それぞれが置かれている環境別に分類して示したのが右上の図だ。ご自身が所属する企業はどこなのか考えて見ていただきたい。

完全規制企業

①の完全規制企業は、規制産業でかつ、代替物の脅威がないビジネス。

事業が国内市場向け(日本の法律は国内にしか通用しないため)であり、既に飽和状態の国内市場を維持するのがミッションだ。たとえば東電の営業は今ある顧客を維持するのみで、新規開拓はほとんど考えられない。独占市場なので、そもそも営業という概念が薄く、黙っていても客は来る。

従って、社員の評価指標は、内向きとなる。非顧客志向だ。この分野の多くの企業は、学歴主義であり、減点主義。今ある市場をどう守るか、が問われる。競争にさらされてこなかったためマネジメントの概念もなく、したがって、自分の仕事上の成果を正当に評価されたい、などと考えてはいけない。上司からの印象評価になりがちだ。

「民間でできるものは民間で」と主張した小泉政権に批判的な鳩山政権では、このエリアは最強だ。日本郵政の官業への揺り戻しにみられるように、競争を否定する動きが目立つ。

このエリアの出世の条件は昔から変化がない。成果主義の導入も形だけだ。学歴など変えようのないもの以外で出世したければ、イエスマンになりきることである

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