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オリンパス公益通報“対象外”とされた社員が語る 「通報には弁護士レベルの知識が必要」

情報提供
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内部通報したことで不当な異動を強いられた濱田正晴さん。現役のオリンパス社員のまま裁判を闘っている。
 どの法律に違反し、誰がどのような不利益を受けるかまで具体的に言わないと、この法律では保護されない──。オリンパスが取引先の機密情報を知る社員を引き抜こうとしていることを知り、コンプライアンス室に内部通報した濱田正晴さんは、通報者名を漏洩された挙句にキャリアを無視した配転を強いられるなどパラハラを受けている。だが、公益通報者保護法による救済を求めた裁判では「公益通報者」と認定されなかった。「内部通報には弁護士レベルの知識が必要で、これではザル法だ」と憤る濱田さんに話を聞いた。(訴状、判決文は記事末尾にてPDFダウンロード可)

 光学機器メーカー、オリンパス(東京都新宿区)に勤める濱田正晴さん(49)は2007年6月、当時の上司が、取引先の機密情報を知る社員を引き抜こうとしていることを知り、同社の手続きに従ってコンプライアンス室に内部通報した。ところが同室長は、濱田さんが通報者であることを上司らや人事部長に漏洩、まもなく、15年の営業職キャリアを無視した配転を強いられ、パラハラを受け続けている。

 濱田さんは、配転命令は通報者の不利益な取り扱いを禁じた公益通報者保護法に違反するとして、08年2月、会社と上司2名に対して、配転命令の無効と精神的被害に対する慰謝料など1000万円の支払いを求め、東京地裁(田中一隆裁判官)に提訴した。

 しかし今年1月、通報は「公益通報に当たらない」と判断され、完全敗訴。配転についても、「被告会社が原告の通報を理由に、本件配転を命ずることは考えにくい」との判決であり、相変わらず、企業勤務経験のない裁判官らしいトンチンカンな判定が下っている。

公益通報者保護法による初の司法判断は、会社側の行為がどのような法令に違反するおそれがあるか(今回ならば不正競争防止法)、誰のどのような利益を損なうのか、を明らかにして通報しなければ公益通報者と認定されず、保護もされない、という非常識なザル法であることが浮き彫りとなった。

 会社側に一方的に有利な法律となっており、「リスクを負って不正の可能性を通報する社内の者を守る」というそもそもの法律の趣旨に反した欠陥法であることがはっきりした。濱田さんは控訴して闘い続けている。

現在は東京高裁で控訴審の審理が進められています。次回期日は5月19日(水)11時30分から東京高裁820号法廷でおこなわれます。閉廷後、原告弁護団による傍聴者への説明も予定されています。濱田さんにお聞きたいことがありましたら、ご連絡ください、追加取材いたします。※ただし弊社会員に限る。
連絡先:info@mynewsjapan.com

 オリンパスは06年12月、同社が販売している鉄鋼製品の精密検査機器「NDTシステム」を導入した関西の鉄鋼メーカーS社から、NDTシステム設置の中心的な技術者だったAさんを採用し、さらにS社からもう1人の中心的技術者、Bさんを採用しようとしていた。裁判では、取引先の機密情報を知るBさんを引き抜く行為が「公益通報」にあたるのかどうか、が問われた。以下、詳細に見ていこう。

◇米国最優秀セールスとして表彰も

濱田さんが収集してきたオリンパスのカメラの一部(濱田さん撮影)
 濱田さんはもともと技術者で、1981年4月、日立電子(現在の日立国際電気)に入社。84年12月末まで同社に勤務し、翌85年1月から中途採用でオリンパス光学工業株式会社に入社した

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訴状の冒頭部分。

判決の一部。公益通報者保護法の「通報対象事実」に該当しないと結論づけた部分。

オリンパスグループの「コンプライアンス」カード。社員は常時携行する。

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読者コメント

社員の請求認める判決2011/08/31 15:56会員
2010/05/17 23:17
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記者からの追加情報

細かい事実誤認がありましたのでお詫びして訂正いたします(2010/6/2)。
×「S社との関係を正常化させるため、濱田さんは07年6月、コンプライアンス室長らと社外で面談し」
○「濱田さんは07年6月、コンプライアンス室長らと社外で面談し」
本文:全約8100字のうち約6800字が
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