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KDDI電波公害事件 自宅付近の基地局撤去申し入れも、情報開示すらせず

情報提供
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UQコミュニケーションズの会社概要。強引な基地局設置に批判が出始めている。総務省の監督責任も問われる。
 電話・通信会社が凄まじい勢いで全国に無線基地局を張り巡らしつつあるなか、電磁波による健康被害が懸念されている。その手口は、総務省の定める電波防護指針の基準値を根拠に、住民に対して「安全」をPRし、基地局の場所を提供する地権者と一体となって強引に突き進む、というもの。そこには企業倫理の著しい低下がみられる。先月、自宅から約200メートルの距離にKDDI系「UQコミュニケーションズ」の基地局を設置されてしまった筆者が、撤去を求め、電話会社と地権者を直撃取材した。自宅付近の危険な基地局を見つける方法も教える。(地権者との交渉記録2分50秒音声を記事末尾に収録)
Digest
  • 基地局を見つける方法

電話・通信会社が住民感情を配慮せずに、ケータイ電話やワイヤレス・ブロードバンドの基地局をわがもの顔に設置することが日本各地で問題になっている。

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UQコミュニケーションズの田中孝司社長。田中氏は6月14日付けで取締役会長になる。写真は「会社案内」より。

また、基地局の設置場所を提供することで、電話・通信会社のビジネスに加担して賃料を手にする地権者に対しても、住民から冷ややかな視線が向けられ始めている。

たとえば鎌倉市の北鎌倉駅近くで豆腐店を営む関本敏子さんは、地権者について次のように話す。

「わたしは地権者に基地局を撤去するように申し入れたことがありますが、『そんなに危険なものなら、政府が設置の許可を出すはずがない』の一点張りでした」

関本さんの自宅から100メートルの範囲に、PHSを含めると4つの基地局がある。電磁波の影響なのか、関本さんは頭痛や肩の痛み、それに全身の倦怠感に苦しみながら、豆腐をつくる日々を送っている。

また、横浜市南区の主婦・山中孝子さんは、あやうく自宅の真横に「UQコミュニケーションズ」の基地局を設置されそうになった。UQコミュニケーションズとは、もともとKDDIが2007年に設立した会社である。京セラや三菱東京UFJ銀行なども資本参加している。

 山中さんによると電話会社側の態度は、許し難いものだったという。

「基地局設置に先だって、事前の説明がなされたのは、基地局に隣接するたった4軒だけでした。その他の住民に対しては、わたしたちが説明を求めてはじめて、説明会が行われたのです。もちろん住民は、設置に反対し、設置させませんでしたが」

基地局から発せられる電磁波が健康に及ぼすリスクがあることを住民が知れば、住民運動が勃発する公算が強い。それゆえにUQ側(厳密には、設置作業を請け負ったウイングソフト社)は、当初、地域全体に対して説明をすることを避けたのではないだろうか。

今年になってわたしは本格的にケータイ基地局問題の取材を始めた。それ以来、「知らないうちに基地局が立っていた」とか、「地権者が住民との交渉を拒否している」といった話を繰り返し耳にしている。基地局を設置するプロセスには、かなり大きな問題があるようだ。

◇UQのWiMAX「繁栄」の裏側で

皮肉なことに去る5月、基地局問題を取材しているわたし自身が、基地局問題の当事者になってしまった。自宅近くにUQコミュニケーションズの基地局が設置されたのである。これにより取材のモチベーションが跳ね上がった。

 UQコミュニケーションズ のホームページでは、次のように事業を説明している。

 UQコミュニケーションズ株式会社(本社:東京都港区、代表取締役社長 田中孝司、以下UQ)は、「WiMAX(ワイマックス)でいつでもどこでもインターネット」の実現を目指し、全国各地で基地局建設を進めております。

WiMAXとは、高速ワイヤレス・ブロードバンドのことである。UQは凄まじい勢いで、基地局を量産している。今年の5月だけで、東京都内に新設された基地局は56局に及んでいる。また「2009年度末現在、WiMAX屋外基地局開局数は7,013、基地局設置市区町村数は447」(ホームページ)に達している。

こうした状況の下で、わたしの身の上にも基地局問題が直接ふりかかって来たのである。

 5月の連休の最中にわたしは、埼玉県朝霞市の自宅近くにある賃貸マンション「ハイブリッジ朝霞」の屋上に基地局のアンテナが立っているのを発見した。同マンションを管理している 埼玉県住宅供給公社 に問い合わせたところ、UQの基地局であることが分かった。

もちろん基地局設置に先立って、わたしは説明会などの案内は何も受けていない。

工事を担当したのは、KDDIテクニカルエンジニアリングサービスとのことだった。UQとKDDIテクニカルエンジニアリングサービスの所在地は同じになっており、実質的に一心同体に近い。

自分自身が基地局問題の当事者になって、わたしが最も強く感じているのは、企業戦士たちが事業を推し進めるために、なぜ、自分が「人間モルモット」の役割をしなければならないのかという疑問だった。

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総務省が作成した「安全のパンフ」。電話・通信会社の社員が持ち歩き、「安全」の宣伝に利用している。常套句は、「国が定めた電波防護指針を守っています」。

基地局の設置は、国が定めた電波防護指針を守っている限りは、違法行為でないので、歯止めがかからない。しかも、こまったことに、日本の電波防護指針は、諸外国に比べて、10倍から100倍の緩やかな基準になっている。オーストリア・ザルツブルグ州の勧告値と比較すると、1000万倍の隔たりがある。

さらに電波を管理する総務省管轄の通信局による点検は、5年に1回しか行われない上に、基地局に関する情報も公開の対象外になっている。つまり電話・通信会社のビジネスが、政府の手厚い保護のもとで野放し状態になっているのだ。

わたしは朝霞市のケースを対象に、UQ、地権者、それに町内長の3者の言い分を取材した。取材するにつれて、根深い社会病理を感じた。

◇地権者、「KDDIに尋ねて下さい」

基地局の地権者に対しては、これまで電話で2度に渡って基地局の撤去を申し入れたが、「電波のことは分からないのでKDDIに尋ねてくれ」と執拗に繰り返してきた。3度目の会話は録音した。ただ、電話の相手が地権者本人なのか、それとも親族なのか、あるいは第3者なのか、厳密には分からない。

しかし、話の前後関係からすれば、本人の可能性が高い。(会話は、ほぼそのままテープを翻訳したものだが、意味を変えない範囲で編集した箇所もある。)

音声(90秒短縮版)

黒薮:ちょっとお尋ねしたいんですがね・・

電話相手:はい、どちらさんですか?

黒薮:黒薮と申しますけど

電話相手:あの・・何の要件で

黒薮:基地局の件ですけど

電話相手:また、その話ですか?

黒薮:はい

電話相手:KDDIの方に聞いてください

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朝霞市議会が受理した基地局問題に関する請願書。

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てぃんくる2010/06/28 10:44
市議会議員2010/06/11 18:30会員
筆者の黒薮2010/06/09 09:51
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