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アートネイチャー3 「というかこの写真、私なんです」

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汚れた頭皮をいやというほど見せつけられると、何かすまない気持ちになってくる。 また、乗り物酔いしやすい人は、手ぶれ画面で吐き気がするので、気をつけるべし(本当)。
 「こちらでは育毛、育毛という言葉を使ってますけど」と強調するカウンセラー。ヘアチェックにより、日のもとにさらされる私の頭皮。頼んでもいないのに、丸山さんの真相までが明らかに。こいつはある意味、脅迫だ!
Digest
  • スコープでヘアチェック
  • 育毛? 発毛?
  • アートネイチャーは調査・改善勧告を受けたのか
  • 皮脂そのものを作らないようにする?
  • 「将来的なことを考えて」の説得力
  • 毛穴が窪んでない!

スコープでヘアチェック

彼はテレビとスコープの用意を整えてから、椅子に座る私の背後に立ち、私の頭皮を指でおさえつけるように揉んだ。

「すごく堅いですねえ。頭皮が堅いと下の毛細血管が押し付けられてしまうので、赤く血管が浮き出ます。これ、洗ったの昨日の夜ですよね」

 彼はそれから、スコープを私の頭皮に近づける。

テレビの画面には、白っぽい頭皮が映し出された。赤くはないようだ。安心した。

「(前頭部をずっとチェックしつづける)すごい脂性ということでもないですねえ。ただ、多少ですねえ、シャンプーで落ち切れてない皮脂が……こういうところに詰まってますねえ。(と、画像をキャプチャーする)」

--脂についてなんですけど、後頭部や側頭部は禿げないじゃないですか? あれは脂が少ないから禿げないということですか?

「それもありますねえ。あと、ホルモンの関係で、ここらへんは女性ホルモンが支配していると言われてましてえ……」

 後頭部と側頭部を見せてもらうが、脂の量は見た目には変わらない。皮脂の垢も同じくらいある。

しかし、カウンセラーはそこは撮らずに、また頭頂部の皮脂をキャプチャーする。

育毛? 発毛?

「頭(洗ったの)、昨日の夜ですよね」

この質問が多い。印象づけようとしているのか。

「頭皮の状態は悪くないですね。でも、皮脂が詰まっている。まだ脂が液体のままでは、シャンプーで取れるんですけど、固まってくると、取れなくなる。すると、脂が毛穴内部に溜まっちゃうんですね。一番問題なのは、次に生えてくる時に、毛穴の中に皮脂が溜まると、邪魔になる」

--じゃ、できるだけ洗浄力の高いシャンプーを使ったほうがいいということですよね。

「えー、シャンプーして、育毛剤をつける、それが最低限自分でやるケアです。でもなかなか育毛剤が入ってないということで、レベルアップする、というか、蓄積された皮脂を取るということまでやるんですね」

 彼は質問に答えていない……洗浄力の強いシャンプーのほうがいいかという問いなのだが。さっき彼は、石鹸は洗浄力が強過ぎて必要な皮脂まで取る、と言った。

それが本当なら、石鹸でいいんじゃないの、という気がする。

「つまりワンランク上のヘアケアがいると。……こちらでは育毛、育毛という言葉を使ってますけど」

そう、いまやヘタに「発毛」という言葉は使えない。

 なぜなら、昨年平成15年6月に東京都の生活文化局が、育毛サロンやカツラメーカーに対してのあまりのクレームの多さに、ついに徹底的な調査を行い、複数のメーカーに 勧告 を行ったからである。

「発毛」という言葉の使用は、不適正行為の2番、『虚偽説明・断定的判断の提供』のなかの 「元のようになる」「確実に生えてくる」に当てはまる。

そもそも、「発毛」という言葉は、以前から業界内のガイドラインで明確に禁止されているものだった。これは、いかに、ガイドラインが機能していなかったかを如実に示すものである。

アートネイチャーは調査・改善勧告を受けたのか

 都は、この文書において、
 「調査対象事業者の全てに不適正な取引行為が見られたので改善指導を行いました」 とし、
 「業界の自主基準である『 ガイドライン 』では不適正取引行為の防止、合理的な中途解約の確保等消費者保護を図るには十分でないので、国に対して、育毛・増毛サービスを特定商取引法の特定継続的役務に追加指定することを提案要求していきます」
と締めくくっている。

だが、なぜか国側はこの要求を却下し、いまだこの業界は自主規制の中で経営しているのが現状である。(15年度に引き続き、今年度の要請についても、国は却下した)

さて、都によれば、今後改善されない場合は社名の公表もありうる、ということだが、こちら消費者側としては、優良なサロン選択のためにもこれはぜひとも欲しい情報だ。

都の発表によれば、違反事業者の年間売上額は「10億円未満1社、10億~50億円未満3社、50億~100億円未満2社、100億円以上2社」とある。

都の生活文化局消費生活部取引指導課に電話をかけてみた。昨年に警告した年商100億以上の2社とはどこかを尋ねるが、やはり「社名は公表できません」とのこと。ちなみに、この年商とは、平成14年度決算のデータをもとにしているという。

さて、調べてみよう。業界のリーディングカンパニーであるアデランス(東証一部上場)は、平成14年2月期で売上高741億円(連結決算)で経常利益167億円と、かなりの高収益だ。

2番手のアートネイチャーは財務データを公表しておらず、四季報にもない。業界2位なのだから、もっと堂々としていてもらいたいものだ。それでも探すと、『消費経済審議会特定商取引部会 業界ヒアリング資料』という文書に、平成13年の売上高280億円という数字を見つけた。翌年の平成14年度に100億を割る事はあるまい。

 結論から言えば、この 2社以外 に、平成14年度決算で年商100億以上と思われる企業は存在しなかった。どうもアートネイチャーはビンゴっぽい。神経質にもなろうというものだ。

しかし、この業界、どこも稼いでいる。改めて人々の髪への意識の高さが感じられる。

皮脂そのものを作らないようにする?

ともかく丸山さんはパンフレットを取り出す。ついに、売り込みがはじまった。

「まあ、こちらでは育毛、と呼んでいますけれども、皮脂を強制的に取っちゃう。脂をとかす溶液をかけながら、揉み出してゆく。そうすると、溶液が白く濁ってきて、排水溝に、白いバターみたいなのが出るんですが、それがシャンプーで取れない皮脂です」

と、丸山さんは、熱く語ったあとに、特に押し売りではないと言う感じでフォローをする。「まあ……別に双田さんそこまで考えてらっしゃらないですよね?」

--でも、月に1~2回っていうけど、誰だってクレンジングしても、またすぐ脂出てきちゃうわけでしょう。意味ないんじゃないですか?

それだけに留まらない。必要以上に脂分を取り除くと、皮膚の均衡作用により、ますます皮脂分泌が盛んになるおそれがあるのでは。

「それはですね、毛穴を開いた後、プレローション、ていうのがあるんですが、これを入れると、皮脂が溜まらなくなるんですね。結局、取ってもまた皮脂が出たら同じことじゃないですか。だから、免疫を作っていくんですね」

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これがアートネイチャーの育毛剤。ただでもらった。 クチナシ・クララ・エンメイソウのエキス配合とあるのだが……。
--あー、……免疫?

「いや、あの、ここに書いてますが、えー、と、(読み上げる)……過酸化脂質を取り除くだけでなく、皮脂そのものを作らないようにする……ていうことですが、一応実験して、これが認められて、特許も取ってるんですね」

 つまり、抗酸化効果と、皮脂分泌抑制作用を持つ薬効成分が入っているということか。ホームページでは、 クチナシ・クララ・エンメイソウ を配合したローションとあった。

 けれども、これらは、いずれも 市販のヘアケア製品 にも普通に含有されている成分だ。そんなすごい効果があるのか?

--皮脂そのものを作らなくするって、本当ですか……?

 「(取り乱したように)いや、ま、リアップ、リアップというのはもともと副作用から出来たものなので……」

ここで、丸山さんはなぜか私が一言も言ってないのに、リアップの説明を始めた。わけがわからない。

「将来的なことを考えて」の説得力

 「えー、リアップというのは、ミノキシジルっていう成分があるんですが、アメリカではロゲインっていう名前で売られていたんですが、……ただ……その……効果としては……そんなに生えてくるものではないです。もちろん、ウチのこれも(パンフレットを指して)ですが、その、生えない……」

と、丸山さんは、はっきり言った。

「まあ……抜け毛を防ぐのに、効果的かってことです」

 彼はパンフレットをめくり、段階的増毛方法と書かれたページを開いた。壁にでかでかと貼られているものと、まったく同じだ。
 そこには、いたいたしい若ハゲの頭部が真上から写されており、カツラの増毛法(おそらくマープ増毛法とやらだろう)により徐々に毛量が増えていく様子が示されている。酷いハゲが、8つの段階を経て、最後には立派なフサになっていく。

じっと見ていると、なんとはなしに、「あはれ」な感情がわき起こる。まるで実験動物みたいだ。ああ、こうはなりたくはない……。

「さて、今……ですね、例えばですよ、こういう人がですよ(増毛処置前の禿げ頭を指し、次に増毛によってかなり毛量の増えた頭部を指差した)こんなふうに生えてくるというのは、根本的にありえない。ありえない!」

--そうなんでしょうねえ……。

「というかね、この写真、私なんですけどね」

--……え?

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これが、噂のヘア・フォー・ライフなのか? ヘアコンタクトのパクリ(?)のヘア・フォー・ライフ?
 「これ、カツラなんですよ。こうするとわかる」

と、丸山さんは、ふさふさした前髪をあげる。あらわになったその額、前髪の生え際からは……なにやら薄い紙のようなものがはみでている。

 驚いた。この紙みたいなものに髪がくっついているようだ。

おお、丸山さん、あんたカツラだったのか! 

「僕も薄くなっちゃった人なんですけどね(哀しく笑う)」

--いや、すげえ……まじ、ほんとにわかんなかったスよォ。

と私もなぜか後輩言葉に。しかし、見事にやられた。もしかして、これが噂のヘア・フォー・ライフなのか? 偉大な技術だ、これならハゲてもオッケーだ!??

 しかし……興奮が冷めると……彼には失礼だが、カツラの人に育毛の話をされても説得力ないなあ、などという思いが胸に膨らむ。
 このカミングアウト、営業としては逆効果ではないか? 

確かにカツラや増毛を希望してやってきた客ならば、今のカミングアウトで落ちるかもしれないが。

 ああ、そうか、パンフレットに『育毛か増毛かその選択は?』とあった。やはり、アートネイチャーは、育毛サービスよりカツラを売りたいということなのか。

だが、そうなると今度は育毛サービスの信頼度に説得力が薄れる……。

「まあ、双田さんの場合、今はまあそんなに症状でてないですけど、将来的なことを考えると、まあ多少毛穴が詰まっているというのはあるんで。まあ、将来的なことを考えてどうするか、ですが、ね」

そう言われると、少し怖くなった。前言撤回だ。ものすごい説得力がある。眼前のカツラの人に「将来的に」なんて言われると、どうしても恐ろしい想像をしてしまう。こいつは脅迫だ。

そして丸山さんは、先程キャプチャーした私の頭皮の写真を、プリンターのトレーから手にとった。いつのまにかプリントしていたのだ。机に置かれた一枚の紙に、私の頭皮の4つのキャプチャー画像が印刷されている。

毛穴が窪んでない!

--(おそるおそる……)これ私の写真ですか?

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私の頭髪写真。確かに、毛穴は窪んでいない。皮脂の塊も。あきらかに選んで取っていたのだが、……やはり私の頭皮は不健康なのだろうか? 不安でたまらない……。

「ええ……こう見てみますと、あ、だから、毛穴が窪んでない。これ! 窪むんだ、本当は!(叫ぶ)」

--ええ……と、これ、でも! やっぱりシャンプーしたあとだったら窪むんじゃないですか?!(叫ぶ)

「(私を抑えるように)ふう……いやあ……まあ、いまどうこうなってるってわけではないんですよ。……ですけど、まあ、予防っていう意味で考えると、みなさん育毛剤は効かない、効かないっていうんですけどね、毛穴に皮脂が詰まってるので効かないっていうところですよね」

私が何か反論しようとすると、丸山さんは手で制し、

「考えてください。たとえばシャンプーしてリンス買って育毛剤買えば、1ヶ月、1万円はいきますよ。育毛剤だけで、平均六千円前後といわれているんです。1年間使えば、12万じゃないですか。それで浸透しなきゃ意味ないじゃないですか。そこで最大の効果を出すために、サロンがあるんです」

--でもねえ、値段がね。

 「うちはね、安いんですよ…」

丸山さんはにやりと笑う。

--えっ、そうなんですか?

 「お見せしましょう」
 と、丸山さんは、鼻歌を歌いだしかねない様子で、パンフレットをめくりだした。
 ……知らないうちにあっちのペースに巻き込まれているような気がするが気のせいか。

ともかく、アートネイチャーの施術は、本当に、安いのだろうか……? 気になる。

(つづく)

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35歳M禿げ進行中2008/02/01 02:49
あふ2008/02/01 02:49
tes2008/02/01 02:49
メガネ2008/02/01 02:49
kt2008/02/01 02:49
かめおい2008/02/01 02:49
朝日2008/02/01 02:49
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