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下に行けば行くほど疲弊の度合いが増す“トヨタピラミッド”システム

情報提供
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「トヨタは社会的責任を果たせ」と約800人が集まった。2月11日、愛知県豊田市の山之公園にて。
 大規模リコールを引き起こしたトヨタ車の急加速の原因は「電子制御装置の欠陥ではなかった」と米運輸省が発表し、問題が解決したかのような空気も蔓延したが、昨年10月に150万台、今年1月に170万台と、リコールは続いている。こうしたなか労組関係団体は「劣悪な労働条件改善、下請単価切り下げ中止、働く者に利益を還元しろ」との要請書を提出。デンソーやトヨタ車体などは受け取ったが、トヨタ自動車本体だけが2月上旬、受け取りを拒否。下請け各社から、「下に行くほど疲弊の度合いが増すシステム」について実例が報告された今年の「トヨタ総行動」を、現場から報告する。
Digest
  • トヨタの純益4900億円は何からもたらされているか
  • 復職を拒否されているアイシン機工社員も抗議の声
  • トヨタ東京本社にも抗議活動

トヨタの純益4900億円は何からもたらされているか

要請書を拒否されたのは、第32回トヨタ総行動実行委員会の代表団。「トヨタ総行動」は、トヨタ自動車グループに対し、労働問題の改善や社会的責任を果たすことを要求する行動で、毎年2月に実施されている。要請書の受け取りを拒否(2月4日)された一週間後の2月11日に行われ、約800人(主催者発表約1000人)が愛知県豊田市の山之手公園に集まった。

米国で当初指摘され、集団訴訟の根拠にもされた技術的欠陥が“濡れ衣”だったと証明された事実はたしかに重要だろう。ただ、これで事態が好転したとは言い難い。技術的な問題に加えて、トヨタ車の製造に実際に関わっている人々が、過重労働で疲弊し、下請各社が年に数回にわたる納品単価切り下げを強要されていることが、欠陥車製造につながる可能性があるからだ。

この「トヨタ総行動」に集まるのは、実際にトヨタ自動車の生産にかかわっている人が多いので、彼らが働く現場でいま何が問題になっているかわかる。したがって、トヨタを通して日本の組織・企業・社会を見ようとする場合に、大切なイベントなのである。

総行動当日は、大雪の中、朝7時から5か所でビラまきが始まり昼一時には豊田市内の山之手公園におよそ800人が集まった。集会のはじめには、愛労連(愛知県労働組合総連合)の榑松佐一(くれまつ・さいち)議長があいさつした。

「トヨタショックから2年半。大変な派遣切りが行われ、09年には愛知県の製造業の10・1%が廃業に追い込まれました。10年間続いた賃金引下げこそが不況の原因だ。全労連だけでなく、財界のシンクタンクである富士通総研もこのことを指摘しています。不況の打開は賃金の引き上げ、働ける人には仕事をつくることが最も重要ではないでしょうか」

全労連事務局長の小田川義和氏も出席し、次のように語った。

「トヨタ総行動とは日本の経済の変化と大企業のあくなき減量経営との戦いの歴史でした。一昨日、決算見込み純益4900億円(2011年3月期の連結業績見通し)と発表されました。マスコミはその原因をアメリカや中国での自動車販売の伸びだと言っている。しかし大切な点が抜けている。2009年5月から始まったエコカー減税でトヨタのプリウスは、日本国内で17か月連続で販売台数トップになっていることは見逃せません。

2010年度のトヨタの決算額には、私たちの税金が含まれている。その一部を労働者や下請企業に還元しろと要求したいと思います。来年度の予算要求で法人減税5%を受けても、国内の雇用を増やさない投資もしない、と言い切っているじゃありませんか。利益を受けるのは、こうした横暴を続ける大企業しかない。もっと声を上げて批判していかければならない」

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これまでに貯めた内部留保の一部を活用して賃上げや雇用創出に費やせという要求が多かった。(トヨタ総行動の集会で)

小田川事務局長は、エコ減税(エコカーの補助金の総額は5837億円)がトヨタに利益をもたらしていることを指摘したが、もうひとつ「輸出戻し税」でトヨタは3219億円も潤っている(2007年度)。どちらも私たちの税金が元になっている。

また、一昨年末から始めている部品メーカーなどに対する3割原価下げが下請業者に大打撃を与えており、原価削減に対応するために人を減らし、残った人間が長時間労働を強いられている。

その結果、工場で検査をする人間が立ったまま一瞬眠ってしまうという状況も報告されている。MyNewsJapanで紹介したアイシン機工では、残業がひどかった時期は、1日平均400個弱の製造部品のうち良品は30個程度だったという。

これは一例にすぎず、トヨタ自動車をトップとしたピラミッド社会の中で、自動車の生産現場(ほとんどは部品工場でトヨタの工場は組み立て)は疲弊しているのだ。さらにシステム開発分野に携わる関連企業ではうつ病などに罹患する人が多く、例えばトヨタコミュニケーションシステムで

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今年2月4日に出された「トヨタおよび関連企業の『社会的責任』を求める要請書。要請書を形式的にせよ受け取ったのは、デンソー、トヨタ車体、豊田自動織機、アイシン精機、豊田紡織。しかしトヨタ自動車だけが受け取りを拒否した。

労働総研が発表した内部留保の活用提案。トヨタ総行動のチラシに印刷されていた。

2月24日には、トヨタ自動車東京本社まえに約110人が集まり、10年来の争議が続くフィリピントヨタにおける大量解雇問題を解決しろ、と要求した。

トヨタ自動車東京本社前で配布されていたビラ。上は表。裏には、東京本社に提出された申し入れ書。

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千葉貴士2013/02/01 16:12
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