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「尖閣諸島」は8島(5島3岩礁)なのに、東京都が米紙に出した意見広告では3島に減らされた謎

情報提供
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東京都が米紙『ウォールストリートジャーナル』に出した「尖閣諸島」に関する意見広告。「尖閣諸島」(the Senkaku Islands)は8島(5島3岩礁)の総称だが、添付された地図には3島しか掲載されていない。本文でも「尖閣諸島」という表現を、本来の8島ではなく3島の意味で使った部分がある。
 昨夏、東京都が米紙に出した「尖閣」意見広告をめぐり奇妙な事実が明らかになった。「尖閣諸島」(the Senkaku Islands)は8島全体をさす総称であるにもかかわらず、意見広告では、石原都知事(当時)が購入を表明した3島だけを地図に載せて「尖閣諸島」と説明していたのだ。米軍に貸与中の久場島(現在も民有地)と大正島の2島は、米国領と勘違いしているためか、特に説明もなく地図から省かれ、本文でも「尖閣諸島は3島」とも誤解されかねない表現だった。残りの領土は放棄したいという意見表明なのか。都は「紙面の制約」と釈明するが、1600万円もの税金で「理解と支援」を求めた意見広告にしてはお粗末で、むしろ「米国のために尽くしたい」という石原氏の卑屈な精神ばかりを伝える内容にも見える。当該広告を全訳とともに検証する。
Digest
  • 「尖閣諸島」は8島(5島3岩礁)の総称
  • 3島しか載っていない地図
  •  アメリカ人のみなさんへ
  • 意味が異なる4つの「尖閣諸島」
  • 久場島は今でも民有地
  • 「海外紙参照にした」は本当か
  • 英語報道は「尖閣諸島」=8島と厳格表記
  • 2島を軍事借用しながら「中立」の米国流二枚舌
  • 日本領土認めない米に「理解と支援」求める愚

「尖閣諸島」は8島(5島3岩礁)の総称

「尖閣諸島」とは東京都のホームページによれば、こう定義づけられている。

「尖閣諸島は、南西諸島西端に位置する魚釣島、北小島、南小島、久場島、大正島、沖ノ北岩、沖ノ南岩、飛瀬などから成る島々の総称です」

国土地理院の地図をみても8島全体にかかるように「尖閣諸島」の文字が書き込まれている。「尖閣諸島」はこれら主要8島の総称というのが日本政府の定義であり、国際的にもそう表明している。

 次にこの8島からなる「尖閣諸島」が英語でどう表現されているのかをみてみよう。外務省のホームページの例はこうだ。
There is no doubt that the Senkaku Islands are clearly an inherent part of the territory of Japan, in light of historical facts and based upon international law. Indeed, the Senkaku Islands are under the valid control of Japan. There exists no issue of territorial sovereignty to be resolved concerning the Senkaku Islands.

訳(外務省):尖閣諸島が日本固有の領土であることは,歴史的にも国際法上も疑いのないところであり,現にわが国はこれを有効に支配しています。したがって,尖閣諸島をめぐり解決すべき領有権の問題はそもそも存在していません。

「尖閣諸島」は「the Senkaku Islands」と訳されている。

「尖閣諸島」=「the Senkaku Islands」は東京都のホームページでも同様だ。

The Senkaku Islands is the general term for the islands located at the western end of the Nansei Islands. They consist of Uotsuri Island, Kita-kojima Island, Minami-kojima Island, Kuba Island, Taisho Island, Okino Kita-iwa, Okino Minami-iwa, Tobise, and other islands. 

訳(東京都):尖閣諸島は、南西諸島西端に位置する魚釣島、北小島、南小島、久場島、大正島、沖ノ北岩、沖ノ南岩、飛瀬などから成る島々の総称です。

「尖閣諸島」は英語の「the Senkaku Islands」と訳され、それぞれ主要8島の総称であることは明白である。

この「尖閣諸島」の定義を踏まえたうえで東京都の意見広告をみていこう。

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東京都が米紙に出した意見広告の地図(上)。「尖閣諸島」のうち久場島と大正島は拡大部分の範囲から完全にはずれている。沖縄県が「OKINAWA」と国表記と同じ字体になっている。下は広告掲載の契約書。契約金額は1676万円。

3島しか載っていない地図

意見広告が掲載されたのは2012年7月27日付の米紙『ウォールストリートジャーナル』だ。都立図書館で現物をめくってみたところ、タブロイド版の5ページ目くらいに見つかった。

「PAID ADVERTICEMENT」(有償広告)の表示の下に「To The American People(アメリカ人のみなさんへ)」という見出しがついている。左半分が文字で、右側には写真と地図が載っている。

写真は魚釣島周辺を空撮したものだ。島影は3島。魚釣島と南小島、北小島。写真の下に説明がある。

The Senkaku Islands are the group of uninhabited islands historically under Japanese sovereighnty in the East China Sea.

訳(三宅・以下同じ):「尖閣諸島は東シナ海にある一群の無人島で、歴史的に日本の主権下にある」

 見出しをはさんで写真の下には地図があった。

説明文の位置などから考えて「尖閣諸島」の地図という趣旨であることはあきらかだ。地図は日本列島周辺のもので、「尖閣諸島」部分が囲みで拡大されている。その拡大地図をみて筆者は疑問を覚えた。写真と同様に島が3つしかない。「尖閣諸島」は8島だと定義されているはずなのになぜ3つなのか。

写真が3島しか写っていないのはまだわかる。全部が一度に写りきらないのだろう。だが、地図は違う。全部かきこむことはできる。もっとも岩礁の3つはさすがに小さすぎて難しいかもしれないが、久場島と大正島だけでもかけばよい。

本当はかいているのだけれども印刷でつぶれたのかとも考えた。だが違うことに気がついた。そもそも地図で拡大した海域自体が狭く、久場島と大正島の位置から外れているのだ。最初から「尖閣諸島」に入れていなかったような扱いである。

なぜ3島なのか。不思議に思いながら本文を読みすすめた。そして驚いた。本文でも「尖閣諸島」が3島になっている部分がある

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東京都のホームページに掲載された「尖閣諸島」の定義。8島などの「総称です」と明記している。英語では「theSenkakuIslands」という訳語をあてて、8島などから構成される(Theyconsistof・・・)とより明確に表現している。

米軍の射爆場となっている久場島と大正島。日米地位協定により周辺海域・空域を含めて米軍の許可なしに日本人が立ち入ることはできない(上・東京都HP)。射爆場の名称は「黄尾嶼」「赤尾嶼」と中国の呼び名が使われている(下・第11管区海上保安部HP)。

外務省のホームページに掲載された「尖閣諸島」8島の位置と所有関係。昨年9月の国有化以前は4島が民間所有だった。現在は久場島が民間所有。下は国土地理院の地図。

久場島と大正島を射爆場として日本から借りているアメリカだが、「尖閣諸島」の領有権については「中立」という矛盾した立場をとっている。米上院CRS報告書に掲載された「SenkakuIslands(Diayou)」の地図と、領有権に関して米国は「中立」(neutral)と明記した結論部分。

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