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日揮、プレハブキャンプで過ごすワイルドすぎるプロジェクト現場

情報提供
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Baa優良企業予備軍
(仕事4.0、生活3.0、対価4.0)
 1月に発生したアルジェリアの人質事件では、プラントに滞在中だった日本人17人のうち10人が亡くなり、そのうち5人が日揮の社員だった。「社内では、珍しいというか、運が悪かった、という受け止め方が多いです」(社員)。というのも、交通事故や建設現場の落下事故で亡くなった例はあったが、誘拐やテロなど犯罪に遭って亡くなった例は、日揮85年の歴史のなかではじめてのことだからだ。城塞都市のように塀に囲われ、警備も行き届いているため、「むしろその国の都会よりも、ずっと安全」というのが共通認識だったという。
Digest
  • 予想してなかった事態
  • そこに仕事があるから
  • 「引けばすぐに韓国企業が入ってくる」
  • 建設部門は拒否できない
  • オンとオフが明確なキャンプ生活
  • 20代のうちに1回は駐在
  • 超多国籍な現場
  • 海外でキャリアを積むチャンス
  • 家族が来れるような場所ではない
  • 体力系と頭脳系が1:1
  • 現場は30代が多い
  • 旧帝大が6割超
  • 「これはエンジニアの仕事ではない」
  • 10年目までに1回異動
  • 海外の現場では倍増する給料
  • 高齢者が元気な会社
  • 韓国勢との競争に

予想してなかった事態

一方、休日にキャンプを離れて市街地へ行く際には、交通事故や、強盗などの犯罪に遭うリスクが高まる。実際、アブダビ(アラブ首長国連邦)で2010年8月、日揮の駐在員ら日本人4人が高速道路上の交通事故で死亡している。

それでも、「社内のルールに従っていれば問題はない」と思われていた。たとえばマニラ(フィリピン)の事務所でさえ、1人で外出してはいけないルールになっており、移動のために運転手つきの車が用意されているという。

マニラは、外務省の危険情報4段階(「退避勧告」「渡航延期」「渡航検討」「十分注意」)のなかで一番低い「十分注意」が出されている程度で、インドの主要都市などと同じレベル。かなり保守的で、リスク管理には気を使っている。

「今回のような(事実上の)自爆テロは、社内の誰も、実感として予想してなかったと思う。我々は、報道カメラマンみたいに戦地に仕事に行くわけではないですから…」(社員)。それが、実は同等以上のリスクがあることが分かったのが、今回の事件だった。今回は日本人10人が犠牲となったが、日本人の報道カメラマンは過去に10人も亡くなっておらず、サマワ(イラク)に行った自衛隊員も無事帰還している。

そこに仕事があるから

今回の5人の社員のなかには、29歳で犠牲になった社員もいた。中堅社員によれば、「同年代も多数、アルジェに駐在していたし、あのようなキャンプに行くのは、うちではごく普通のローテーション」だという。

自爆テロが断続的に発生するバクダッド(イラク)にも事務所があり、昨年は日本企業としてイラク戦争後、初のイラクでの一括受注を行い、火力発電所冷却水装置の再建プロジェクトを遂行中だ。戦争の後は、国は混乱しているが、復興需要が高まる時期でもあるため、チャンスとなる。

「誰かがやらなきゃいけないなら、ウチが儲けに行こう、と。何もない砂漠に最初に作る人が、マラリアやテロなど、一番、リスクが高いのですが、それでも行く。なぜあえて危険な場所に行くのかと言われても、『そこに仕事があるから』としか言いようがない」(社員)

今回狙われたアルジェの天然ガスプラント(イナメナス)は、アルジェリア国営公社と英BP等が運営しており、日揮はプラントの建設を受注していた。イナメナスの天然ガス田施設は5年前に完成し、今回の仕事は、小さな設備を追加したり、補修やメンテをする追加的な仕事だった。

BPを経由してヨーロッパに向かうガスであり、日本国内へのエネルギー供給とは無関係。お国のために、愛国心で働くわけでは全くない。仕事内容は「エネルギープラントの建設」と明白。そこに使命感や、やりがいを感じられるか、がこの会社で働くうえでのカギとなる。

「引けばすぐに韓国企業が入ってくる」

アルジェ国内には他にも2カ所のプラントがあり、3か所で計50人ほどの日揮スタッフが駐在していたが、日本人は今回の事件を受けて全員がいったん退避中。だが、重久吉弘グループ代表は既に事業継続を表明しており、社内の空気としても「辞める気は全然ない」という。

「アルジェはサウジと並んで昔からの有力顧客だし、新しい土地に行ってキャンプを作り、小さな村ができるまでには、すごいエネルギーが必要で、それが会社の財産。手放すことはありえないです。ウチが引けば、すぐに韓国企業が入ってくるでしょう」(社員)。もちろん事件が起きたからといって、他の現場からも、日本人を引き揚げたりはしていない。

「機材を盗まれないようガードマンをつけて、再開できる準備をして退避してる。日本人比率は減らすかもしれませんが、社内的には『行ってくれ』、現場社員のなかにも『作りかけたものだから最後までやりたい』という人がいるはずなので、半分は戻ると思います」(社員)

いずれにせよ、契約主体の社員ということでコミットメントが強いため、日本人スタッフは必要となる。ただ、建設や設計の技術を担う人材の一部を外国人に置き換えることは可能だ。「プラント建設業界では、1カ月300万円で働いて1カ月休んで、を繰り返して年間2千万円くらいを稼ぐ外国人エンジニアがいて、プロジェクトを渡り歩いています。それくらい払うと、来る人は必ずいます」(社員)。この業界がテロに屈することは全くなさそうである。

建設部門は拒否できない

では社員は、キャンプへの駐在は危険だ、嫌だ、と拒否できるのか。今回亡くなったのは、プロジェクトマネジメントを専門とする「プロマネ」部門と、実際の建設業務を専門とする「建設」部門の社員だった。ほかの技術系の主なキャリアとしては、「設計」部門がある。どの部門でも、プロジェクトの中で、現地プラントに赴くフェーズがやってくる。

「建設部門だと、まさにそれ(現地のプラント建設)が仕事なので、行けと言われたら、拒否はできないですね。その他の部署だと、

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3つのフェーズに分かれ、仕事量が変動していくプラント建設事業。プロジェクトマネジメントが重要となる。(同社サイトより)

日揮のキャリアパスと報酬水準

給与所得の源泉徴収票(30歳前後)

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