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日本でも中間層の職がなくなる?――リンダ・グラットン教授と考える仕事の未来――

情報提供
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リンダ・グラットン
ロンドン・ビジネススクール教授。『ワーク・シフト』著者。経営組織論の世界的権威で、英タイムズ紙の選ぶ「世界のトップビジネス思想家」の1人。英『エコノミスト』誌の「仕事の未来を予測する識者200人」に名を連ねる。組織におけるイノベーションを促進するスポッツムーブメントの創始者。
(撮影:今井康一=以下同じ)
 先進国の人間にとって、グローバル化は新市場開拓のチャンスである一方、雇用を失うリスクとも背中合わせだ。欧州では若年層の失業問題が深刻化しており、中間層の仕事の多くは、新興国の人材やテクノロジーに奪われている。国同士の壁がなくなる現状にどう対応すべきか。話題のビジネス書『ワーク・シフト』の著者で、ロンドン・ビジネススクール教授のリンダ・グラットン氏と、『10年後に食える仕事 食えない仕事』の著者で、ジャーナリストの渡邉正裕氏が、正反対の主張をぶつけ合った。(『週刊東洋経済』2013年3/2号に収録、解説記事はこちら参照)
Digest
  • 日本は欧米より20年は遅れる
  • 日本の若者と欧米の若者、2つの違い
  • ハイスキルとロースキルの中間の仕事が空洞化
  • 先進国生まれの優位性は次の世代にはなくなる
  • グローバル化するほど同質性の魅力が高まる
(構成:許斐健太)

日本は欧米より20年は遅れる

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渡邉:『ワーク・シフト』では、人材市場のグローバル化が進む中、人々は高度な専門性を磨き、人的ネットワークを広げて、新しい仕事を生み出せると説いています。

私も2度この本を精読しましたが、確かに欧米では今後グローバル化が進み、個人がそのように働き方を変えていくことになるだろう、と感じました。でも日本で、そういう状況になるかと言われると、僕はならないと思っています。なるとしても、少なくとも欧米より20年は遅れるでしょう。

それは日本と欧米では環境が大きく異なるからです。

 『ワーク・シフト』は、ロンドン・ビジネススクールの産学協同研究「働き方の未来コンソーシアム」がベースになっていると書かれていますが、そこに日本人や日本企業は参加していましたか?

グラットン:日本企業からは富士通が1社だけ参加していました。インドから5社、シンガポールから4社参加したのに比べると、少ないですね。もっと参加してほしいと思っているのですが。

渡邉:やっぱり、そうですか。

まず、日本と欧米の環境でいちばん違うところは、移民を受け入れていないことです。

グラットン:ええ、外国人として見ていても、その点は明白です。日本は先進国の中で最も同質化した国ですね。同一の民族が住み、言葉の壁も際立っている。

今、中国では何百万人という単位の人が英語を習得しており、逆に欧米人も中国語を勉強しています。日本では、英語を話せる人があまりにも少ない。

渡邉:それから他国とまったく違うのは、実はベビーブーム世代の影響力です。彼らは戦後、日本がまだ焼け野原だった時代に生まれて、まれに見る成功を果たした世代です。その世代から上が、日本では資産の約6割を握っています。

ベビーブーム世代から上は、テクノロジーの進化に影響を受けず、生活スタイルを変えようとしません。僕は日経新聞の記者をやっていましたが、僕が入社した90年代終わりから今まで、300万部をずっと維持しています。これだけインターネットが発達したのに、読売新聞も20年間、1000万部の部数を維持している。

若者が新聞を読まなくなっても、です。つまり、ベビーブーム世代(=団塊の世代)の影響力が大きい。彼らは今後20年は生きます。だから、20年は変わらない。

グラットン:なるほど、それはあるでしょうね。

日本の若者と欧米の若者、2つの違い

渡邉:それから、同じアジアでも、韓国などは国内市場が小さく、グローバル化しないといけない理由がある。一方、日本は1500兆円の個人金融資産を背景とした巨大な国内市場があり、国内向けだけでも十分食べていける。

『ワーク・シフト』に描かれた世界というのは、いわば世界の70億人市場を相手に、ハングリーなインド人、中国人を相手にしながら、いかに勝つか、という話です。ただそれは非常に難しいことです。私は自分の本では、日本人向けに、日本市場で、日本人の強みを生かす仕事を選ぶことを勧めています。

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グラットン:日本の状況は確かにユニークで、興味深いと感じています。しかし、世界の人材市場は完全にグローバル化しています。そういう状況は、日本にも必ず影響します。

以前、世界中のY世代(1980年以降生まれ)の意識調査をしましたが、そこでは異なる国同士でも、人々の共通性が強くなっている傾向が見えました。日本のY世代も、欧米との共通点が多く見られました。

ただ日本人は、彼ら自身の問題というより、仕事をしている環境において、ほかの国の若者とは、大きく二つの点で違いが見られました。

一つは、日本人がピラミッド構造の組織(hierarchical structure)のなかで仕事をしていること。もう一つは、(効率はともかく)そこにいなければならない(Presenteeism)、すなわち、オフィスに長時間いなければならない義務感にさらされていることです。

そのため、日本人の若い世代は、教育を受けている段階では他国の若者と共通点が多いのですが、社会に出ると、旧式な世界で暮らさなければならず、異質な部分が出てきます。重要なのは

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ana_ake2016/10/24 01:14

“ワーク・シフト”

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イエロー2014/02/25 23:43会員
東京勤務者2013/07/16 08:06
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