公益通報保護で敗訴確定のオリンパス、また社員が提訴 退職勧奨受け入れぬ者を報復人事で島流しに
現役社員のままオリンパスを訴えた石川善久さん。「これは私一人の問題ではない。イエスマンではないために、報復的な人事を受けていると思われる人が目につく」。 |
コンプライアンス問題をめぐり社員に敗訴したオリンパスが、また現役社員から訴えられた。
提訴したのは、1984年の入社から設計一筋で、MOや内視鏡など「デジカメ以外は全部」手がけてきた石川善久さん(50)。
開発4部にいた石川さんは昨秋、同社の早期退職制度の説明面談で、当時上司だった部長から5回にわたり違法な退職勧奨を受け、退職を断ったところ、今年1月にキャリアを無視した部署に異動させられたとして、オリンパス株式会社と小暮俊雄コーポレートサービス本部長を、東京地裁に提訴した。訴状は7月29日付け。
初弁論は、9月12日(木)10時30分から東京地裁823号法廷でおこなわれる。
同社は昨年6月にも、公益通報した別の社員・濱田正晴さんに対する異動の違法性が争われた裁判で、敗訴。石川さんは現在、その濱田さんの部下だ。濱田さん自身も昨年秋、再び違法配転を受けたとして、やはり会社と小暮本部長を相手に、別の訴えを起こしている。
濱田さんについての記事 ・オリンパス公益通報〝対象外〟とされた社員が語る 「通報には弁護士レベルの知識が必要」 ・「成果主義が報復の道具に」 オリンパス公益通報訴訟の濱田さん ・オリンパス内部通報の濱田さん、パワハラ激化で3度目の人権救済申立 ・内部通報者に報復続けるオリンパス 勝訴確定の濱田氏をチームリーダーから解職、無効求めまた裁判 |
「社外転進支援制度」の発表文(上)と通達(下)。「社外転進」は希望退職の言い換え。 |
◇希望退職制度の説明で「働く場所を提供できない」
同社は昨年6月、損失隠しとコンプライアンス問題に端を発した信用失墜から立ち直るため、会社再建のための中期ビジョンを発表。
訴状などによれば、その一貫として、昨年9月3日付けで「社外転進支援制度」を通達し、100名程度の早期退職者を募集した。同制度は、昨年11月末の時点で40歳以上60歳未満の正社員を対象とし、10月1日から同月20日まで応募を受け付け、会社が認めた場合は11月30日に退職する。
退職金への特別加算(左記資料の年齢別の加算月数一覧表を参照)は、最高で基本給の35カ月分だが、オリンパスグループの会社に再就職した場合は適用されない、という内容だ。
「対象年齢になっている40歳以上の全社員に対して、部長が面談して説明するんです。で、面談から戻って来た人に『どうだった?』と聞くと、『説明だったよ』と言うんです」
このように話す石川さんによれば、周りでは退職勧奨を受けた者はおらず、「こういう希望退職制度があるが、まさか君は応募しないよね」という程度だったという。
ところが、石川さんがこの制度の説明面談を最初に受けた昨年9月5日、「いきなり、あなたには仕事がないと言われた。理由は答えてくれなかった」。
訴状によると、このときの部長の発言は、「会社として今後、働く場所を提供できない」「年齢的なこともあり受け入れる部署はない」「会社の意思は固い」などとというものだった。退職勧奨されたことを口外するな、とも釘を刺された。
訴状の一部。退職勧奨の様子が書かれている。全文は記事末尾からダウンロードできる。 |
◇「会社を敵に回した」 石川さん敵視を明確化
理由も説明されず、自分だけが退職勧奨を受けたことに納得できない石川さんは、職場に戻ると、「俺、辞めろって言われたで」と報告。これを聞いた同僚らは一様に「えっ?なんで?」と驚き、「設計はできるし、会社にこれだけ貢献しているのに」「なんでそんなこと言われるの?」「おかしいだろ」などと反応したという。
会社の目的は、石川さんを退職に追い込むこととみられ、理不尽な面談はさらに続く。
たとえば9月11日におこなわれた2回目の面談では、
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(上)特許登録された石川さんの職務発明リスト。(下)石川さんが会社から受け取っている「国内独占実施報奨(競合優位)」という名目の報奨金一覧。
品質環境教育ブループを新設するとした昨年11月12日付けの通達。職務分掌のボリュームの違いに注目。
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