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部下を「豚」呼ばわりの暴力課長は残り、GPS監視を愚痴ったヒラ社員はクビ--大東建託は本物の「ブラック企業」でした

情報提供
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「案外まともな会社じゃないか」とAさんは面接時に思ったという。だが後に、懲戒でも整理解雇でもない「会社都合」という不可解な理由で解雇され、「やっぱりブラックだった」と感じたという。
 「シロ豚」「クロ豚」「しゃくれ」と部下を面罵し、金属の物差しで頭をたたき、バットで尻を殴り、ときには思い切り足蹴にする。そして執拗な退職勧奨――西日本地方の大東建託支店で横行していたパワハラの実態について、元社員の男性Aさんが生々しく証言した。パワハラの主は課長で、社内処分は形だけだったという。そして、四六時中ケータイのGPS機能で行動を監視されていることを同僚に愚痴ったという、ごく当然でささいなことを口実にして、ヒラ社員のAさんはクビになってしまった。「大東建託はやっぱり本物のブラック企業でした」とAさんは断言する。
Digest
  • GPSで社員を四六時中監視
  • 「ブラック」だとおもって入社した 
  • 案外まともじゃないか・・・
  • 「俺は元談合屋」と課長
  • 「ちょーちょーちょー無実績」 
  • 連日の暴言・暴力
  • 契約のトラブルで課長との関係悪化

GPSで社員を四六時中監視

「クビになる予感などまったくなかったんです」

困惑を浮かべた表情でAさん(34)が言った。筆者は7月某日、西日本地方にある大東建託S支店元社員のAさんと会い、事情を聞いた。以下はその概略である。

「建築営業」という、賃貸アパートを販売するのが仕事だ。入社してわずか8ヶ月目の4月某日の夜、思いもかけず事実上の解雇を通告された。成績の悪い社員が会社を追われるのは見てきた。だが、Aさんは業績を挙げていたので、まさかクビになるなんて予想もしていなかった。

Aさんがいう。

「この日もいつものように仕事をしていました。日中は、着工予定の案件(賃貸アパート)で、工事車両の駐車場をどう確保するかといった調整業務をやっていました。夜になっていったん支店に戻り、会議をやってから、契約がとれそうなお客さんのところに夜訪(夜間訪問)に行くはずでした。ところが、出かけようとしたとき、ちょっと、と上司に呼ばれたんです」

なんだろうかとおもいながら別室に行ったところ、本社の部長と人事課の社員が待っていた。Aさんは驚いた。本社の幹部が来るというのは尋常ではない。

幹部らは数枚の写真を取り出してみせた。携帯電話の画面を撮影した写真だった。LINE(文字会話ソフト)の画面で、同僚のK社員とAさんとのやり取りが映し出されていた。電話はK社員のものらしかった。大東建託がGPSで社員の行動を四六時中監視していることについて、愚痴めいたことをこぼした内容だった。

何が問題なのか。いぶかしんでいると幹部らは言ったという。

「A君は会社に対して悪い考えを持っているね。悪意を持っている。だから辞めてほしい」

ますますわけがわからない。契約はとっていて業績に問題はない。社員とのやりとりも取り立てて問題になるような話には思えなかった。Aさんは昨年の7月に入社したばかりで、まだ8ヶ月ほどしかたっていない。理不尽な気持ちに駆られながらAさんは尋ねた。

「懲戒解雇ですか」

「懲戒解雇ではない。会社都合だ」

幹部は答えた。会社を続けたいとAさんは訴えた。だが相手は聞く耳をもたず、解雇を突きつけた。会社理由の解雇の場合は、事業縮小や経営難などの理由が必要だが、そういった説明はなかった。

 結局、これから3ヶ月後の7月上旬の日付でAさんは解雇される。懲戒ではない会社都合解雇だといいながら、解雇通知にはこうあった。

〈「会社の名誉や信用を傷つけ、または会社の秩序を乱すと認められたとき」「その他前各号に準ずるやむを得ない事由があるとき」であると判断し、解雇します〉 

解雇通知に書かれていることは懲戒である。Aさんに懲戒される覚えはない。いい加減な理由で解雇しているとしか思えなかった。上場企業とは思えない乱暴な扱いだった。Aさんは無論納得がいかない。現在、弁護士に依頼し、解雇撤回を求めて会社との交渉を続けているところだ。

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Aさんが受け取った解雇通知。「会社の名誉や信用を傷つけ、…」とあるが、懲戒の手続きはとられていない。

「ブラック」だとおもって入社した 

Aさんが大東建託に入ったのは2012年7月。大東は「ブラック」に違いない、とある程度覚悟していたという。それでも選んだのは、「案外マシではないか」と勘違いをしたからだ。

Aさんは大学の法学部を卒業している。司法試験を受けて弁護士になることも考えていたのだが、法科大学院が必須となってから考えが変わった。何百万円もの授業料を払って弁護士になったとしても、はたしてうまく収益を上げることができるだろうか。そんな不安を感じたのだ。

弁護士の道をやめたAさんは、大学卒業後、法律関係の事務所に事務員として就職する。業務に抵抗はなかった。親が司法書士兼土地家屋調査士の事務所で働いており、高校時代から測量の手伝いや登記の申請をやったりもしていた。

だが、その事務所は異常な長時間労働だった。次第に辟易してきた。残業は月平均140時間。給料は、基本給が額面26、27万円。別途支払われる残業代のほうが、基本給より高かった。金銭的に不満はない。ただ長時間労働はこたえた。このままでは「死ぬ」――Aさんはそう思って辞めることになる。

あらたな就職口を見つけるためにAさんが頼ったのが「リクナビ」だ。携帯電話にメールで流れてくる求人情報サービスである。リクナビを通じてさっそく求人があった

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「会社都合」と明記された解雇手続き書類。だが正当な解雇理由は明らかにされなかった。

会社都合と書かれた解雇書類。

Aさんの勤務地だった支店。金尺でたたく、白ブタなどと罵倒するなどのパワハラが横行していたという。

営業は過酷だった。GPS携帯電話で行動監視されていたという。

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読者コメント

大東建託社員2015/04/23 19:38
元大東建託社員2014/07/17 14:39
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