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東進ハイスクールの“終わらないブラック労働”――少なくとも25校で担任助手の無賃労働が発覚、“やりがい搾取”でナガセに食い物にされる大学生バイトたち

情報提供
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報道され、弁護士に言われないと改善する気にならない、自主性のないナガセ。校舎の違法な労務環境を本部が把握していない。もちろん、それをもって免罪とはならない。
「MyNewsJapanの記事を見た小原先生から、担任助手のサービス残業の撲滅につき、強い姿勢で臨んで欲しいとの電話がありました」――これは、人事部長の安藤俊(常務執行役員)が、東進ハイスクール本部長(当時)の大山廣道専務あてに送ったメール(一昨年秋)の書き出しだ。「小原先生」とは、ナガセ代理人弁護士の小原健のことである。これだけ違法な状態が報道されたら裁判で勝てない、なんとかしてくれ、とでも言いたいのだろう。時期的に、この記事を読んでのものとみられるが、その後、実際にナガセの敗訴は確定した。ある現役の大学生スタッフは、今も続く違法な労務管理について「学生バイトを食い物にするナガセが許せません」と語る。
Digest
  • 「だからブラック企業と言われるんだ!」
  • サービス残業23校舎、賃金カット2校舎だけ?
  • 現在も続く「記録に残らない無賃残業」
  • いつまでも終わらないブラック労働地獄
  • 夏合宿「スタッフは睡眠2時間」で最低賃金以下
  • いつ過労死が発生してもおかしくない環境

「だからブラック企業と言われるんだ!」

東進グループを運営するナガセ(本社・吉祥寺)のブラック労働ぶりを伝える弊社記事はナガセ社内で人気が高く、たびたび話題にのぼっている。社内メールにとどまらず、全社員が参加する月1回の「全社研修会」でも、永瀬昭幸社長が「だからブラック企業と言われるんだ!」などと、自分の責任を棚に上げ、激昂する場面もあったという。

ナガセがブラック企業と称される最大の原因は、永瀬自身の現場を無視した独裁的経営そのものにあり、それは永瀬をとりまく“家来たち”(役員、社員、バイト…)は皆、わかっているだけに、滑稽である。一言でいえば、永瀬が「裸の王様」ということだ。

冒頭のメールで安藤人事部長は、「大手のマスコミ(文春など)の取材に繋がった場合、事実でないと即答できる体制が必要です」と述べ、西日本高速道路会社の社員(34歳)が過労死した事件の記事を添付し、危機意識を表明した。

「案外、まともな対応していますね」――。武富士、大東建託、ナガセなど数々のブラック企業を取材してきた三宅勝久氏は、このメールをみての印象をそう語った。あくまで“トップクラスのブラック企業リーグ”のなかでは、意外にまっとうなほう、という意味である。

ナガセ社内では、その後、文春などがやってきたときに「事実でない、と即答できる体制」を整えるべく、調査が開始された。

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サービス残業の存在を報告する前田副本部長(現本部長)

すると逆に、続々と、違法なサービス残業や賃金カットが発覚してしまい、正直にマスコミに即答してしまったらさらに炎上しかねない事実が明らかとなった。

弊社報道の正確さが、改めて裏付けられた格好だ。

人事部長が、現場で横行している違法な労務管理の実態を、何ら把握できていないこともわかった。

サービス残業23校舎、賃金カット2校舎だけ?

「昨日提出頂いた担任助手の労働実態調査の中で、サービス残業を実施した校舎が23校舎ありました」「賃金カットを実施した校舎が2校舎ありました」――。これらは昨年(2017年)1月に実施された調査の結果を報告するメールの一部である。

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「賃金カットを実施した校舎が2校舎ありました」と大山専務以下に報告している

差出人は、東進ハイスクール本部の前田達也副本部長(当時)。前田は2018年度より、大山氏の本部長勇退にともない、同本部の本部長に昇格している。

ここでいう「サービス残業」と「賃金カット」の違いであるが、賃金カットとは、ベース賃金(時給)の違法な引き下げを指す(→「東進」ナガセが組織的な労基法違反で学生バイト搾取)。

この実態は、弊社が報道するまで放置され、現在でも続いている。

今年の継続契約の提示で、約束していた時給より500円もカットされた――そんな経験をした現役の大学生スタッフは、「不当に賃金カットされているという話が同僚の間で複数出ています。このように学生アルバイトを食い物にするナガセが許せません」と語る。現在でも編集部にリアルタイムで告発がきている状況なのだ。

これまでの複数の取材結果によれば、たった2校舎だけのわけがなく、かなり広範囲に違法な賃金カットが蔓延しており、それが現在も続いている。

左下のメールにもあるとおり、「担任助手」と呼ばれる大学生バイトの時給は、本来、以下のように決められている。

1年生は、1000円
2年生以上は、1200円
担任助手リーダーは、1500円
担任(担任助手と兼務、生徒30人未満を想定)は、1500円
生徒50人以上を担当する担任は2000円

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前田副本部長よりエリア長、ブロック長、局長、校舎長あてに周知された社内メール「今年度の担任助手の給与について」

下2つの「担任」については、説明が必要だろう。ここ4~5年で、「担任助手の担任化」――大学生バイトに正社員並みの役割を与え、生徒指導だけでなく営業(生徒募集)や3者面談などまでやらせ、安い賃金のまま食い物にすること――は、「優秀校実践報告」として何度も「全社研修会」で共有されている。

たとえば2015年4月には、大学2年生の2人に営業をさせて計20人を入学させたり、3人を大学2年の12月に「担任」にしてしまって父母対応もさせる、といった大宮校の事例が報告されている(下記画像参照)。もはやバイトが、安い時給に見合わないような、正社員以上の成果をあげているわけだ

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担任助手の育成について。バイトに、社員と同等の役割である「担任」に就かせた体制図(2015年4月の全社研修会資料より)

夏期合宿参加のスタッフリスト(2016年)。84人中、担任助手が23人参加している。

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 2018/07/30 00:53
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