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トヨタ期間工が豊田章男社長に慰謝料330万円を請求「若い世代のためにも私が非正規労働者の環境に一石を投じます」

情報提供
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期間従業員が会社に対してアクションを起こすことは死活問題だ。しかし「誰かが指摘しないと何も変わらない。若い世代のためにも非正規労働者の労働環境に一石を投じたい」と語るAさん。
 トヨタ自動車の期間工Aさんは契約期間延長希望の書面を提出していたが、トヨタ労組からの退会を告げたとたん、昨年3月末で雇止めされた。しかも、トヨタは「自己都合」と離職票に虚偽記載したため、雇用保険の給付日数が240日間から90日間に削減されそうになった。ハローワークや労基署に働きかけて会社都合と認められたものの、理不尽な扱いに納得のいかないAさんは、豊田章男社長に慰謝料330万円を請求。愛知労働局の紛争調整委員会であっせんが開始されたが、豊田社長の参加拒否で3月4日に打ち切りとなった。どんなに真面目に働いても最長2年11カ月で“部品交換”のように雇止めされるのが期間従業員だ。「もう次にトヨタで働くのは難しいでしょう。でも、誰かが指摘しないといつまでも変わらない。若い非正規労働者のためにも一石を投じます」と覚悟の行動を起こしたAさんは、法的措置を検討している。(記事末尾で慰謝料請求文のダウンロード可)
Digest
  • 期間工16年「自動車とオートバイが大好きで・・」
  • 期間従業員もトヨタ労組を退会したら雇止め
  • 契約更新通知と期間満了の通知書が同時に届く怪
  • 雇用保険240日分が90日分に減らされる?
  • ユニオンショップ協定の問題点
  • トヨタ自動車の豊田章男社長が話し合いを拒否
  • 期間工の2年11か月雇止めは正しいか――トヨタが変われば他社も変わる

期間工16年「自動車とオートバイが大好きで・・」

Aさんは、16年以上も自動車関連工場で期間従業員として働いてきた。期間従業員は契約期間の最長が定められており、期限を終えると半年間その会社で働かずに空白期間をつくって再び一から働き始めるか、別の会社で職を得なければならない。

このような契約を繰り返して16年になる。

「自動車やオートバイが好きで、それに関係する仕事をしたいと思ってきました。できれば、安定した正社員がいいと思いますが、私が自動車産業で働き始めたのは35歳くらいですから、そのころはこの年齢で正社員登用の道は非常に限られていました。

正社員とはいかなくても、一か所で長期間働けるようになればありがたいのですが・・・」

こう語るAさんが、トヨタで初めて働いたのは、新型プリウスがモデルチェンジする直前だった2011年だった。

トヨタの期間従業員の契約は6か月単位で、契約更新時にわずかな昇給がある。契約を5回延長して最長2年11か月間働けるが、そのあとは確実に辞めなければならない。

このときは、6カ月間だけトヨタ堤工場で働き、期限を終了するとAさんは別の自動車関連会社に移った。

「別の自動車関連で働いていたときに、トヨタからDMが届いたのです。前回に問題なくきちんと働いていた人にはDMが発送されるんです。

ちょうどその工場の契約期間が切れる間際だったので、トヨタに再び応募することにしたのです。

どの自動車産業も同じですが、契約期間を過ぎると、クーリングといって、半年以上その会社で働かない空白期間をつくります。

その期間が過ぎると、また一から契約し、期限がすぎるとやめて、クーリング期間をとるか、他の会社に移らなければなりません」

非正規労働者をコマ切れに雇い、あらたに契約すればまったくの新人として一からスタートする。不安定雇用そのものである。

「トヨタでは、契約を10回以上繰り返している人もいました」

とAさんは振り返る。人によっては、合計で10年も15年もトヨタの工場で働くこともありうるのだ。実質的に正社員のようなものだが、労働条件も悪く、不安定のままである。

後に述べるとおり、有期契約で5年以上連続で働いたら無期雇用に転換する法改正に照らすと、クーリング期間を設けて延べ5年以上を雇用しつつ無期雇用の権利を奪う手法は、明らかに法の趣旨を逸脱する脱法行為といえる。

ともあれDMに応じたAさんは、2015年9月に期間従業員として二度目の入社。日給1万円からのスタートだった。

ちなみにAさんが最後に受け取った賃金明細によれば、残業や深夜勤務手当も含めて手取額が月24万9618円だった。

「主な仕事は、リフトから降ろされた部品をメーカー別、供給先別に仕分けして配列すること。それから、部品を動力車に詰め込んでラインに供給する作業でした」

こうして6カ月ごとの更新を4回続け、2018年3月に最後の5カ月の契約更新を残すだけになった。その矢先に、事態が急展開することになる。

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トヨタ自動車労働組合を退会したら雇止め。その経過を記述し、あらためて正式に退会することを示した文書。

期間従業員もトヨタ労組を退会したら雇止め

働き始めて1年が経った2016年9月、Aさんはシニア期間従業員になり、2回目の契約更新に先駆けて、トヨタ自動車労働組合の加入説明会に招かれた。

トヨタでは、契約2年目になると期間工でも正社員と同じトヨタ労組の組合員になれる。多くの企業では、非正規社員を会社の労働組合に加入させないから、この点だけみるとトヨタは平等なのでは? と一瞬思われるかもしれない。

だが、実態は違った。

最後の契約更新が待っている2018年が明け、1月に直属の上司から期間延長するか否か聞かれたので、月末にAさんは会社指定用紙に「契約期間の延長を希望します」にマルを付けて提出した。

何事もなければ、すんなりと延長できるのだが、ここで労働組合の問題が生じる。

Aさんは、トヨタ労組に違和感を覚えていた。

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トヨタ自動車労働組合は従業員のためになっていないと、期間従業員のAさんは、トヨタ自動車第二労働組合に加入した。

トヨタ指定の調査用紙に「契約延長を希望する」という欄にマルをして提出した。にもかかわらず離職票には自己都合退社のように記載されていた。赤線は筆者記入。

トヨタ自動車社長あてに慰謝料330万円を請求した期間従業員のAさん。回答がなかったため愛知労働局の斡旋事務局に斡旋を申請。開始が決定されたが、豊田章男社長が参加せずに打ち切りとなった。

(上)自己都合退社扱いにするとトヨタはAさんに通知した。(下)Aさんが受け取った最後の賃金明細書。

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情けないメディア2019/04/13 18:49
JR西の非正規車掌2019/04/08 17:13会員
2019/04/08 12:44
染谷大介2019/04/07 19:08会員
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