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トヨタ正社員がQCサークル未払い賃金約7万3000円を労基署に申告 「サービス残業に苦しむ全国の皆さんのためになりたい」

情報提供
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労基署へ申告書。工場内での残業時間内では終わらないのがQCサークル活動。自宅持ち帰りで過重労働が加速する。
 トヨタ自動車の本社工場に勤務する吉田亘希さん(22歳)が2月7日、自宅に持ち帰ったQCサークル活動39時間分の賃金7万3206円が未払いだとして豊田労働基準監督署に申告した。トヨタのカイゼン活動の柱として知られるQCといえば、2002年に内野健一さん(当時30歳)が堤工場内で倒れ致死性不整脈て死亡した事件が思い起こされる。内野さんは長時間残業に加え自宅でQC作業を行っていた。妻が労災申請したが労基署は認めず、提訴して07年に全面勝利した。仕事ではなく自主活動だとトヨタが主張していたQCが業務として認定され、それを受けて同社は賃金を支払うようになった。死んだ人は生き返らないが、多くの人々が救われた、と思われた。だが、今回再び表面化したQC自宅作業は、根本的にトヨタの姿勢が変わっていないことを示す。あらためて同社の無償労働の実態をさぐった。(記事末尾でQC資料19枚ダウンロード可)
Digest
  • 自宅QC未払い賃金請求を労基に申告
  • 超ブラック労働で過労死したトヨタ社員
  • 生命と引き換えに自主活動が業務と認められる
  • ファミレスがトヨタのQC会議室に
  • 豊田労基署は「残業と認めない」と通知

自宅QC未払い賃金請求を労基に申告

今回の吉田さんによる労基署への申告は、残業に対する割増賃金を定めた労基法37条にトヨタが違反しているという趣旨だ。

昨年(2019年)5月から8月にかけて、吉田さんはQCサークル活動を自宅でやらざるを得ない状況に追い込まれていた。

自宅でのQCサークル活動が39時間にのぼり、その分の残業代7万3206円を吉田さんは、年末の12月23日に会社に請求していた。

請求を受けた会社は、調査中であるとし未払いのまま。この対応を受けて、今回の労基署への申告となった。

QCサークルとは、製造業などの現場で働く人々が、継続的に製品・サービス・仕事などの質の管理・改善を行う小グループのことを言う。

QCサークル活動とトヨタ・・・。この二つ単語で思い起こされるのは、月に144時間の残業に加え自宅にも仕事を持ち帰っていた内野健一さん(享年30歳、2002年)がトヨタ堤工場内で倒れて死亡した事件である。

超ブラック労働で過労死したトヨタ社員

内野健一さんは、トヨタの堤工場で「カムリ」や「ウィンダム」の車体品質検査を担当していた働いていた。

小さなころから車が大好きだった内野さんは、トヨタ自動車の社員すなわち「トヨタマン」であることを誇りにして働いていた。

その内野さんも「もう頭がまわらない」と妻に何度も繰り返すほど、月に144 時間の残業+自宅持ち帰り仕事で、どんどん疲弊していった。

当時の勤務シフトは3交代制の変則勤務だった。残業などなくても体調を崩しやすい状況だった。昼勤務か夜勤務か二分されていれば、週ごとに体調を調整できるが、勤務時間が3つに分けられると体内時計が狂う。

この変則勤務と長時間労働は、「過労」という名の建造物の土台と基礎に当たる部分だ。その上に建てられた柱の一つが、「自主活動」なのである。

様々な職場環境や作業効率を向上させるための「カイゼン」「創意工夫活動」「QCサークル」がトヨタ発展の原動力かのように礼賛されてきた活動だ。

亡くなった内野さんの場合は、現場の工場で残業があり、不具合が発生し改善するために各部署間の連絡調整や上司との調整で残務処理がある。それでも終わらずに、深夜帰宅して自宅のパソコンで作業することが何度もあったという。

どんな様子だったのか、妻の博子さんの話を再録しておく。

「倒れる直前の2002年1月26日(土)と1月27日(日)の記録が残っています。26日は夜中の1時に私が起きると、夫はQCの報告書を打ち込み始めるところでした。

私もインターネットをしながら一緒に起きていました。

夫のパソコンは朝の5時23分に更新されていますから、この時間までQCの仕事をしていたのです。

これは工場でラインの残業が終わり、事務的な残業もあり、その後自宅でしている仕事です。

1月27日午前0時に起床。休みの日は小さい子どもがいるので昼間に仕事はできないと思ったのでしょう。久しぶりに子どもと添い寝した後にふと起きてきて、この日は朝の6時16分に夫のパソコンは更新されています」

「トヨタの闇」ビジネス社ちくま文庫版

生命と引き換えに自主活動が業務と認められる

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現役トヨタ社員による陳述書。QC自宅作業は賃金なしの奴隷労働である。

こうして内野さんは

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QCサークル運動の組織図。実質的にはテーマリーダーがほとんどの作業を実行し負担がかかる。

労働条件通知書。

未払い賃金請求書。これと同じ内容を豊田労働基準監督署に提出したが、労基署は自宅での作業を残業と認めていない。

未払い賃金請求書をめぐるトヨタと吉田氏のやりとり。会社からの文書でぼかしがはいっているのは、QCサークル自宅作業以外のテーマについて記載されており、読者が混乱するため消した。

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