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トヨタ自動車北海道の”逆切れ裁判” 窃盗犯の汚名を着せられた社員が上司を訴えたら、逆に名誉棄損で訴えられた!

情報提供
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トヨタ自動車内でパワハラをめぐり異常事態が発生しているようだ。このツイートをがきっかけになり取材が始まった。
 トヨタ自動車北海道の工場内で2017年10月11日、社員の山本義男氏(仮名50代)のキャビネットの鍵が紛失した。山本氏は、ある社員が鍵を盗った疑いがあると複数の社員に話した。名指しされたのは、同じ年だが山本氏より役職が低い、部下にあたる一般職の宮川大介氏(仮名)。「宮川犯人説」は瞬く間に社内に広まり、窃盗犯呼ばわりされた宮川氏は心身ともに憔悴し、うつ病を発症。2カ月余の休職を余儀なくされた。宮川氏によればパワハラは2010年から続いていたという。宮川氏がパワハラ対応部署に相談した結果、山本氏は謝罪文を出した。しかし休職で収入は減り心身共に傷を負った宮川氏は今でも心療内科に定期的に通っている。そのため2019年1月30日、宮川氏は上司にあたる山本氏に対し慰謝料請求訴訟を起こした。すると訴えられた山本氏は、名誉棄損で反訴したのである。前代未聞の社員どおし、上司と部下の裁判てんまつを報告する。(記事末尾で訴訟ダウンロード可)
Digest
  • 「あなたが窃盗犯だと言われているよ」のショック
  • 鍵窃盗犯さがしに賞金10万円?
  • 上司はパワハラの謝罪文を出した
  • 複数の社員に宮川氏への疑いをしゃべった
  • 事例1「創意工夫」の嫌がらせ
  • 事例2 誹謗中傷と押し付け
  • 事例3 差別と窃盗犯扱い
  • パワハラ被害者を会議室に入れ圧力

「あなたが窃盗犯だと言われているよ」のショック

昨年の秋、気になるツイートを見かけた。

ケーズ  @SyKwgh

 トヨタ自動車で上司をパワハラで
人事相談窓口に訴えたら
 逆に上司から名誉毀損で裁判所に訴えられました。
人事課に助けを求めたら個人間の民事裁判には関与しないとの返答、現在係争中。

 なんの為の相談窓口なの?
パワハラを見たり聞いたりしたら

報告、相談する様にって掲示板に貼ってる意味ある?

このツイートが本当なら、パワハラの被害を受けたトヨタ自動車の社員が、加害者である上司から名誉棄損で訴えられた、という前代未聞の出来事だ。

いったい何が起きているのだろうと気になって調べたところ、正確には、「人事相談窓口に訴えた」後に慰謝料請求訴訟を起こしたら、逆に上司から訴えられたという内容である。

騒動が起きたのは、トヨタ自動車100%出資のトヨタ自動車北海道(従業員約3300人、自動車部品製造会社)の第2ユニット製造部だった。

2018年1月、社員の宮川大介氏は、同じ部署ではたらく上司の小山一成リーダー(仮名)から、驚くべき話を聞かされた。

自分が山本義男リーダー(仮名)のキャビネットのカギを盗んだという噂が、社内で流れているというのだ。

さらに同年5月7日、Cリーダーからも「山本リーダーのカギを盗んだのは宮川さんなんだってね」とあからさまに言われると、さすがに宮川氏は動揺と怒りの混じった衝撃を受けた。

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トヨタ自動車北海道の工場(北海道苫小牧市)

この時から7か月前の2017年10月11日。第2ユニット製造部内で、ある盗難事件が起きた。

この部署では、グループのリーダーだけに個人のキャビネットが与えられているというが、リーダーの一人、山本義男氏の鍵が紛失した。

辺りを探しても見当たらないため山本氏は、宮川氏と一緒に仕事をしていたリーダーの小山一成氏に電話し、その日の宮川氏の行動を訊ねたという。

帰宅途中に電話を受けた小山氏は、山本氏から「宮川の目が泳いでおり怪しいと思っている」「何か不審なところはなかったか」などと尋ねられたという。

しかし小山リーダーは、終日、宮川氏と一緒に作業をしていたので鍵を盗んだなどということはないと伝えた。

それでも山本氏は「トイレに行った際など目を離した時間もあっただろう」などと述べて、あくまでも宮川氏を疑う姿勢を崩さなかったという。(以上、のちの裁判における小山氏の陳述書より)

鍵窃盗犯さがしに賞金10万円?

単に宮川氏が疑いをかけられたというだけにとどまらず、事態はエスカレートしていく。

年が明けて2018年1月上旬、他の部署に所属していた社員Aが、頻繁に宮川氏の様子をうかがいに来ていることに気づいた。

不審に思った宮川氏は、鍵がなくなったときに相談し、窃盗の事実はないと証言してくれた小山リーダーに相談した。

すると小山氏は山本氏のもとに行き、再び宮川氏は鍵を盗んでいないし、犯人視するのは問題だと伝えたという。

《私は工場内の何人かから「山本さんの鍵を盗んだのは宮川さんらしい」「宮川さんには10万円の懸賞金が掛けられている」という話を聞かされました。

また、このころ、他部署のAさんが毎日のように●●●●●●の詰所付近にやって来て宮川さんを睨みつけるといった態度をとっているのを目にしましたが、(中略)噂が広まっている状況は問題だと思い山本さんに確認に行ったところ、山本さんは「宮川さんに」と名指ししてはいないとしつつも、

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山本氏からパワハラ被害者の宮川氏にあてられた謝罪文。この謝罪文でも裁判に提出された証拠を見てもパワハラの一部は認めている。

ストレスチェックについて社員へ通知。宮川さんは8年間パワハラを受けていたという。しかし、トヨタの担当部署は8年間も解決できていなかった。

トヨタ自動車管理職に向けてのパワハラ防止指針

うつ病を発症した宮川氏は2か月間の休業を余儀なくされた。精神的、肉体的苦痛に加え、通院時間、治療費など出費もかさなった。そのため上司に慰謝料を請求したが拒否されたため、訴訟に踏み切った。

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 2020/05/10 20:52
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