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グーグル 人材採用パッケージが問う「これまでの人生」、新卒・中途で“世界一企業”に入る4つのルート

情報提供
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直近の事情もよく知るグーグル元社員。「会社について、特に不満というほどのものは見当たらなかった」
 文・理とわず、学生に聞く就職先人気で、国内でも世界でも「一位」を定位置とするグーグル。そのサービスは日々の生活で欠かせない便利なものとなり、保有する個人情報は、検索履歴・メール・地図移動履歴と微に入り細に入り、国家をゆうに凌ぐ。AI時代に「宝の山」となるビッグデータを世界で一番持つ会社だ。今回、異なる時期に新卒入社した3名(20代、30歳前後、30代=うち2名は現役)に、じっくり話を聞いた。リクルーターやインターン、「ラリー・チェック」をはじめ、実に人的な手間とコストをかけた、デジタル企業らしからぬアナログな厳選採用ぶりが、急成長の秘密を物語っているようだった。
Digest
  • 2000人弱の日本法人、メインはビジネス職
  • 多様化・国際化進むプロフィール
  • エンジニアが設計した「採用パッケージ」
  • 「これまでの人生」をドキュメントに落とせ
  • 実際の採用決定権は人事ではなく現場
  • インターン採用ルートからの内定は少数

2000人弱の日本法人、メインはビジネス職

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1位グーグル、2位アップル、3位マイクロソフト、4位アマゾン…GAFA系が上位を占める、世界のビジネス系学部学生向け「魅力的な就職先」(2020年、ユニバ―サム調査)

中途の社会人採用のみだったグーグルジャパン(グーグル合同会社)が、日本式の新卒一括採用を開始したのは2008年と、比較的最近のことだ。以後、年30人規模の採用を続ける。途中、2010年はリーマンショックの影響で4~5人だけに絞り、反動で2012年に60人程度を採用するなど、凸凹はある。

入口からビジネス職とエンジニア職を完全に分けており、人数比は例年2:1ほど。年によって1:1だったり3:1だったりする。ざっくり均すと、ビジネス20人、エンジニア10人くらいだ。その圧倒的な社会への影響力に比して、実に少数精鋭であり、逆にいえば、ほとんど日本国内の雇用には貢献していない。

ネットサービスの会社で、開発拠点の中心はシリコンバレー・マウンテンビューの本社にあるため、日本法人は、主に日本という地域を担当する営業・ローカライズ・保守サービスの拠点、という位置づけ。テクノロジー企業ながら、日本は非エンジニア職が多数派を占める組織である。

「日本法人に所属する社員数は、数年前に渋谷へのオフィス移転が発表されたときに初めて、ああ1千人を超えていたんだ、と知りました。その後も増えていますから、現在はジャパンで1500~2000人だと思います」(中堅社員)。六本木ヒルズから、渋谷駅直結の『渋谷ストリーム』に本社移転したのが2019年10月。好調なクラウド事業(Google Workspace ,Google Cloud)を筆頭に、採用は活発だ。

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コロナ禍で、企業にサイバー上のコラボレーションを促進するツールを提供する事業や、AWSに対抗するクラウド事業など、「非広告系」の新事業を中心に、グーグルの中途採用は活発

日本法人は「合同会社」で有報もない。これだけの影響力を持つ大企業だが、日本の社員数すら非開示で、内部社員ですら正確な数字を見たことがない――と皆が言う。他の外資企業なら普通に公式サイトに掲載している情報である。

「Google の使命は、世界中の情報を整理し、世界中の人々がアクセスして使えるようにすることです」と宣言する一方で、自社については、社員数・国籍・組織図・採用人数・育休取得数・有休消化率…といった基本的な自社の社会データへのアクセスを拒む姿勢は不可解にもみえるが、グローバル企業として、日本という区分を重視していないことの表れともとれる(※楽天は前記情報を全てESGデータブックにて開示している)。

《GAFAは、既存企業の雇用を破壊する一方で、新規雇用の創出に貢献していない》という批判を恐れている節はある。ニューヨークタイムズによると、Googleには2019年3月時点で、フルタイム社員が世界中に10万2000人、臨時雇用の従業員や契約社員が、それを上回る12万1000人。時間や期間が限定された、不安定な雇用者のほうが多いという。

「日本でも、非正規が一時的な仕事を担当しています。日本オフィスに所属する正社員全体でいうと、私が見る限り、外国籍の社員が4割かそれ以上。日本語を必要とする営業系の部署なのか、非営業系の部署なのかによって割合が大きく異なります。エンジニア系の部署だけで言うと、むしろ日本人の方が少数派だと思います」(同)

グローバル企業の地域支店として、営業系は言葉の問題から日本語ネイティブの日本人が多数派となり、外国人は日本語を話す中国・韓国人がちらほらいる程度だという。エンジニア系は言葉の壁がほぼない(英語でコミュニケーション)のでむしろ外国人が多数派となる。

グーグルに出入りするスタッフは、皆が、名前と顔写真の入った、入館証を兼ねた物理的な社員証を持ち歩いている。その背景色が、正社員は「白」、外注スタッフ等の非正規が「赤」、インターンが「緑」、となっているから、社内では一目瞭然。グーグルはグローバルでほぼ同じサービスを提供しているので、おそらく正社員と同等規模の非正規が、日本でも働いている。

非正規で一番有名な人物は、一時期に業務請負として常駐していただけで「元グーグル」とあたかも正社員であったかのように経歴を詐称して営業活動していた竹花貴騎だろう。実際に正社員として採用されるハードルは以下のとおり、極めて高い。

多様化・国際化進むプロフィール

新卒採用は、時代によって採用基準やバックグラウンドが若干、変化している。当初は英語力の優先順位が低く、採用面接で学生のために通訳をつけることまであった――という話は社内で昔話のように語り継がれている。今では考えられないことだからだ。

「出身大学も、東大早慶上智までで、普通の大企業と比べて多少、国際系の学部出身や海外経験者が多いかな、という程度。昨今では、海外大出身者など海外バックグラウンドの人が増え、英語はできて当り前、になりました」(中堅社員)

初期のころは、日本市場へのサービス浸透を優先し、語学力よりも営業力重視の採用だったが、現在はグーグルの知名度が上がった結果、双方を満たす人材を採用できるようになった。「6~7年前までは、まだ英語を話せない上司もいましたが、直近ではほとんどいなくなりました」(元社員)

なかでも、エンジニア職は、今も昔も変わっていない。ほぼ院卒以上で、コンピュータサイエンス系の博士号取得者も多く、これは一般的なグーグルのイメージ(“世界最高峰のプログラマーやIT技術研究者”)どおり、である。日本法人採用ですら、純粋なエンジニアは外国人中心だという。

「同期のエンジニア職10人のうち、純粋なエンジニアは5~6人で、外国人のほうが多く、日本人は1~2人だけ。残りが『Gテック』と呼ばれる技術営業で、こちらは顧客対応が発生するため日本人ばかり。ビジネス職20人のほうは、逆に外国人が少なくて1~2人だけ(日本語は話せる)、残りは日本人で、男女比がおおむね半々。年齢は例年、新卒で平均25歳くらいと高めで、これは留学を挟んでいたり、宇宙工学専攻の博士卒がビジネス職で入って来たりするためです」(元社員)

採用ルートは計4つに分かれる

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「人材紹介会社使いません」宣言

グーグルが採用するにあたって確認する4つのポイント(岩村水樹『ワーク・スマート』2017年刊より)

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  2021/03/11 01:07
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