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グーグル 「有休は上司の承認不要でカレンダー記入だけ」「ディズニー貸し切りオフサイト」――全ては優秀人材を逃さないために

情報提供
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グーグルがオフィス部分を一棟借りの『渋谷ストリーム』(渋谷駅1分)
 グーグルの有給休暇取得プロセスは、運用上、実にストレスがない。「有休を取得する際に、上司など誰かの承認は要りません。理由の申告も不要。社内の申請ツールでカレンダー上に記入すると、上司に自動で通知が届いて、知らされる仕組みになっています」(中堅社員)。日本国内では、有休消化率が国際的にみて低すぎるため「働き方改革法案」が施行され、2019年4月から年5日の取得義務が課せられた(30万円以下の罰金つき)。だが、有休は「権利」なのに、なぜか承認を要する会社が多く、消化が進まない。「全消化しないとマネージャーが詰められるので、みんな消化するのが当り前です」(若手社員)。無料の社員食堂、社内カフェに社内ジムなど、働く環境で有名なグーグル。「世界で一番優秀な人材を集めるための合理的な施策として快適な環境にしているのだ、と理解しています」(元社員)
Digest
  • 休み時間のビジネス化
  • オフィスの福利厚生をすべて無意味化したコロナ
  • アジア時間が考慮されない「置いてきぼり感」
  • ディズニー貸し切り!もある「オフサイト」
  • 社員が社員に感謝を伝えボーナスを払う『gThanks!』
  • 大企業化で変わった人材の質
  • Don't Be Evil?「日本は盛り上がらず」Google Walkout

休み時間のビジネス化

2019年秋に日本法人の本社が移転した『渋谷ストリーム』は、14~35階のオフィス部分、全22フロアをグーグル1社で占有(低層階はホテルやカンファレンスホール、商業施設)。受付は5階だ。入退館管理はグーグルなのに意外に普通で、手ぶらではなく、一般的な会社と同様、物理的な入退館カードをかざす。顔認証やAIなど生体認証を使うでもなく、新たなテクノロジーは実装されていない模様だ。

24階の社員食堂はビュッフェスタイルで、和食・イタリアン・サンドイッチバーなど、朝昼晩と食べ放題。中央にカフェがあり、バリスタがいる本格的なコーヒースペース、そして『ブルーボトルコーヒー』が入る。いずれも無料。別の階にはゲームルームがあり、卓球台やボードゲームも置かれている。この、食べ放題・飲み放題・遊び放題なシリコンバレー方式は、楽天など日本企業もまるごと真似る形で追随した。

社食の提供時間は、朝は午前10時まで、昼は11:30~14:00、夜は18:30~。サンドイッチバーやカフェは終日ずっとオープン。これらで過ごす休憩時間やリラックスタイムに、どれだけの時間を配分するかは、個人の裁量次第で、仕事と遊びの境目は曖昧だ。労務管理は自己申告で、厳密ではない。

各フロアにも、「ミニキッチン」と呼ばれる、無料の軽食・フルーツ・飲み物が置かれたスペースがあり、料理教室が企画されることもある。くつろげるカフェスペースは、各階の随所に用意され、コミュニケーションを促進する環境が整備されているのは、六本木時代から同じ。ボタンを押せば飲み物が無料で出てくる自販機があり、社員向けのコンビニもあるため、下界に買い出しに出向く時間はとられない。太りそうな環境であるが、低層階にはワンフロアの大半を占める社員専用のジムスペースも用意されている。

各部署の机は、流行りのフリーアドレスではなく、各自が自分専用のワーキングデスクを割り当てられる。向かい合った机のシマで、真ん中に衝立がある環境だ。座ると前の人は見えないが、横とは机がつながっていて視界に入る。「集中するうえで気になるなら、自由にカフェスペースなどで仕事をしてもOKなので、ストレスない環境だと思います」(中堅社員)。働く環境にオプションが多い。一等地なのに、実に贅沢な環境である。

「コミュニティースペースがたくさんあるのが特徴で、エラい人でも個室を与えないコンセプトでオフィスが設計されています。社員が、社長や役員クラスの人たちにも、自由に話しかけられる環境をつくっているのだ、と感じます」(若手社員)。社員どうしの対面のブレーンストーミングが技術革新につながる――というグーグルの理念は、このオフィス環境からも明らかだ。

ほとんどのコンサル会社がフリーアドレスを採用し、社員数の3分の1程度に席数を絞ってオフィスコストを削減し「会社に来るな」と言わんばかりなのとは対照的に、「ずっと会社に棲みついてくれ、快適だろ?」と社員に言っているかのような、贅沢なオフィスづくりである。

こうして社員の居心地を整え、労基法上は勤務時間外となるランチの時間も、カフェ休憩の時間も、役員クラスから新人まで、労働単価(時給)の高い多様で高スキルな人たちを、社内にずっと滞在させておくことで、社員どうしのコミュニケーションが深まり、コーヒー片手に話している間に仕事のアイデアが生み出され、技術革新につながる付加価値創造のスパイラルが…というのがグーグルの狙いだったはずだ。いわば「休み時間のビジネス化」である。

オフィスの福利厚生をすべて無意味化したコロナ

2020年は「ラーメンバー」「寿司バー」のオープンも予定され、「グーグル基準の和食」がどれほどのスペックなのか社内でも注目されていたが、残念ながらコロナ禍による完全リモートワークに突入してしまい、2021年3月現在も引き続き、食堂含めオフィス全体のまるごと閉鎖状態が続いている。オフィス移転してから、まだ実質的には数か月間だけしか使われていないことになる。

「ただでさえ、渋谷ストリームに移ってからは、『人と会わなくなった』と言われていました。六本木ヒルズ時代は4~5フロアだけで、1フロアあたりの面積が何倍も広かったから、偶然、いろんな部署の社員に出会うことも多かったのですが…」(元社員)。フロア数が4倍以上に増え、垂直方向に伸びたため、社内の友人知人に偶然会う確率は下がり、自慢のナチュラルボーンな偶発コミュニケーションやブレーンストーミングは、発生しにくい環境になった。

そればかりか、完全リモートワークとなったことで、渋谷ストリーム内の各種無料サービスや居心地の良さは、すべて無意味化されてしまった。US本社でも同様に2020年3月から在宅勤務となって出社再開は2021年9月としている。再度延期となるか、不透明な状況である。

「私は去年3月以降、一度も渋谷ストリームに出社していません

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普通に日本法人でも運用されている『gThanks!』の申請ページ(『WORKRULES!』より)

「法的要件に一致する限り、採用の選考時に犯罪歴が考慮されることはありません。」とわざわざアナウンスするリベラルさ。そして「人材紹介会社などからの人材の紹介、斡旋などはお受けしておりません」とうたう強気。アマゾンとは対照的に、ググって自分で応募してこい、という姿勢。

会社紹介の動画にも手話通訳を入れるなど、ダイバーシティーへの配慮は行き届いている

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