相変わらず洗練されきった広告。本当の「あなたの知らないIBM」は社員でも知らない人が多い。
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「将来設計はどうしますか?」「10年後、何していると思う?」「今、こういうプランがあるんだけど、どう?」……
2005年4~6月期も終盤の6月、日本IBMの各職場では、ライン長による「リソース・プログラム」の打診が盛んに行われていた。要するに早期退職優遇制度によるリストラである。
【Digest】
◇リストに載っているんですよ
◇「LPリスト」に基づき密室へ
◇ターンオーバーマネジメント
◇格差を拡大させた個人業績評価
◇トップタレントを早期昇格
◇評価の納得性はそれなり
◇「あれだけ働いていればな」という上の人たち
◇時給換算では、割に合わない
◇住宅補助に大企業らしさ
◇リストに載っているんですよ
IBMコーポレーションは1~3月期の業績が目標に届かなかったことから、5月4日、欧州を中心に
1万~1万3千人の人員削減を行うことを発表
。日本では秘密裏に実行することになり、同社労組によれば、約1,000人規模の数値目標が課されたという。
勤続年数によって10~14ヶ月分程度の割増退職金が提示され、再就職斡旋会社の紹介、業績評価が低い者への執拗なカウンセリングなどが、所属長によって行われた。外資系企業に共通する傾向であるが、日本法人は所詮は子会社。IBM本体から課された目標の達成こそが、雇われ社長(大歳氏)の評価指標となるのは宿命である。
このため、比較的、転職をしやすい若年層も対象になっている。
「所属長が個別に声をかけていました。自分が知っている範囲だけで20代も10人くらいがこのプログラムで辞めた。自分はもともと転職するつもりだったので、10ヶ月割増しはラッキーでした」(新卒入社3年目社員)。
「私の同期も、育児休職中にオファーが来て辞めました」(30代社員)。
このように、若手・中堅層も数多く辞めている。
入社3年目の若手から応募OKで、前年度の業績評価が5段階で真ん中以下でも対象者とされた模様。こうなると、社員の大多数はリストラ対象者であり、もはや安閑としていられるのは、コンサルティング部門に在籍する北城格太郎会長(経済同友会代表幹事)の息子(98年入社)くらいである。
◇「LPリスト」に基づき密室へ
もちろん、評価の低い中高年層はメインターゲットで、所属長(1stライン長)との面談、さらにその上長にあたる2ndライン長も含めた3者面談と、本人が根負けするまで、意に沿わないリストラ面談が繰り返された。「能力というよりは、押せば辞めそうな人、気が弱い人、たまたま儲からない仕事を担当していて理由付けをしやすい人、がターゲットになっています」(労組)という。
「あなたは、リストに載っているんですよ」。ある社員はそう所属長から言われたという。IBMでは、5段階の個人業績評価で真ん中よりも下の2つの評価が3回続くと「ローパフォーマー(LP)」と認定され、「LPリスト」入りする。これが人事部門から所属長に送られ、所属長はリストアップされた人を密室に呼び、プログラムを説明する。
「ローパフォーマーという言葉は、社内でよく聞きます。C(下から2番目)評価を3回貰うと、ぜんぜん違う職種に飛ばされたり、逆に、受け入れ先がなくなって全く異動できなくなる例もあります」(20代社員)
とはいえ、会社の業績が悪い訳ではない。米IBMの第一四半期決算は、1株あたり利益、売上高とも前年を上回っている。それでも、株主のため、飽くなき利益の追求のためにリストラを進める。日本で秘密裏にせざるを得なかったのは、こうした従業員を犠牲にした株主第一主義の経営手法が、日本の風潮では受け入れられないと判断したためと見られる。
日経グループをはじめ日本の経済紙誌は、もともと会社が発表したものしか書かないPR紙の性格が強いうえ、今年度は、見飽きるほどにクドイ膨大な広告キャンペーン
「THE OTHER IBM」(あなたの知らないIBM)
を展開中なので、IBMの経営陣が、スポンサータブー政策で報道統制すればよいと判断したと思われる。
◇ターンオーバーマネジメント
本当の「THE OTHER IBM」は、ターンオーバーマネジメントにこそある。.....この続きの文章、および全ての拡大画像は、会員のみに提供されております。
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2002年6月14日付の管理職向けレターで、業績管理の強化に基づくターンオーバーマネジメント(=人材の新陳代謝管理)の継続を明言した大歳社長。
文面からは相当な焦りが感じ取れる。
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同じく6月14日付で出された人事担当取締役からのライン専門職宛転送不可メール。
プログラム対象者は、「Bottom10%の社員」「Top Talentを除いた50歳以上の社員」などと明記。
50歳で18ヶ月増しと今回より条件も良い
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キャリアパスと報酬 |
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