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オープンハウス連続特殊詐欺事件、コーディネータ役元社員に懲役2年4月の実刑判決でも会社「コメントしていません」

情報提供
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詐欺・窃盗罪で懲役2年4月の実刑判決を受けた林健二氏が営業社員として働いていたオープンハウス保土ヶ谷営業センター。(横浜市保土ヶ谷区)

高齢者を狙った連続特殊詐欺事件に「コーディネータ役」としてかかわり、詐欺・窃盗罪に問われた不動産大手・株式会社オープンハウス(東証一部、荒井正昭社長)の元営業社員林健二氏(32歳)に対する判決公判が1月21日、東京地裁であった。佐々木淑江裁判官は懲役2年4月(求刑4年)の実刑を言い渡した。犯人組織の男と飲み屋で知り合ったのがきっかけで、同僚(実刑1年10月が確定)を誘い、連絡役などとして犯行に加わった。弁護側は執行猶予を求めたが、テレビを盗んだ前科があり、その執行猶予満了から間がなかったことから「規範意識が乏しい」として実刑となった。現役の社員2人(犯行当時)が実刑判決を受けた不祥事を前に、オープンハウス社は「この件についてはコメントしていない」と他人事のような態度をとっており、コンプライアンスが崩壊した企業文化を強く印象づけた。

Digest
  • 東京地裁412号法廷
  • 「ちょい役」でも共謀共同正犯
  • オープン社は「本件についてはコメントしていません」
  • ツイッターで「詐欺犯」の求人
  • だれでもできる犯行マニュアル
  • 「ツイッターの人物」は雲隠れ
  • 特殊詐欺から身を守る心得


日々、戸田恵梨香や松田翔太が出演するテレビCMが流れる、急成長企業のオープンハウス。だがその裏では、社員が副業としてやっている行為についての有罪判決が、続々と下っている。オープンハウスのチラシを受け取って電話すると、どんな社員が営業にやってくるのか…。

東京地裁412号法廷

1月21日午後、東京地裁412号法廷に、保釈中の元オープンハウス社員・林健二被告人は通常の入り口から入廷した。暗い灰色のスーツにアイロンのかかった白シャツ、黒い革靴はよく磨かれている。高齢者をねらった連続特殊詐欺事件に「コーディネータ役」として関与した詐欺・窃盗容疑で警視庁に逮捕されたのは2020年7月のことだ。手錠・腰縄をつけられて出廷していた勾留中と比べ、別人のように表情が明るい。

林元社員は起訴事実を全面的に認めている。争点は量刑のみで、昨年秋には判決が言いわたされる見通しだった。しかし、結審直前の昨年夏になって国選弁護人を解任、私選弁護人に委任した。前任の弁護人は実刑を前提に弁護活動を行っていた。それが不満だったのか、弁護人を変えたあとは、「執行猶予判決が適当である」との主張に切り替えた。被害弁済や贖罪寄付を行って情状証拠にした。

この日、判決に先だって論告求刑の手続きが行われた。検察側は懲役4年を求刑、一方の弁護側は執行猶予判決を求めた。

「これで審理を終えますが最後に言いたいことはありますか」

佐々木裁判官に問われ、証言台に立った林元社員は次のように述べた。

「今回自分がしたことで被害にあわれた3名の方には、弁済しましたが、足りていませんが、本当に申し訳ありませんでした。仕事をしてしっかり弁済し、犯罪を繰り返さないよう、交友関係を絶ち、家族の期待にこたえられるよう生活したい」

高く張りのある、明るささえ感じさせる声で、流れるように語った。営業マンであれば客に好かれるタイプだろう――長身の後ろ姿を傍聴席からながめながら筆者は思った。

「それでは審理を終えます。判決ですが、少し検討します」

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H社員(犯行当時)の誘いで「受け子・出し子」として犯行に加わった同僚の北野映喜氏(同、懲役1年10月の実刑が確定)が、高齢者からだまし取った銀行カードを使って金を引き出した現場付近(取手市役所)。

佐々木裁判官はそう言って手元の書類に目を落とした。3~4分ほどで顔を上げ、正面の証言台に立つ被告人に向かってよく通る声で判決を宣告した。

「それでは被告人に対する詐欺・窃盗事件について判決を言い渡します。主文、被告人を懲役2年4月に処す。未決勾留日数のうち110日を算入する」

懲役2年4月の実刑判決だ。林元社員が落胆する様子が後ろ姿から伺えた。

オープンハウス現役社員2人(逮捕後に免職)が逮捕・起訴された連続特殊詐欺事件は、2人とも実刑判決を受けるという形で、区切りがついた。なお、本稿執筆時点で判決は確定していないが、仮に控訴したとしても実刑が執行猶予に変わる可能性はまずないだろう。

「ちょい役」でも共謀共同正犯

公判で明らかになった事実によれば、林元社員が認めた犯行は、事件数で3件、罪状で6件(詐欺・窃盗)ある。以下の通りだ

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林社員(犯行当時)の同僚北野社員(同)が金を引き出した酒々井町役場敷地内にある銀行のATM(千葉県酒々井町)。盗んだ金はコインロッカーを介して組織の「上層部」に送金、2人の報酬もコインロッカーを介して支払われた。上層部との連絡は林社員が担当。「上層部」は検挙されていない。

掛け子(電話を被害者にかけてだます役)の松本和義氏(懲役6年が確定)は、ツイッターで知り合った犯行組織の人物と隅田川沿いの遊歩道で接触し、報酬の率などの打ち合わせを行ったという。写真は隅田川付近の遊歩道(東京都墨田区)。

掛け子の松本氏と小山龍耶氏(懲役5年が確定)が、プリウス車内から被害者に電話を掛けていたとみられるホームセンターの駐車場。捜査員らに現行犯逮捕される直前、松本氏は上層部の謎の犯人「ツイッターの人物」との連絡につかっていたスマートホンを手で折って破壊した。「ツイッターの人物」は逮捕・起訴されていない。(東京都足立区)

オープンハウスと協力して「特殊詐欺防止キャンペーン」を行った神奈川県警は、同社社員が特殊詐欺に関与していた件についていっさい口をつぐんでいる。警察はどこまで本気で特殊詐欺撲滅に取り組んでいるのか疑問がある。

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大東建託 株主2022/02/12 17:30
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記者からの追加情報

林健二氏は判決を不服として東京高裁に控訴した(2022.2.14追記)。
本文:全約8900字のうち約7500字が
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