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大東建託岡山東支店社員が高齢客から金だましとり 「土地購入の手付金」名目など被害総額3千万円、“ランドセット地獄”にはめる

情報提供
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大東建託の社員に「土地購入の手付金」名目で1000万円をわたし、だましとられそうになったアパートオーナーの女性(岡山市)。
 大東建託元支店長(2019年に懲戒解雇)が、「5月25日までに」詐欺容疑で逮捕された、と警視庁が発表した。顧客の土地を転売して利益を出すなどと虚偽の話を知人にもちかけ400万円をだまし取った疑いで、解雇後、特殊詐欺に関与したとして実刑判決を受け服役中、とも伝えられる。同社のコンプライアンスの崩壊ぶりを印象づける事件だが、これも氷山の一角にすぎない。岡山東支店に所属する男性営業社員(50歳代)が、「アパート用地購入の手付け金が必要」などと嘘をつき、高齢の顧客に金を払わせて損害を与えていたことが、被害者らの証言で判明した。被害者はすくなくとも3人、被害額は約3000万円に達するとみられる。社員は解雇され、被害金を大東建託が弁償した模様だ。「金が返ってきたのはよかった。大東は厳しい。だました社員も大東の被害者だと思う」――被害者のひとりは取材に対して複雑な心境を打ち明けた。
Digest
  • 突然やってきて頭を下げた営業社員
  • 「ランドセット」でマンション
  • 「いい土地がある。手付金がいる」
  • 「1000万円貸してほしい」と言われたオーナー
  • ランドセット地獄
  • 疑問が続々と
  • 「どうかこの件に関しての開示は控えて…」
  • 「工事代金水増し請求事件も発生」と元社員

突然やってきて頭を下げた営業社員

「すみません、すみません、としきりに頭を下げるんです」

アパートがいくつも立ち並ぶ岡山市郊外の旧田園地帯、古い木造家屋の上がり框(かまち=玄関を上がったところ)に腰掛けた女性Aさん(78歳)は、大東建託社員にだまされたいきさつをゆっくりと話しはじめた。

 ――昨年のある日の日中のことだった。畑仕事をしていたところに大東建託岡山東支店に所属するのH社員(男性)が訪ねてきた。大東建託のアパートやマンションをいくつか持っているが、そのうちの1棟はH社員が担当した。その縁で、H社員は2〜3ヶ月に一度くらいの頻度でやってきていた。雑談をしては帰っていた。ここしばらくは顔を見なかったものの、訪問自体はめずらしいことではない。

だがこのときはいつもと様子がちがった。「頭ばかり下げて、なにがすみませんなのかわからなかった…」――

Aさんは畑仕事を中断して母屋に戻り、H社員を家の中に上げた。上司らしい男性社員2人も、いっしょだった。ひとりは社員の問題行動について調査する部署の人で広島から来たということだった。不思議な気持でいるAさんを前にして、H社員や上司らは神妙な様子で事情を説明した。

「土地購入費の一部としてお金を預かりましたが、あれは嘘でした…」

じつは、土地購入の「手付金」だとしてAさんはこれまで何度かH社員に金を渡した。それが「嘘」だという。にわかに何のことか理解できなかった。

「Hにわたした金額はいくらになりますか」

H社員の上司からそう尋ねられ、Aさんは記憶をたどって答えた。

「150万円、200万円…ちょうど1000万円ですね」

上司はH社員に向かって、「この金額でまちがいないか」とたしかめた。H社員は「まちがいない」と答えた。「被害額1000万円」は確定した。

「会社から弁済します」

 上司の社員はそう答え、引き揚げていった。

この突然の訪問から半月もしないうちに、大東建託から1000万円が口座に振り込まれた。H社員はやめた、と聞いた。あっけない出来事だった。

「ランドセット」でマンション

なぜ1000万円もの金をH社員に預けることになったのか。Aさんによれば事情はこうだ。

Aさんの一家は代々続いてきた農家だ。先祖伝来の農地を多数もっていた。だが、時代とともに住宅の開発が進んで固定資産税や相続税が上昇、農業を続けることが難しくなった。そうした状況があって、農地を宅地に転換し、大東建託のアパートを建てて経営するようになった。かたわらで農業を続けていたが、やがて配偶者が亡くなり、高齢になったこともあって完全にやめた。

H社員が訪ねてくるようになったのは、10年ほど前からだ。50歳くらいの社員だった。彼とは仕事をしたことがない。また、そのころにはもう建てられる土地もなかった。だがH社員は営業に熱心だった。建てる土地がないAさんでもできるアパート・マンション経営があるのだという。

 「ランドセット」である。

あらたに土地を購入し、そこにアパートやマンション建てるのが「ランドセット」と呼ばれるやり方だ。自分の土地にアパートを建てる目的が相続税対策や資産運用であるのに対し、ランドセットは完全な投資である。

Aさんは土地を買ってまでアパートをやるつもりはなかった。だが、H社員はしきりに「ランドセット投資」をもちかけてきた。大東建託の営業ノルマがきついことはAさんも承知だったので無下にはしなかった。

「岡山市内にいい土地がある」

 そういう話を、H社員はいくつも持ってきた。安価な土地もあったが、場所が悪ければ失敗すると思いAさんは慎重だった。いくつもの提案を検討し、「ここなら大丈夫だろう」と思ったのが岡山駅に近い土地だった。一等地で数千万円はする場所だ。そこに鉄筋コンクリート造りの4階建てマンションを建てるという。土地購入はうまくいった。数億円の大事業だったが、ほぼすべて銀行融資でまかなうことができた。

「あの当時は土地代まで銀行が貸してくれたからね。いまはダメみたい」

Aさんが言う。

ランドセットで建てたマンションの入居はきまり、経営は順調にすべりだした。この事業以後、AさんはH社員を完全に信用した。悪い人物にも見えなかった。

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「土地購入の手付金」と嘘をついて顧客に金を払わせる不正を行った社員が一時所属していた大東建託岡山東支店(岡山市北区)。社員は岡山県内の支店をいくつか変わっている。

「いい土地がある。手付金がいる」

岡山市にランドセットでマンションを建てた後も、H社員はときどき顔をみせに来た。雑談が多かったが、2年ほど前、2020年ごろから「ランドセット」の話を持ってくるようになった。

「岡山市内にいい土地が売りに出ている」

そう言ってH社員がAさんに見せた売り物件とは、岡山市中心部の、もっともにぎやかな場所だった。駐車場だったところが売りに出たのだ、とH社員は説明した。

「一等地なのですぐに売れてしまう。手付け金を渡しておけば買える。150万円、用意してほしい

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「土地購入の手付金」だとして大東建託社員に1000万円を貸し付け、トラブルに巻き込まれたアパートオーナーのBさん(岡山市)。土地はじっさいに購入したものの、貸した1000万円は代金の一部に充当されていなかった。強く返済を求めた結果、元本はもどってきたが、金の売買や健康食品を買わされるなど数百万円の損害を被り、大東建託が弁済したという。

社員の要望でBさんが契約した「架空契約」。

「土地購入の手付金」としてBさんが社員に貸し付けた際の領収書。土地代金に充当していなかったことが後に判明する。

社員からBさんの元に届いた詫び状。不正発覚をおそれて、会社への連絡をやめてほしい旨が記載されている。

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読者2022/06/14 21:36
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