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日産、全社員に「うつ病&性格診断」実施 成果主義・リストラで精神疾患増

情報提供
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メンタルチェックテストを3万3700人全社員対象に実施した日産自動車
 日産自動車がメンタルチェックテストを全社員約3万3,700人を対象に実施した。280項目にのぼる質問は「浮気がしたい」「子どもの頃万引きをしていた」「誰かが毒をもろうとしている」など奇問・珍問・難問も含まれ、診断に少なくとも1億6850万円を費やしている。成果主義に基づく労働強化が進む日産では、さらに1,500人のリストラも進行中。「メンタル系休業者」が急増している。テストの結果、「慢性的高負荷を容認」と名指しされた部署は、日産テクニカルセンター(NTC=神奈川県厚木市)の研究開発部門だった。
Digest
  • 受診者の10%が問題アリ?
  • 「メンタル系休業者」200人台半ば近くに
  • 総合評価最低だった日産女性社員がうつ病に
  • ストレス検査3割、残りは性格診断
  • 絶対的な仕事量が増えた
  • 労働者に広がる「心の病」

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■「ココロの健康診断」。日産自動車はこのメンタルチェックテストを全社員対象に実施。今回、280項目から抜粋。「奇問・珍問・難問」に「はい」「いいえ」で答えていく。
「浮気がしたいです」
「狩りが大好きです」
「ときどき悪霊に、とりつかれます」

 この質問は、2005年から今年にかけ、日産自動車の全社員(3万3700人)が受けた「メンタルへルスチェック」の一部。右記「ココロの健康診断」(画像)は、全280問の抜粋である。

 試しに読者も「ハイ、イイエ」で答えてみるとよい。頭を抱えてしまう質問も多い。

 設問を見た精神科医は「奇問・珍問はテストをまじめに受けたかどうかを判断するためにわざと挟んでおく、よくあるパターン」。全体としては、「うつ病などの病的傾向を見るだけでなく、受診者の性格を把握するための設問も多い」という。

つまり、受診者のメンタルへルス上の問題点をあぶり出すとともに、その性格をも探り出そうとする意図があるというわけだ。

受診者の10%が問題アリ?

 日産社員が受けたメンタルチェックテストは、アドバンテッジリスクマネジメント社(以下、ARM社と略)が作成したもので、「ココロの健康診断eMe(イーミー)」と呼ばれている。ARM社はこれまでに日産を含め47社と契約し、約18万人の社員に実施してきたという。

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■ココロの健康診断結果:日産社員(受診者)の結果(一部)
メンタルテスト後にアドバンテッジリスクマネジメント社から送られてくる。
 質問項目はARM社から各社員のパソコンに送られ、社員も「ハイ、イイエ」を選択してパソコンで返信する。その結果は社員あてにメールで送られてくる(会社には知らされないことになっている)。

 診断結果はまず末尾別掲のように「順応・稀有・防衛・細心・活力・被暗示性」など合計13項目にわたって点数化される。ついでその数字をもとに、「メンタルへルスの緊急性」「こころの不安定さ」「仕事・職場の負担」「プライベートの負担」「仕事の適正」など7項目が偏差値で判定される。平均の「50」を超える数値項目が多いほど、「メンタルへルスに問題あり」と判断されるわけである。

 受診者は「要対応度1~6」に分類される。「5」と「6」が「問題あり」で、同社の担当医らがメール、電話、面談によって相談・カウンセリングをおこなう。さらに、放置しておけないと判断されると、本人の了解を得て、会社(日産)に通知する場合もあるという。

要対応度「5」と「6」は受診者の10%程度としているから、ARM社はこれまでに約1万8000人を「問題あり」と診断したことになる。このような、成果主義の負の側面がもたらしたメンタルヘルス対策をウリにする新手の診断ビジネスは活況を呈している。

社員のため、といえば聞こえはよいが、この診断に巨費を投じる説明責任を株主に果たせるのかは疑問である。なぜなら、ゴーン改革以降の急激な労働強化という本質的な問題を解決するものでは、全くないからだ。

「メンタル系休業者」200人台半ば近くに

 日産の内部資料によると、30日以上の長期休職者のうち、メンタル面を理由に休職中の社員は、2002年度から2006年度に倍増し、長期休職者全体の4割を超えた。

 また、日産労組の資料では、2002年度に100人未満だった「メンタル系休業者」が、2005年度には200人台半ば近くに急増した。これは全組合員(約3万人)の1%に迫るもので、事態は深刻だ。

 日産は2000年度から、カルロス・ゴーン(現社長)が「リバイバルプラン」という名のリストラ策を実行しはじめた。それは、5工場を閉鎖し、グループ全体で何と2万1500人(14.5%)もの人員削減をするという猛烈なものだった。

 おかげで業績はV字回復し、"コストカッター"の異名とともにゴーンはすっかり有名になった。その後も、「180(ワンエイティ)プラン」(2002~2004年度)、「バリューアッププラン」(2005~2007年度。ただし2008年度まで1年延期)という名の高い生産目標を設定し、社員を駆り立ててきた。

 その結果、社員数は減ったのに生産高は急増。とくに「180プラン」時の3年間で販売台数は100万台も伸びて360万台に達した。

 この時期は、内部資料や労組の資料にあらわれた「メンタル系休業者」の急増期間とピタリ符合する。これは、2004年度(6車種新発売)、2005年度(5車種新発売)と、あいついだ新車の一挙発売のための開発準備期間にもあたっている。この期間に労働密度は相当高まったと思われる。

 「ちょうど新人事制度の導入時期であり、一切の無駄を省けという強い指示が出て、仕事はさらに厳しくなりました。人事評価も以前よりずっと細かく具体的になり、いまも息が抜けない状態です」とこぼす社員もいる。

 日産の労務管理の特徴は、社員一人ひとりに「コミットメント」という"必達目標"を立てさせ、その達成度を賃金と昇進に反映させる。内部資料によると、係長クラスでも月給で最大約4万円の差がつく。

 これはいわゆる「成果主義」なのだが、日産の場合、「コミットメント」より一段高い「ターゲット」と呼ぶ目標も同時に立てさせて、さらに社員を追い込んでいる。

 しかも今また、「バリューアッププラン」の未達成を理由にして、45歳以上の一般従業員(係長以下)を中心に、1500人のリストラが進行中である(4月24日発表)。45歳なら給与43カ月分を退職金に加算

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■診断結果を分析する項目テストの信頼性を示す項目(順応、稀有、防衛)と性格の特徴を示す項目(細心、活力、被暗示性、反権威性、男性性・女性性、信念、要求水準、疲労、外向性、内向性)。

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きき耳2008/02/01 02:51
DATSUN2008/02/01 02:51
ネモ2008/02/01 02:51
日惨関係者2008/02/01 02:51
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