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救済への試み 『あなたなら、どうする』

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 女性弁護士が非行、犯罪に至った少年少女の救済に乗り出す。その一筋縄でいかない救済の実態を漫画で描くと同時に、少年法の解説を文章で著している。無力な大人たちと断る勇気がない子どもたちという日本社会の実態をレポートしている。

非行や犯罪とは関係がない青少年時代を過ごした人にとっては非行少年少女の実態というのは目を背けたくなるものだろう。本書はその目を背けたくなるものを高里むつる氏の少女漫画風の漫画と、大平光代弁護士の「ゼミナール」形式の解説で、伝えようと試みている。

家族関係が悪く、家出して同棲を始めた少女が、同棲相手の手引きで複数の男に強姦に遭う。さらにその犯行現場の様子を撮影されて恐喝をされる。親はそうした窮地に至っている家出少女に対して無関心の様子である。万引きで捕まった子どもを引き取りに、父親が行くとその場で体罰を加えるがその理由が「俺の顔に泥を塗りやがって」というもの。「子どもが万引きするようなものを置いている」と店を非難する。

作者の大平光代氏は1965年生まれで、中学時代のいじめ被害のため自殺未遂をするが、それがニュースとして報じられ報道被害を受ける。世間の冷たさを実感していわゆる極道の世界に足を踏み入れるが、養父の心理的支援で立ち直り、弁護士として社会復帰し、少年事件を専門としている。『だから、あなたも生きぬいて』(講談社、2000年)に詳しい。

私自身は中学校時代にいじめられている友人をかばったばかりに、30人ほどの不良集団と闘ってずいぶんとつらい思いをしたことがある。その不良集団は暴走族や暴力団とつながりがあって、身の危険という程度まで発展した。私はこれまでにいじめ関係の学術論文を書いたり、いじめ被害の中学生を立ち直らせるべく家庭教師として努力したことがある。

 その一方で、非行や犯罪に手を出す少年少女はいじめる側に加担することが多いため、排除すべき対象のように感じていた。大平光代氏がとりわけいじめ被害者であるため説得力があり、そのような単純な問題の見方ではいけないと反省させられる一冊であった。

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