販売店の裏に積まれた「押し紙」。 読売が立て続けに裁判を起こした背景に、「押し紙」についての内部資料が流出することへの恐れがあるのかも知れない。(写真は本文とは関係ありません。)
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フリージャーナリストの黒薮哲哉氏が読売新聞法務室長ら関係者から提訴された2つの裁判のうち、著作権裁判が14日、東京地裁で始まった。読売の江崎法務室長が送った催告書をネットに掲載したのは違法かどうかが検証される。もし江崎氏の訴えが認められたら、新聞記者やジャーナリストは調査報道をするうえで、大きな規制を受けることになりかねない。裁判の開始を機に黒薮氏が手記を寄せた。
【Digest】
◇著作権事件の経緯
◇面識の無い人物から催告書
◇著作権法でいう著作物の条件
◇名誉毀損裁判
◇言論よりも裏工作に熱心な読売
記事やルポルタージュの中で、許可なく第3者の文書を公表するのは違法行為にあたるのか――。こんなテーマが争点になる裁判が、4月14日、東京地裁で始まった。
裁判の結果によっては、ジャーナリストや新聞記者の仕事に大きな制約が課せられかねない。特に調査報道に支障が生じる可能性がある。そんな懸念もあってか、多くの出版関係者が傍聴に訪れた。
この著作権裁判の被告は、本稿を執筆しているわたし自身である。読売がわたしに対して今年の冒頭から立て続けに仕掛けてきた2つの訴訟のうち、著作権裁判が先陣を切った。
なお、もうひとつの訴訟は、名誉毀損裁判で2230万円の賠償を求められたものである。後に述べるように、わたしが主宰するネット上の「新聞販売黒書」の記述で名誉を傷つけられたというのだ。こちらは5月9日に開始される。どちらも、読売新聞西部本社の法務室長である江崎徹志氏がしかけてきたものだ。(名誉毀損裁判の原告は、西部本社など1法人と江崎氏含む3人の社員。)
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被告(わたし)の弁護団(馬奈木昭雄弁護士ら9名)が裁判所に提出した求釈明申立書。催告書のどの部分に「思想又は感情」の表現があるのかなど、5項目の具体的な質問が明記されている。 |
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著作権裁判の第1回口頭弁論は本日14時より行われた。出席者は被告側がわたしと市橋康之弁護士、原告側が喜田村洋一弁護士。裁判長は、喜田村洋一弁護士に対し、催告書の文章のどこに著作物性があるのか書面で詳しく説明するように求めた。次回は5月28日に、電話会議が開かれる。
電話会議とは聞きなれないかたも多いと思うが、双方の弁護士と裁判官が電話で、書面の確認や意見交換をするもので、正式な裁判のプロセスである。
提訴されて以来、わたしは著作権裁判を起こした読売新聞社に対するある共通した疑問の声を耳にしてきた。それは、
「記者が入手した資料を自由に公表できなくなれば、読売はどのような原則に基づいてジャーナリズム活動を展開するのだろうか?」
と、いう疑問である。いわば読売の提訴は、報道機関の自殺行為ではないかというのだ。
わたしなりに読売の真意を推測すれば、読売はジャーナリズム活動の自由を捨て去っても、ネット上のメディアに「押し紙」関連の内部資料が流出する情況を防止しようとしているのではないか、という結論になる。そのための手段として裁判を選んだのではないか。
◇著作権事件の経緯
まず、著作権裁判の経緯を手短にふり返ってみよう。
2001年ごろ、読売新聞西部本社は、久留米市を中心とする福岡県の筑後地区で新聞販売店の整理・統合を進めていた。読売のターゲットになった販売店のひとつに、真村久三さんが経営するYC広川がある。読売は真村さんの店を「飼い殺し」にして、担当員の訪店も中止した。有形無形の圧力をかけて、真村さんに廃業を迫っていたのである。
これに対して真村さんは、地位保全の裁判を提起した。裁判は2007年に最高裁が読売の上告を退けるかたちで終わった。真村さんの勝訴だった。
裁判で敗戦色が濃くなってくると、読売はYC広川に対する方針を改めざるを得なくなった。そこで昨年の末に真村さんに、訪店の再開を申し入れた。しかし、真村さんは読売の真意が分からない。
そこで代理人の江上弁護士から、読売に書面で真意を問い合わせてもらった。その結果、読売の法務室長である江崎徹志氏が、次の回答書を返送したのである。
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事件の発端となった江崎氏の回答書。江崎氏は、この回答書は著作物であると催告書の中で述べている。もし、著作物に該当しなければ、催告書の内容そのものがデタラメということになる。
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前略
読売新聞西部本社法務室長の江崎徹志です。
2007年(平成19年)12月17日付け内容証明郵便の件で、訪店について回答いたします。
当社販売局として、通常の訪店です。
以上、ご連絡申し上げます。よろしくお願いいたします。
◇面識の無い人物から催告書 わたしは自分が主宰する
新聞販売黒書で、読売がYC広川に対する訪店を再開するというニュースを伝えた。ひとりの販売店主が七年にもおよぶ大企業からの嫌がらせに打ち勝ったのだから、大ニュースだった。記事の裏付けを示すために、上記の回答書も引用した。
この回答書こそが、今回の著作権裁判の直接の引きがねになったのである。記事を掲載した翌日、わたしは面識のない江崎という人物からいきなりEメールを受けとった。それは「迷惑メール」に分類されていたのだが、念のために開いてみた。するとそのメールには、「催告書」なるものが添付されていた。
記事に引用した回答書は江崎氏個人の著作物なので、削除するように、催告書で求めてきたのである。
しかし、後に詳しく説明するように、著作物という理由で削除を求める場合は、その文書が著作権法で定められた著作物の条件に合致しなければならない。
わたしが判断した限り、回答書はそれに合致していなかった。催告書には、なぜ、回答書が著作物に該当するのかを論じた箇所は見当たらなかった。なにを意図してこのような文書を送りつけたのか、江崎氏の感情や心理をあれこれと想像したが、結局、分からなかった。余りにも単純な記述だったので、わたしは相手の真意が理解できなかった。
そこでわたしは江崎氏の要求を断り、今度は催告書そのものを新聞販売黒書で紹介した。すると江崎氏は、催告書を削除するように、仮裁判を提起してきたのである.....この続きの文章、および全ての拡大画像は、会員のみに提供されております。
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催告書が添付されていたEメール。初対面の人に対しては、まず、自己紹介するのが社会人の常識のはずだが・・・・
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