東京で行われた「名ばかり店長」集会ですき家の労働実態を報告する福岡淳子さん(右)。
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全国約1000店舗の牛丼チェーン「すき家」を展開する株式会社ゼンショーは「世界から飢えと貧困を撲滅する」をスローガンに掲げる。だがその店舗では、実際に働いたアルバイトの勤務時間を後から削る賃金不払いや、1人シフトで11時間連続の深夜勤務をさせて実質休憩時間なしといった労基法違反が今もまかりとおり、「アルバイトは業務委託契約」などとアクロバチックな主張で逃げている。4月8日に残業の割増し代や“名ばかり店長”としての残業代不払いでゼンショーを刑事告訴した現役店員に、現場の実態を聞いた。
【Digest】
◇1日18時間働いても残業割り増し賃金なし
◇いわれのない理由で店長降格、最低時給に
◇業務委託のため残業割り増し無しと主張するゼンショー
◇1日18時間働いても残業割り増し賃金なし
アルバイトの福岡淳子さん(41歳)が勤務している「すき家仙台泉店」は、仙台市の地下鉄南北線の終点である泉中央駅から約1.5キロ、国道4号線沿いにある24時間営業店。隣は空き地で、店の裏側には川が流れ、隣接するゲームセンターも夜12時には締まり、夜間は人通りもほとんどないという。
「入社したのは2000年10月頃。求人情報誌を見て、家からとても近かったことと、時給が800円と高かったので応募しました。仙台では700円台が相場なので。
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福岡さんが入社以来勤務するすき家仙台泉店。夜になると周囲に人気はなく、夜間1
人シフトでは防犯上も危ない。

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それ以来8年間、ずっと仙台泉店です。当時は、アルバイトは1000時間勤務するごとに時給が10円ずつ上がるシステムで、5000時間で50円、850円になったのが上限でした。
残業代については全く説明がありませんでした。入社して3ヵ月後くらいに疑問に思い、社員に質問すると、『ウチは残業代なんかつかないよ。確か175を越えたらあるんじゃない』と言われました」
労働基準法によれば、1日に8時間以上働いた場合に残業割り増し代2割5分が発生する。
ところがすき家では、1カ月に175時間以上働いた場合に初めて、その175時間目から残業代が発生するのだという。その175時間をどう働いたかは問題にされない。1日に18時間働いても全く残業割り増し代はつかない。
「その前に働いていた会社はきちんとしていたので、まさか大手の会社が違法なことはやっていないだろう、飲食業の小売はこれで違法ではないのだろう、と思っていました」
「クルー」と呼ばれるアルバイトは、経験を積むとアルバイトのまとめ役としての「キャプテン」になり、次に「チーフ」、最後に昇格試験を経て店長格としての「スウィングマネージャー」となる。福岡さんも2005年4月に昇格試験に合格し、仙台泉店のスウィングマネージャー(店長)となった。いずれも雇用形態はアルバイトのままである。
「でも、チーフ時代にはすでに店長と同じ業務をさせられていました。シフト作り、バイトの穴埋め、他店へのヘルプ、バイトの採用まで。そんなのはどの店舗でもよくあることです。
一番過酷だった36時間連続勤務も、2004年頃のチーフ時代でした。仙台泉店で18時間働き、オープンする直前だった4号古川店の開店作業のヘルプに入って18時間。少し休んだだけで、そのすぐ後にも仙台泉店に戻ってシフトに入りました。あわせると70時間くらい。3日間、家に帰れませんでした」
当時の残業代割り増し分はいまだに支払われていないが、2年という時効にかかるため、今回の刑事告訴には含まれていない。
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福岡さんら仙台泉店のアルバイト3名が提出した告訴状。4月8日付けで、ゼンショーの小川賢太郎社長を労基法違反で刑事告訴し、残業代の割り増し分と福岡さんの時間外手当の支払いを請求している。
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スウィングマネージャーになったのは当時の上司に依頼されたためだが、しかしその際、スウィングマネージャーになると時間外賃金(残業代)が支給されない、という説明は一切なかったという。
「給与明細を見て初めて、残業代がつかないことを知りました。それどころか、1日当たりの店の労働時間を削減しろ、と言われ続けたので、他の従業員の給料に響かせないためには、自分の時間を削るしかない。その削った分の給料を計算したら月に10万円以上になる
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ゼンショー本社は品川駅港南口にそびえるJR品川イーストビルの6F~8Fにある。すき家の店舗数は4月末現在1017店、年間売り上げは800億以上。なか卯、ココスジャ
パンなど傘下の企業も20を数える。

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