My News Japan My News Japan ニュースの現場にいる誰もが発信者のメディアです

ニュースの現場にいる誰もが発信者のメディアです

全ての唯物論者のための空想科学「神は沈黙せず」

情報提供
ReportsIMG_I1092839875994.jpg
 この世は因果関係で満たされている。いや、正確にいえばわずかな因果関係と、そのように見える仮説もしくは相関関係で満たされているといったほうが近いだろう。

何か事がおこれば、我々はなぜそのことが起こったのかを知りたがり、無理やりにでも理由をつけようとする。子の親殺しや親の子殺しといった悲惨な事件の動機は何なのか、この商品は売れるはずなのになぜ売れないのか、ヤマンバファッションのような合理的には流行りそうにないものがどうして流行ったのか。

我々はいわば全てに合理的な理由を求めるという極めて科学的で唯物論的な世界に身をおいている。これは信仰といってもよい。我々は意識していようがいまいが、科学という宗教、常識という教義の中に身をおいているのだ。

本書は突拍子も無い話である。幽霊が出てくる。UFOが出てくる。神が出てくる。空からありえないものが次々降ってくる。非科学的な現象が連発する。

 しかし同時に論理的でもある。合理的でもある。本書のアプローチは極めて科学的だ。「文學界」などに載っていそうなアナーキーな前衛小説とも違うしエキセントリックでもない。合理主義者、唯物論的世界観を崇拝する人にもすんなり入っていける小説である。 それはなぜか。

その理由は、非合理を科学的なアプローチで合理的に書いているところにあるように思う。突拍子も無い話でありながら全体を通せば一貫したテーマ、極めて合理的な流れで話は展開する。典型的なSFというと若干違和感がある。「空想科学小説」と日本語に直し、虚心坦懐にこの言葉を咀嚼してはじめてぴんと来る小説である。

正直何箇所か、くどさやマニアックさを感じる部分もある。しかしだからこそ(反語的ではあるが)総体でのリアリティは増すのだろうと思う。少なくとも本書を手に取るような読者の大部分はSFにリアリティを求めているはずである。具体的には、小説に感情移入し、当事者意識を持ちあたかも実体験するようにその小説の世界観を感じることを求めているはずである。

最後に本書を読む上でのいくつかの注意事項を書いておきたい。本書の中には多くのエピソード、小話が存在する。明らかにフィクションと見破れるもの、よく読んではじめてフィクションと見破れるもの、明らかにうそ臭いが実は本当のこと、いろいろなパターンが混在する。これらはいかにも本当っぽく書いてあるため、雑学として周りに話したくなるが、大嘘の場合もあるので注意が必要である(知ったかぶりして人に話すと恥をかく可能性が高い)。また経済に関する部分は若干リアリティに欠け、特に大学教養程度以上ののマクロ経済の知識を持つ人は後半部分の展開に首を傾げる場面があるかもしれない。

 しかしながらいずれにしても本書は、似非科学も含む科学全般、特に人工知能、進化論、超心理学(超常現象)に関心がある人には必読の書であることは間違いない。

はてなブックマークコメント

もっと見る
閉じる

facebookコメント

読者コメント

書き手2008/02/01 02:49
どうかな2008/02/01 02:49
※. コメントは会員ユーザのみ受け付けております。
もっと見る
閉じる
※注意事項

記者からの追加情報