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未成年の新隊員をボコボコに 自衛隊に横行する旧陸軍の“伝統”

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旧日本軍の新兵虐待を彷彿させる新隊員暴行事件が発覚した、陸上自衛隊駒門駐屯地(静岡県御殿場市)
 陸上自衛隊駒門駐屯地(静岡県御殿場市)で昨年10月、未成年の新隊員が上官からリンチを受け、奥歯を2本折るなど負傷する暴行事件が起きた。「いまだにこんなことがあるなんて、信じられない。まるで旧日本軍だ」。あこがれの自衛隊で受けた理不尽な仕打ちに、被害に遭ったAさんは悔しさを募らせる。暴力事件で懲戒処分を受けた自衛隊員は、昨年度1年間で80人以上。うち、事件の詳細が国民の前に明らかになったケースは、ごく氷山の一角だ。
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軍隊にあこがれて入った自衛隊

 「父が軍隊好きなんです。その影響で僕も陸軍というものにあこがれていました。自衛隊に入って、体力をつけて。できれば狙撃手をやってみたいと思っていたんです」

 そう話すのは、元陸自2士のAさん(19歳)だ。部隊配属になったばかりの昨年10月31日深夜、宿舎の営内班で、上官から殴る、蹴るの暴行を受ける。

 「正座させられて、足で蹴られました。よろけたところを拳で顔を殴られた。ガーンと。意識が薄らいで…」

 当時18歳だったAさんは、顔面から出血し、奥歯2本を折る大ケガをした。

 「こんなひどいことがいまだに横行しているなんて、信じられない」

 自衛隊へのあこがれは、事件後一変した。入隊前から旧日本軍の暴力体質については知っていた。だがそれは過去の話。自衛隊は違う――そう信じていたという。

 教育隊では暴力の類もいっさいなかった。教官は優しく、厳しい、人間味のある人物だった。

 半年間の教育を経て配属された先は、駒門駐屯地のT中隊某小隊。駐屯地内で生活しながら、戦車を塗装する作業の手伝いなど雑用に追われる毎日がはじまった。厳しかったが充実感があった。「早く仕事に慣れて頑張ろう」と張り切っていた。

 だが、部隊配属になって間もない昨年10月31日の夜、事件は起きた。
 午後5時に仕事を終え、夕飯を済ませてから風呂に行き、雑用をこなしてから午後7時半ごろ、営内班の自室に戻った。

 部屋は4人部屋で、同僚のB2士、上官の士長2人と相部屋だ。士長ひとりは外にでていて、部屋には3人が残っていた。B2士もAさんと同じ未成年だ。それぞれ自分のベッドで本を読むなどしていた。つかの間の安らぎの時間だった。

◇就寝前の営内班で「正座しろ!」
 上官2人の姿が部屋の入り口に現われたのは午後10時近かった。W士長(25歳)とI1士(23歳)だ。2人とも赤い顔をしていた。酒を飲んでいるらしかった。駐屯地内では原則飲酒は禁止だが、「隊員クラブ」という場所だけは酒が飲める。「隊員クラブに行って、飲んできたのだろう」とAさんは推測した。

 就寝前の点呼を取るため、当直の隊員がやってきた。

 「異常ないか」

 「異常ありません」

 当直隊員は、確認を終えると立ち去った。直後に、入り口にいたWら2人が部屋に入ってきた。

 「正座しろ!」

 怒鳴ったのはI1士のほうだった。部屋の中央付近を指差している。ベッドに腰掛けていたAさんらに命令しているのだ。

 「何のことかまったく理解できませんでしたが、とにかく従ったんです」

 Aさんは、B隊員と並んで床に正座した。正面にI1士が立ちはだかり、W士長は傍らのベッドに腰掛けた。最初から部屋にいた士長は、ベッドの上で傍観している。

 「お前ら、態度が悪い」

 怒号が飛んだ。

 「はい。すみません」

 わけがわからずに、2人は謝った。

 「声が小さい!」

 頭上から罵声が浴びせられた。悪夢の夜がはじまった。

◇「血を出しやがって」
 「お前ら、4人いる“一個上の先輩”の名前わかるか」

 Wが尋ねた。B2士が先輩2人の名前を言った。Aさんは、同じ名前を繰り返すのがやっとだった。あと2人いるという先輩の名前は、いくら考えても思い出せない。

 「あと2人の名は?」

 I1士が語気を強めて迫る。沈黙が続く。必死で考え込んでいたB2士が、意を決したように口を開いた。

 「一個上の先輩とは、年ですか、それとも階級ですか」

 年季の序列か、それとも階級か――この素朴な質問が上官の憤激に油を注ぐ。

 「質問を質問で返すんじゃねえよ!」

 Iは怒号とともに、正座しているB2士の左肩付近を足で蹴った。Bさんは倒れかけ、床に手をついた。そして焦りながらまた言った。

 「いや、一個上とは年か階級かわからないのですが…」

 「そんなの関係ねえよ!」

 怒鳴り返したのは、ベッドに座っていたW士長だ。立ち上がったと思うと、歩み寄りながら足裏でB2士を蹴り倒した。

 Aさんの横で、B2士は床に横倒しになった。その腹を、W士長は何度も蹴飛ばした。みぞおちに命中し、うめき声がした。

 「うう、と、苦しそうに歯をかみ締めて、おなかを抱えていました。W士長はさらに、B君の襟をつかんで床をひきずり、馬乗りになって首を絞めはじめた。ごめんなさい、ごめんなさい、とB君は必死で謝っていました」(Aさん)

 床を引きずる際、ビリビリとTシャツが敗れる音がしたという。

 B2士は息も絶え絶えにもがき、声にならない声で謝り続けた。歯ぐきのあたりに血がにじんでいた。

 「苦しいか」

 W士長は、笑みを浮かべながら首を絞め続け

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営内班の部屋で、Aさんらは正座させられた無防備な状態で、上官から殴る、蹴るの暴行を受けた。

Aさんは左目付近を拳で殴られ、眉を切る。血が付近のシーツに飛び散ったという。

暴行を加えた隊員の処分は停職7日。「平素の服務態度・清掃要領等について指導していた」としているが、Aさんの証言では「指導」に値する理由は何もない。

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userinjapan2011/07/29 17:28

「一個上の先輩とは、年ですか、それとも階級ですか」←これは変だな。どっちでもないと分かる筈。写真も営内班ではないと思われる。

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