白い嘘

White Lie

軽い[悪意のない]うそ (三省堂「EXCEED 英和辞典」より)。


 「嘘は二つのタイプに分類できる。白い嘘と黒い嘘である。黒い嘘とは、偽りと知ってつく嘘である。
白い嘘とは、それ自身偽りではないが、真実の重大な部分を省いて言うことである。白い嘘だからといって嘘でないわけではないし、許されるものでもない。黒い嘘に劣らず有害なことがある。」(スコット・ペック著『愛と心理療法』より)

 

キャリア研究者の神戸大学・金井壽宏教授は、「入社案内や会社案内には、それなりの品格を持った会社なら黒い嘘はけっして存在しないけれども、そうとう高い志をもった会社でも白い嘘は混じっている。その結果、マイナス面はあまり書かれず、パンフレットは、全体的には会社のいいイメージに覆われている」(『働くビジネスマンのためのキャリアデザイン』より)とし、米国の産業心理学者、ジョン・ワナウスが提唱するRJPという研究分野を紹介している。

 

RJP(Realistic Job Preview)とは「現実的な仕事情報の事前提供」のこと。仕事の現実を、良いことも悪いことも、ありのままに応募者に伝えることで、応募者が描いていたイメージと現実の差から生まれるリアリティーショックが低減されることが認められているという。

 

日本では、野村総研が過去に採用した例があるほか、最近では外資系コンサルティング会社のProudfoot JapanなどがRJP理論に基づく採用方法をウリにするなど、導入の兆しがある。

 

企業側と社員(応募者含む)側では、社員側が情報弱者であることがほとんどであり、一般人に高度な取材力を求めるのは酷だ。キャリアの重要な節目における判断の根拠となる情報が不足していることは、日本の社会的・経済的損失でもある。

 

したがって、社員の側に立ち、会社側が意図的に省く「白い嘘」を取材し、報道していくことは、まさに「権力を監視する」というジャーナリズムの使命といえる。

 

そもそも企業側にRJPを期待するのは難しい(メディアリテラシー教育がなされない現状では学生の採用で不利になる)ため、まさにジャーナリズムが担っていくべき領域と考える。

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