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最低賃金未満、常勤の論文作成に駆り出され、給与や交通費も遅延――これが早稲田大学日本語教育研究センターの実態だ!

情報提供
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非常勤の日本語インストラクター全員に宛てたBCCメール。過払いをしてしまい、別の月に給与から引くことを告げている。
 鎌田薫総長ら理事18人が刑事告発(不起訴⇒告発人が検察審査会へ申立⇒第四検察審査会受理)されるなど、ここ1年あまり争議が続く早稲田大学では、非常勤講師よりもさらに下の身分に位置付けられた日本語非常勤インストラクター(留学生に日本語を教授する)推定20人が、3月末日に5年上限の就業規程によって雇い止めにされた。それに先立つ2月、雇止めは不当だと、早稲田ユニオンなどが東京都労働委員会に、不当労働行為救済の申し立てをする事態に発展している。これを機に、職を失うことを恐れて匿名ですら取材に応じてこなかった当事者が、初めて口を開き、実質労働時間で計算すると最低賃金を下回る悪条件、交通費振込忘れや給与振込ミスが多発する事務の混乱、常勤インストラクターが他の就職先を探すための論文手伝いを非常勤が無償で強いられるなどの現場の実情を語った。(「不当労働行為救済申立書」はPDFダウンロード可)
Digest
  • 10回の給与等振込ミス、交通費振込ゼロという大混乱
  • 実質的時給は667円
  • コロコロと変わる担当授業
  • 直接雇用に転換しかえって条件悪化
  • 常勤の論文作成に非常勤インストラクターが無償で使われる
  • 差別スパイラルの最大の被害者は学生と親
  • 5年雇止めは大学院ビジネスのためか?

→連載単行本化「ブラック大学 早稲田」(同時代社)

10回の給与等振込ミス、交通費振込ゼロという大混乱

国際化を謳う早稲田大学では4331人の留学生や研究生が勉強し、そのうち1590人(2012年秋学期)が学内の「日本語教育研究センター」で日本語を学んでいる。

同センターは日本最大規模の日本語教育機関であり、留学生に教える教員が「日本語インストラクター」である。

かつては、大学子会社の㈱早稲田総研インターナショナル(4月1日から株式会社早稲田大学アカデミックソリューション)がインストラクターを募集し、更新期限なく安定的に雇っていたが、2009年4月から大学本体内の「日本語教育研究センター」に移行した。

そのときに当局は契約期間の通算5年で雇い止めの就業規程を制定したことで様々な問題が噴出し現在に至っている。

問題の本質に迫る前に、重い口を開いた当事者のひとりAさんから聞いた、混乱を象徴するようなエピソードから紹介しよう。

「給与明細は毎月2種類が届けられますが、どの授業をいつ何コマ行なったのか明記されていないので、一人ひとりがしっかり管理していないとわからなくなります。私の場合は任期の5年間で10回以上は間違えられました。

他の大学でも働いたことがありますが、こんなのは初めてです。何コマ分かの給与が払われなかったり、過払いもありました。

過払いのときは、『翌月の振込で調整します』とお知らせをもらうのですが、辞めてしまった人(あるいは辞めさせられた人)に対してはどうするのでしょうか。

翌月の分から引く、というメールすら本人に届けられないことになります。現に私は今年の3月で辞めさせられていますし。

それから、交通費が全く振り込まれていなかったこともあります。一部のインストラクターに対する間違いというのではなく、全インストラクターに対してお金の振込で間違いがあったというのも何度もあるのです」

非常勤インストラクターらによると、日本語教育センターの担当者が振込のデータを給与課に渡すというが、相当混乱しているようである。

「人の入れ替わりが激しく、担当授業も激変するために、給料振込の間違いが多いんですね。

一人が、いろいろなレベルの授業を担当すると間違いが生じやすいのではないですか。たとえば、毎回、初級コースだけとか上級だけとか、ある程度決まっていれば間違いも少なくなると思います。

自分の希望したコマ数がもらえないと、二次募集、三次募集でとにかくコマ数を増やしていろいろな授業を受け持つと、事務の人が大変になってしまうのでしょう。

ともかく、全員の交通費が複数回まったく支払われなかったことがあるのは、事務処理のダブルチェックをまったくしていないということです」

普通、企業・学校・組織で給与関係の振込がこれだけ間違うのは、考えられない。その背景には相当な混乱があると見たほうがいいだろう。

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給与振込額を間違え、3か月後の振込で清算すると伝えた文書。5年間で10回以上の間違えがあった。混乱を象徴している。

実質的時給は667円

金銭の振込関係の混乱と無関係とは言えない、早稲田大学における身分差別の象徴・非常勤の日本語インストラクターの問題を見ていきたい。さらにAさんの話を続ける。

「長年、外国人学生に日本語を教える仕事をしていましたが、応募して受かり、早稲田総研インターナショナルと契約して2008年9月から教えるようになりました。当時は任期もなく、待遇は今よりよかったです」

1授業(2時間とみなされる)4000円から始まり、経験を積んでいくうちに給与が上がるシステムは、Aさんがインストラクターを始めたときと現在も変わらない。

 2年目まで1授業4000円
 3年目     5000円
 4年目     6000円

5年目     7000円

他の非常勤講師に合わせて年間講義回数を30回として計算すれば、一コマ担当すると2年目までは年収ベースで12万円。最終の5年目になると年収ベースで21万円となる。

ちなみに、文部科学省の見解によれば、準備その他を含めると1回(2時間相当)の授業で労働時間は3倍の6時間かかるとみなされる。そうなると、

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非常勤インストラクターの交通費がまったく振り込まれていなかったことも何度かある。

組合のビラ。日本語の非常勤インストラクターは、募集時に更新年限があることを告知しておらず、また就業規程を定めるための労働者の過半数代表の意見も聴取していなかったなど、不備だらけである。

日本語教育研究センターの教員にあてた通知。正規の手続きを経ずに制定した就業規程について知らせている。

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林克明2014/04/30 10:12会員
ドレイもんの国2014/04/29 18:13
林克明2014/04/20 10:19会員
 2014/04/18 22:49
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講演会「大学問題3点セット~奨学金・学費値上げ・非常勤講師迫害」
講師 基調講演・三宅勝久(ジャーナリスト)
   サブ講演・林克明(ジャーナリスト)

●第61回草の実アカデミー 日時 4月19日(土)1時30分開場 2時開始 4時45分終了
場所:豊島区雑司が谷地域文化創造館 第2会議室
   豊島区雑司が谷3-1-7

   交通: 副都心線「雑司が谷駅」A2出口すぐ駅の上
   JR山手線「目白駅下車」徒歩約10分
   資料代:500円

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