永田氏も30代だった
飯島愛に次いで、また30代の永田寿康氏が亡くなった。先が見えてきて、再チャレンジが効かなくなる30代の苦しさ。特に真面目な人ほど、生きる希望が失せるのだと思う。再チャレンジを許さない日本のカルチャーを元国会議員が証明したかのようだ。
永田氏は東大→大蔵省→国会議員で、結婚もしている。客観的に見ると恵まれすぎだ。私の周りにも慶大生のなかには、全てにおいて(頭脳、家庭、容姿、就職…)恵まれすぎていて、オマエ少しは苦労しろよ、と言いたくなる人は珍しくない。私のように挫折だらけで会社と裁判やるほど悩めとは言わないが、「努力なんて報われないし、やってらんねぇなぁ」と思うことは多い。
だが、“生まれつき要因”で若い時分に「恵まれすぎ、順調すぎ」の人は、30代以降に深~い落とし穴に落ちることがあり、しかも耐性がついていないから這い上がるのはさらに大変、というのが、いささか単純化した今回の事件の見方ではないか。偽メール事件のときの永田氏は、それまで順調過ぎたからか、明らかに調子に乗っていて、国会を軽くみていたと思う。
だから、努力が報われずに苦しむことは、そう悪いことでもない。先憂後楽なのだ。そうとでも思わないとやってられない…。
■同様に、生まれつき恵まれている人が多いのが、大企業である。似たような構図(恵まれすぎ、耐性ナシ)はおおいにあるとは思うが、それにも増して「働かせ過ぎ」問題のほうが大きい、というのが私の結論である。
300人近くの正社員総合職を取材してきたが、いつも話題として盛り上がるのが、社員の精神疾患とその最悪のケースとしての過労死、自殺。それも、30代が多いのだ。
トヨタ社員の自殺の件は単行本『トヨタの闇』にもリアルに書いたせいで社内で問題になったらしいが、こうやってジャーナリズムが報道しないと問題がなかったことにされてしまうのだから、問題を顕在化させるために、私は使命感で淡々と報じている。
ジャーナリズムが存在しない既存マスコミは「スポンサー降りるぞ圧力」に負けて、電通過労死事件のように、遺族が裁判を起こさない限り書かないという大本営発表ぶりだから、私がやるしかない。
ソニー若手社員の独身寮での首吊り自殺については、幻冬舎が「本のイメージにかかわる」などと渋り、単行本『これが働きたい会社だ』では削除されてしまった。同期入社の社員から直接聞いた話が嘘の訳ないでしょう、嘘つく動機がないでしょう、と説得したのだが、残念だ。
「隣の室の室長が自殺した」(三井物産)、「自分が所属していたパソコン誌の 編集長が突然、自殺した」(朝日新聞社)というように、まあとにかく聞けばポンポンと、身近な人が、どうみても仕事上の理由で逝ってしまった話をリアルに聞ける。隣の部署まで広げれば確実に1人は現役社員が亡くなっている、という程度に身近だ。
会社は表面化しないよう、全力で握り潰すべく、ウラで緘口令を敷く。よって厚労省はもちろん把握していないから、その深刻さに気づかず他人事だ。だが、事件は役所ではなく現場で確実に起こっている。
→三井物産→朝日新聞
ファイザーのMRによれば、「だいたい10人に1人くらいはいて、毎年1人くらい身近で知ってる人が精神疾患になっている。十数人の営業所でも2~3人経験者がいる」というから、かなりの高確率だ。
取材しても精神疾患の話が出てこないのは、“のんびり公社体質”が残るNTTや独占企業の東電くらいである。
■原因は、正社員の働き過ぎ。しかもほとんど裁量労働制になっているから時間では計れないし、社員が出世のために、自ら「過働き」に応じる。過労を拒否するということは、即ちその会社での出世を諦める、ということ。その場合、外の世界に魅力的な選択肢があればよいのだが、流動化が不十分なために、ないと思う人が多いのだ。
たとえばトヨタで「過働き」に応じなければ、和を乱した、KYだ、という烙印を押され、30代以降の出世は絶望的となる。そして、愛知県でトヨタといえば最良の会社であり、家族でもいようものなら、辞めるなどとは言い出せるはずもない。
以下のリポートは、そのトヨタ自動車に20年以上勤め数年前に辞めた総合職社員を、昨年、私が直接取材して聞いた貴重な話だ。この証言では、亡くなった人数が計7人にものぼる。
|
Twitterコメント
はてなブックマークコメント
facebookコメント
読者コメント
永田さんは順調な人生を歩んできたわけではない。また、調子に乗っていたわけでもない。偽メールをつかまされた頃はアフリカ視察などウンコな仕事をやっていた。三十代は年上世代からウンコな仕事やリスクあることをまかされ、つかえなくなったらポイ捨て。精神力を使いすぎて ボン!
私のいた頃(数年前)は、「自殺は年平均で社員数の0.01%」「精神疾患は全社員の2%弱」だったんですけど、、、
東電だけが特別?
これでも他業界よりはマシなんですかね。
こんな話、広告を載せる媒体では絶対に載せられないでしょうね。つくづくmynewsjapanは貴重なメディアだと思います。
記者からの追加情報