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ポスト戦後のキャリア論-1 なぜ今、キャリア論なのか

情報提供
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日本のGDP推移(暦年、実質)

なぜ今、新しいキャリア理論が必要なのか。一言でいえば「高度経済成長期が終わったのに、雇用政策は成長期のままフリーズしているから」である。グローバル化、IT化など「従」の要因がいくつもあるが、「主」要因は、成長期が終り成熟期に入ったこと、そして政治の不作為に尽きる。(「ポスト戦後のキャリア論」をテーマに連載します)

Digest
  • 「戦後経済」の終焉
  • 人事の停滞
  • “成果主義”で若手から昇格数を減らす
  • グローバル化、IT化で給料は下がり続ける
  • Uターン就職
  • 地銀時代(23才~)
  • 短資会社へ(26才~)
  • コンサルへ(27才~)
  • 事業会社の財務へ(28才~)
  • 最後の転職(31才~)

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「戦後経済」の終焉

私は、いわゆる「ロスジェネ世代」の走りで、社会人になった90年代の後半は、ちょうど時代の転換期だった。バブルが崩壊して5年余り、「就職氷河期」と呼ばれ始めていた時代だ。ほとんどの企業は、バブル期に採用を急拡大した反動で、新卒採用を絞った。だから私の同期も、バブル期に比べ3分の1ほどしかいない。

当時は、まだまだ「年功序列・終身雇用」が当り前とされ、辞める人は問題児で、脱落者扱いという空気が支配的であった。外資へ行く人はかなりの変わり者で、多くの学生は最初から就職先の対象外にしていた。

90年代の後半まで、多くの学生は、少しでも規模の大きな会社に入れば、あとはエスカレーター式に給料が上がり、ポストも権限も与えられ、仕事もそれなりに面白くなって、よくわからないけど最後は部長くらいにはなれるのでは…、と思われていた。「年功序列・終身雇用」という過去の延長で物事を考えるならば、確かにそうなのだろう、と想定されていた。

実際、私の叔父は70年代に日本交通公社(現JTB)に入社して順調に出世、34年目の現在は子会社の役員をやっている。そのような親世代を見て、何となく自分もそうなれるのでは、などと思っていた人も多いはずだ。

ところが、未来は過去の延長線上にはなかった。その大前提であった経済成長が、完全に止まったからだ。JTBは2010年3月期連結で過去最悪となる145億円の赤字。今の若手社員が順調に出世して、最後は子会社の役員に、などということはありえない。

日本経済は戦後、経済規模が30年間で10倍になるという、人類史上でも異常といえる急成長を遂げた(「日本のGDP推移」参照)。今でいう中国のような急拡大だった。

企業が成長し売上が伸びている間は、営業第一部、第二部、第三部・・・と部署が増え、部長ポストも課長ポストも増えていく。年功序列で歳が上の人からポストにあてはめていくから、70年代に入社した人は、大卒なら全員が部長にはなれ、権限も収入も拡大し、最後は子会社の役員くらいは…というルートが見えていた。

人手不足で、誰でも正社員になるのが当り前だったから、正社員は手厚く保護され、経営側による正社員の解雇は厳しく判例(整理解雇4要件)によって禁じられた。それでも、経済全体のパイが増えていたから、成果のない社員、やる気のない社員でも、組織内のどこかに吸収する余裕があり、誰も困らなかった。「明日は今日よりもよくなる」というハッピーな時代だった。

人事の停滞

ところがバブル崩壊に加え国内人口もピークを迎え、事態は一変した。企業の売上がかつてのように伸びないなか、組織も人も拡大しない環境下で、社員はキャリアを積んでいかなければならなくなった。

しかも、拡大しないばかりか、縮小することも普通に起きるようになった。バブル崩壊時点で11行あった都銀は3つに集約され、リストラが行われた。たとえば現在の三菱東京UFJ銀行は旧5行の合併行だが、三菱銀行出身者が人事を握り、主要ポストを占め、他の出身者は粛清されていった。

日本企業が再度、かつての戦後経済のような奇跡的な成長軌道にもどることはありえず、従って、「成熟経済仕様」に、あらゆる制度がモデルチェンジしなければならなかった。

具体的には、

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日本経済新聞社で2010年4月から導入された成果主義の人事制度(労組資料より)

本田技研工業の労組資料より。丸と矢印は筆者追記。

給与所得者(民間企業)の平均年収推移。国税庁「民間給与実態統計調査」より。

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TX2010/07/15 14:00
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