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新聞記者、辞めても大変でした―30代転職手記―

情報提供
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退職金明細と、退職者に会社側が手渡す住民税についてのお知らせ。自己都合退職のため、退職金は半額カットされ117万円余りに。この額だと退職金優遇税制により非課税。ただ、住民税の支払いは、退職年の未払い分(上記お知らせに記載)と退職翌年の支払い分(後に課税通知)を合わせ80万近くになった。
 「転職できるなんて羨ましいなぁ」――。2年前、全国紙の記者を辞めることが決まった筆者(村上、仮名)に何人かの同期がささやかな歓送会を催してくれた。思い出話に花を咲かせる中、「成功したら俺たちの“天下り先”をつくってくれよ」などと笑えぬ冗談も。20~30代の若手記者の多くは本音では新聞業界の雲行きに不安を覚えている。しかし記者は仕事内容があまりに特殊なために他業種への転職は難しいのが実情だ。奇跡的にPR会社に転職を果たした筆者に転職相談をする現役記者も時折いる。実際に、「外の世界」で待ち受けていたものは……。
Digest
  • それなりに充実した記者時代
  • つぶしの利かない新聞記者
  • “土壇場”で内定
  • 異世界へ飛び込む
  • メールの書き方から指導される
  • もし記者を辞めるなら
  • 今の思いや将来について

それなりに充実した記者時代

20世紀末に新卒で新聞社へ。5年半を地方支局2か所で過ごし、サツ回り(警察取材)、地方行政取材、高校野球取材など“お約束”のコースを一通り経験し東京本社へ。本社では、社会部と運動部などで5年余り勤務した。

約10年の記者生活では、世の中を震撼させるスクープを打つことはなく、あろうことか病気で倒れたことも。それでも折々に社内外の出会いに助けられた。

記者を志した動機のひとつは人間観察。特に、権力者や特殊な才能を持った人間の生態に興味があり、在職中は政治家や文化人、アスリート等々、知名度を問わず、一般のサラリーマンが滅多に出会えない人々を数多く取材した。興味ある人物にアプローチし、自分なりの切り口でインタビューや読み物を書いたときの達成感は何ともいえなかった。

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新聞社在籍最終年の源泉徴収票。世間の平均水準を大きく上回る金額で、退職は早まった感もある。しかし、10年前の30代半ばの社員に比べれば、2割弱は減少。広告費の減少に歯止めがかからず媒体力の低下が進めば、10年後はさらに減少するだろう。

世間水準に比べ高給で、それなりの充実感もあった記者人生に見切りをつけたのはなぜか。ここのサイトの編集長のように、既存メディアでは出来ないことを目指すような、高尚なジャーナリズム上の理念を特段抱いていたわけでもない。新聞記者の仕事云々というより、もっと根本的な問題――産業として新聞そのものの将来が危うくなると途中から感じ始めたからだった。

本社に上がった2005年頃には、漠然と感じていた新聞産業への不安が明確になる。当時は小泉政権後期で景気が持ち直していたにもかかわらず部数と広告費は右肩下がり。

さらに、共に佐々木俊尚氏や歌川令三氏らが、産業としての新聞の衰退やメディア変革の波が現実になりつつあるという論陣を張り、あるいは週刊ダイヤモンドが「新聞滅亡」といった企画記事を組むようになるなど、メディア・情報産業の「絶対王者」として君臨してきたはずの新聞の威光に陰りがさすように(今思えば佐々木氏らの主張を冷静に受け止められなかったと反省する部分もあるが……)。

さすがに自分の会社が倒産するとまでは思わなかったが、給料が年々伸び悩み、かつては額面で100万円あった賞与も、年齢を重ねているにもかかわらず近年は60万円台にカット(それでも世間水準では高い方だ)という形で具体化すると、「自分たちが乗っている船は戦艦大和ではないのか」「定年まで会社はあるのかな」などと同僚と冗談まじりに語り合ったことも。

折しも、学生時代の友人たちが起業あるいは、新興企業の役員として活躍するのを見るにつけ、「自分もビジネスの世界で何かを成し遂げたい」と“大和からの脱出”を模索するようになった。

つぶしの利かない新聞記者

実際に転職活動を始めたところ

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転職後の環境激変についていけず、心身共に疲弊。入退院の後も「出社拒否」に陥り、心療内科で「適応障害」との診断を下された。

入社4か月後に倒れ、みのもんたが腰痛の手術をしたことでも知られる病院で、よもやの入院。たった一週間とはいえ、孤独感と将来不安に苛まれる悲惨な状況だった。

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  2015/06/27 00:16
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