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疑惑の「アベノマスク」 興和・伊藤忠は自民に献金総額4.5億円、マツオカはマスク生産実績なしの初挑戦、ユースビオ社は正体不明…

情報提供
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福島みずほ社民党参議院議員の4月19日付ツイート。受注企業名を明らかにするよう10日に質問を行ったが「作業の進捗等に影響がないよう留意」する必要があるとして即答できない旨の返事であったことを伝えている。
 汚れに毛髪――先進国の政府がやることとは思えない不衛生な欠陥ガーゼマスクを、巨額の税金466億円を使って全国に郵送するという愚策「アベノマスク」をめぐり、あきれた事実が次々に発覚している。厚労省と政府は、随意契約先の企業名を出し渋った末に5社の社名をついに開示。それらを調べると、興和と伊藤忠商事が過去24年間で4億5000万円(興和約3000万円、伊藤忠約4億2000万円)もの献金を自民党にしていたことが判明した。まさに見返りとしての受注だ。マツオカコーポレーションは実績なしの、初のマスク生産だったことがわかった。同社によれば、政府から不良品の報告はなく回収してないとのことだが、未経験の会社がなぜ受注できたのか奇妙である。そして、ユースビオ。電話番号は未公表で看板もない。公明党国会議員のポスターが貼られたプレハブ事務所には、脱税容疑で告訴された会社が同居するという胡散臭さだ。
Digest
  • アベノマスク受注企業名を出し渋る
  • 興和・伊藤忠の自民献金状況
  • 経産省のマスク補助金を得ていた興和
  • 「不良品報告ない」というマツオカはマスク初体験
  • 疑惑の「4社目」は謎のユースビオ
  • 樋山ユースポットはユースビオ・・・?
  • 看板の代わりに公明党と若松かねしげ参院議員のポスター
  • 同住所・同代表の会社が続々

アベノマスク受注企業名を出し渋る

466億円の税金をつかって日本中にガーゼマスクを配ってマスク不足を解消しよう――安倍晋三首相肝いりの政策として強行された「アベノマスク」事業は、汚れや毛髪混入などの不良品が大量に発覚するという大醜態をさらしている。

不良品は厚生労働省が認めただけで7800枚にのぼる。テレビ大分の報道によれば、大分市保健所の調査で2100枚のうち3割にあたる約640枚に、「黒い染みがあったり髪の毛のようなものがついているといった不良品」が見つかったという。市場の商品であれば商品を全面回収し、経営者は消費者や株主に対して謝罪しなければならない一大不祥事である。

しかし、税金で買い上げたアベノマスクについては様子がちがう。不良品を売りつけた企業を、カネを出した政府が擁護するという、倒錯した光景が繰り広げられている。

福島みずほ参議院議員がアベノマスクを受注した企業名の開示を所管庁である厚労省に求めたのが4月10日。福島議員のツイッターによれば、4月13日に同省はこう回答したという。

〈布マスクを調達した複数の社において、現在、輸送業者などと協力して、出荷・発送の作業を進めているところであることから、社名の公表については、作業の進捗等に影響がないように留意しながら、公共調達のルールにしたがって、今後適切に行って参ります〉

企業名を明らかにできないという。億単位の契約をするときは、入札をするのが大原則だが、アベノマスクは随意契約で行った。時間がないという釈明はあり得る。それであれば情報公開をして透明性を図らなければならないのは当然だ。

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福島みずほ参議院議員(社民)に対する厚労省の回答(4月21日)。マスク受注企業のうち3社(興和・伊藤忠商事・マツオカコーポレーション)を公表したが、他の企業については依然公開せず、企業数すら明答しないという不自然な内容だった(福島議員のツイートより)。

興和・伊藤忠の自民献金状況

なぜ開示できないのかという福島議員の追及や批判の高まりに、とうとう一部の企業名を回答したのが4月21日。興和54億8000万円、伊藤忠商事が28億5000万円、マツオカコーポレーション7億6000万円。計90億9000万円。

福島議員は「…4企業と言っていたのに3企業という疑問はある…」と21日のツイートで述べた。また、総額466億円というのに90億円の使途しかわからないというのも、奇妙だった。

企業名を公表されてはじめて、興和と伊藤忠は未配布分のマスクを回収することを発表。マツオカは、後述するが、政府から不良品の指摘がないとして回収に踏み切っていない。なぜ不良品がないと断言できるのか、理由はわからない。

一部であれ企業名がわかったので、筆者はとりあえずこれら3社の自民党に対する政治献金の状況を調べることにした。案の定、2社が自民党に政治献金をしていた。第二次安倍政権発足以降の6年間でみると、伊藤忠が毎年1800万〜2500万円、興和が80万〜100万円。計1億4000万円もの額だった。以下、明細である

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ガーゼマスクをつけて新型コロナウイルス感染症対策本部で発言する安倍首相(4月24日、首相官邸HPより)。

マスク未経験で大量のマスク生産を随意契約で受注したアパレルメーカーのマツオカコーポレーション(福山市)。現段階で政府から不良品の報告はなく、回収の予定はないという。なぜマスク未経験の会社が契約できたのかについては不明だ。

疑惑の「4社目」であるユースビオ社(福島市)。本社はプレハブ長屋の一室で、看板はなく電話番号も公表されていない。2019年7月に撮影されたグーグルの映像をみると若松かねしげ公明党参議院議員のポスターが確認できる。

ユースビオ社と同じ所在地にあり、代表者も同じと思われる樋山ユースポット社の登記簿謄本(2020年4月28日取得)。新聞報道によれば、2018年に脱税容疑で刑事告訴されている。

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 2020/04/28 23:06
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記者からの追加情報

【追記2】(2020年5月5日)
 4月29日の取材で、シマトレーディング社取締役は「国との契約はない。ユースビオからの依頼で輸入業務をした」と説明していた。ところがその後5月2日、政府から福島みずほ参議院議員にシマ社とユースビオの契約書2通が開示された。シマ社の契約書には「ベトナム産抗菌布マスク」350万枚(単価80円)、ユースビオ社のものには「ベトナム産抗菌布マスク原料」(単価55円)との記載がある。なぜ、「国との契約はない」との説明をしたのか、筆者は5月4日午前、シマ社取締役に電話取材した。以下はそのときのやり取りである。
ーー先日(29日)きいたところでは、国との契約はない。支払いはユースビオからうけたという理解だったが。
シマ ぼくもいろいろ電話きてて詳しくどう話したかがあれだが、・・・ごめんなさい。ご質問は?
ーー29日の話では、国との契約はなく、ユースビオの依頼で荷受人を引き受けたんだと。
シマ えっと、ぼくもそのときに質問の捉え方を間違えたのかわからないけど、契約自体は国とシマトレーディングはしてまして…。
ーーはい。
シマ ユースビオはユースビオで、国、というか厚労省か、と(契約)していて。
ーーじゃ、シマさんはシマさんで国と契約していたと。
シマ そうですね、でたぶんぼく、話なんとなくなんとなく覚えているが、国との直接のやりとりをやっているかという質問と勘違いしたのか…疲れていたので。そういう意味でたぶん答えたかなと思うけど。
ーー私は、「国と契約はないんですね」ということでお聞きをしたつもりだったが、じつは国とシマは…。
シマ 契約自体はしています。ただそのやり取りのなかでこまかい生地とか厚労省とのやり取りをしていたのはユースビオ。

 やや歯切れの悪い言い方で、29日の説明内容を翻して国と契約があったと述べた。また、過去に億単位の契約をしたことがあるか、また国との契約をしたことがあるか、尋ねたところ、いずれもないとの回答だった。国と契約する経緯は、経営者が親戚関係にあるユースビオ社(樋山茂社長)を通じて行った、などと答えた。
 同日、ユースビオの樋山茂社長にも電話で取材を申し入れた。なぜ国との億単位の契約が取れたのかを聞きたかったが、樋山社長は「アエラ(週刊朝日と思われる)とバズフィードの記事を見てもらえればいい。大手の取材にしか応じない」などと拒否した。郵便で拙著と質問内容を書いたものを会社宛に送りたい旨伝えたところ、「送ってもらっても届くかどうかわからない。郵便物を抜き取る者もいる」などと答えた。なお、樋山社長が指摘する記事とは、樋山氏のインタビューが掲載されたものだ。契約の経緯について、「山形県から経産省の担当者を紹介されて、『そちらに情報共有してるので連絡してください』ってつないでくれたんですよ」と述べている。一方山形県は、バズフィード記者の取材に、素性がわからなかったので経産省に照会した。紹介したのではないといった趣旨のことを説明している。また、記事の中で山鹿県職員は、経産省はすでにユースビオを知っていたと思うとも話している。


【追記】(2020年4月29日)
 4月28日の衆議院予算委員会で、加藤勝信厚労大臣は大串博志議員(立憲)の質問に対して、ユースビオ社(福島市、樋山茂社長)と国との契約金額は5・2億円(輸入布マスク350万枚)、契約日は3月16日で、緊急随意契約だったと答弁した。また、契約当時ユースビオ社の会社設立目的に輸入業務がなく、4月1日に変更の手続きをとったこと、輸入業務はシマトレーディング社(千葉市、島正行社長)が行ったことも 明らかにした。登記簿謄本が取得できないのは変更手続きが原因であった。
 シマトレーディング社の取締役は29日、筆者の電話取材に応じ、概ね次のように説明した。
▽樋山社長は私(取締役)の親戚にあたる。
▽2月末?3月はじめごろ、マスク輸入の荷受人をユースビオから依頼され、引き受けた。
▽国との契約関係はない。
▽3月末にベトナムから数回にわけて荷が航空便で到着し、輸入手続きを行った。
▽輸入手続きはすべて書類上で行った。現場に行っておらず荷も見ていない。
▽支払いはユースビオから受けた。金額は言えない。
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