「それが、ミシュランです」――仏料理オーナーシェフに聞く、星が付く流れと経営へのインパクト
上:星つきのシェフに送付される、出版パーティーへの招待状 下:ミシュランから贈呈された粗品 |
- Digest
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- 覆面調査の実態
- 調査員が星の評価をするプロセス
- レシートなどの証拠は示さない
- 「落とされたら…」星を失う恐怖
- 「なぜ載らない?」三國、田代、北島…ミシュランの謎
- フレンチで1.8%しか星がつかず、年2割が剥奪される
- 売上への影響
覆面調査の実態
「特にフランス料理人にとって、フランス発祥のミシュランガイドは、特別なんです。若い時から、ミシュラン片手に、働いたり、食べたりしてきたものですから。猿は木から落ちても猿だけど、ミシュランの星を落とした料理人は、ただの人。掲載されたときは、プレッシャーが多くて、落とされたら、もう誰にも認められないんじゃないか、という不安にさいなまれることもありました。
オーナーシェフ。ミシュランの星がつくのは都内仏料理店全体の1.8%だけ。 |
それだけに、ミシュランには、公平でいて欲しいなぁと思っています。東京版も14年目になって、10年くらい前から出版記念パーティーに呼ばれる人も増え、新しくお店を始める人たちも、『頑張れば載ることができる』という空気が出てきたと感じています。若い人たちに、私の体験が参考になれば、と思っています」(オーナーシェフ、以下同)
ミシュランは、客を装って覆面調査員を送り込み、料理を第三者の独自視点で評価する手法で知られる。店側との癒着や便宜供与、金銭のやりとり等は、一切ないとされ、高い信用を獲得している。どのくらいガチなのか。
「うちに来た調査員は、中年の日本人男性でした。確かに事前の通告はありませんでしたが、まるで『私はミシュランの人間だ』と言わんばかりに見えました。1人で来て、ちゃんとした身なりで、キョロキョロしていて、明らかに素人のお客さんには見えなかったので。『おそらくそうだろうな』と思ったのを覚えています」
その日は、身分を明かすことはなかった。はっきりしたのは、1週間後くらいに突然、店に再訪してきて、ミシュランの調査員だというIDカード(免許証のようなもの)を一瞬だけ見せて身元を明かし、説明を受けたときだった。
本人の名刺はなく、ミシュランガイド編集部の連絡先と担当者名が書いてあるカードだけを「何かあったときのために」と、差し出したという。
「実はミシュランの件で候補に挙がっています、載るかもしれない、でもまだ調査中で載ると決まったわけではない、星の数もわからない、店内の写真を撮ってもよいですか、値段や営業時間などの正確なデータを教えてください…という簡単なインタビューでした。ああ、あの時のかたですね、よく覚えています、やっぱりそうでしたか、と思いながら対応しました。苗字だけ名乗りましたが、偽名だと思います」
『ミシュランガイド東京2021』。全体で、星付きが計211店、ビブグルマンを加えても計445店だけが掲載されている。 |
特別な準備ができないよう、予約時点での事前通告はなく、ちゃんと料金も払って帰っていくのは、事実だった。予約の際の名前も、他の店からマークされないよう、毎回、異なる偽名を使い分けているはずだ。
しかし、本を見る限り、店側が提供したのでは?というような、「お客さんがいない時のきれいな店内風景写真」など、JTBガイドブックのような広告まがいの写真も多い。ミシュランに載る写真は、すべて店側同意のもとに撮った、半公式写真なのか。
「いつ撮ったかわからない料理の写真も勝手に掲載されていましたから、ミシュラン側が独自に撮った写真も使っていると思います。基本は、店側の許可のもとで撮った写真が使われています」
料理は抜き打ち調査だが、写真は事前同意のうえで撮影するケースが多いことになる。店主の経歴や料理の値段、営業時間などは、オーナーシェフへのデータ確認インタビューに基づいている。
この突然の訪問のあと、お店に、招待状が封書で送られてくる(1枚目写真参照)。
「パーティーに呼ばれるんです
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東京は、ミシュランの星の数で世界最大を誇る、ナンバーワン美食都市だとミシュラン自身が認定している。
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