My News Japan My News Japan ニュースの現場にいる誰もが発信者のメディアです

ニュースの現場にいる誰もが発信者のメディアです

デジタル化で流通・小売業の職場はどう変わるのか――EC化率50%時代の「職人プレミアム」な仕事

情報提供
ReportsIMG_J20210617131156.jpg
UAゼンセン」流通部門男女共同参画委員会向け講演

表題の講演を先週、都内TKPの会場にて行った。対象は「UAゼンセン」(全国168万人の組合員を擁する日本最大の産業別労組)のなかの、流通部門(105万人)リーダーで、主に単組の専従者たちである。ILOが2019年に発表した7つの政策課題のうちの1つ「仕事の未来」について、著書『10年後に食える仕事 食えない仕事』に沿って、流通・小売業の職場がデジタル化によってどう変わり、人間が価値を出せる仕事はどこなのか、なかでも「女性」「雇用」という点から労組として何を要求していくべきか、説明してほしい、というものだった。参加は、会場約50人、ZOOM参加が100人ほどで、伊勢丹やマルイからイオンやオートバックスまで業界の垣根を越え、講演後には活発なワークショップが行われた。講演の内容を収録する。

Digest
  • アジェンダ&自己紹介
  • ①デジタル化(DX=Digital Transformation)
  • ②労働力人口の減少
  • ③グローバル化
  • 「AI化で消える仕事、残る仕事」マップ
  • 流通・小売業の業務をマッピング
  • レジには価値がないが、デリにはある
  • 残る業務の3形態
  • 流通小売業の個別業務は何がどのくらい増減するのか
  • アナログ販売VSデジタル販売の、強み・弱み
  • 人間が価値を出せる「職人プレミアム」の仕事とは

アジェンダ&自己紹介

本日は「デジタル化で、皆さんの職場がどう変わっていくのか」というテーマで、お話させていただきます。

私の実家はマグロの仲卸で、皆さんの業界とも関係が深いです。販売先のスーパーや寿司屋から注文の電話が自宅にかかってくる、という子ども時代でした。年末は築地に手伝いに行きました。流通の「中抜き」で、仲卸は構造不況業種。回転寿司チェーンは仲卸を通さず船ごと買っていきます。さらに昨今はコロナで仮死状態に。納入先である飲食店が閉まっているのでどうにもなりません。

その中核となる、セリに出てよいものを安く競り落とす「目利き」の仕事も、AIの画像解析技術によって、代替されようとしています(冷凍天然マグロの品質を判定するシステム「TUNA SCOPE」)。人間に残る仕事範囲は、技術の進歩でどんどん狭まり、変わっていきます。

私は新聞記者になって、その後、コンサル会社(IBM)で、流通卸のコンサルを中心に13社くらいのプロジェクトをやりました。卸会社の営業車に乗って、1日営業マンについて回って業務分析する、みたいな仕事です。流通・卸・食品・製薬の営業&間接部門に対する、Activity Based Costing(活動基準原価計算)に基づく業務分析と改革の提案、実行支援です。

今は、記者として独立し、ニュースサイトを経営しつつ、労働者視点の本を10冊ほど書いてきました。

本日のアジェンダとしましては、

■流通・小売業で働く人たちの環境変化

■デジタル化で消える業務、人間に残る業務

■労組として具体的にやるべきこと

という流れで、1時間ほど説明させていただきます。

■流通・小売業で働く人たちの環境変化

大きな変化は、以下の3つです。

①デジタル化(DX=Digital Transformation)

いま政権の重要課題として行政でもDXがあがっていますが、みなさんの業界でも、現場で日々、感じていると思います。一言でいうと、「アマゾンエフェクト」と言われる現象で、日本はDX途上国なので、これから本格的に変わっていきます。

流通・小売業で働く人たちの環境変化

EC化率は現在、中国が断トツで高くて、既に4割を超えた、とされています。日本はまだ1割に満たない程度(物販で2019年に6.7%)ですが、去年・今年はコロナの影響でおそらくもっと加速していると思われます。内訳では、事務用品・文房具は2019年で41%(2019年)とEC化率が高く、『アスクル』などで買うのが普通になっています。次が書籍、映像・音楽ソフトの34%(前年度比7%増)、生活家電、AV機器、PCで周辺機器等の32%(前年度比10%増)。これらは実感通りだと思います。

私自身、ネット新聞というECをやっている当事者として、紙の新聞がどんどん衰退しているのを17年間、観てきました。すでに私は、衣服の約9割、ホーム(PC,机椅子布団ホース洗剤…)9割、家電8割、書籍5割、飲食料3割くらいを、ECで購入しています。

電子商取引に関する市場調査(経産省令和2年7月)より

EC化は年々、右肩上がりで上がっていて、世界全体のEC化率はまだ18%程度ですが、どこまで伸びるのかは、誰にもわかりません。中国が今年(2021年)、50%を超えるという予測が出ており、過去3年間で30%→50%に伸びたことになります。日本はノロいので5年10年とかかるでしょうが、若い世代を中心に「EC化5割時代」は普通に到来する可能性が高いと考えるべきでしょう。

なんでも「お似合いですよ」と言われて余計な買い物させられちゃう人間の店員より、AIのリコメンデーションのほうが、満足度が高かったりします。物流のロボット化も進んでいて、配送センターでは人間ピッカーの前までロボットが運んでくれるので、人間は倉庫内を歩くことなく、箱詰めするだけです。宅配も翌日出荷で、その翌日には迅速に届きます。日本の宅配は世界最高水準のサービスレベルで、時間指定も守りますから、ECの進展において配送がネックになることもありません。

国境を越える「越境EC」も徐々に進み、海外のメーカーから直接、自宅に届くようになりました。アパレルなら、たとえば『アメリカンイーグル』や『アバクロ』などは、メーカー公式ECサイトで注文すると、香港の倉庫から1週間弱で日本の住所に届きます。日本のリアルな流通・小売業は、まるごと中抜きされ、存在意義が問われているわけです。驚異だと思いませんか。そんな時代に、どこで価値を出していくのか、というのが本日のテーマです

この先は会員限定です。

会員の方は下記よりログインいただくとお読みいただけます。
ログインすると画像が拡大可能です。

  • ・本文文字数:残り8,696字/全文10,759字

「AI化で消える仕事、残る仕事」マップと主な職業

「ロボティクス失業」エリアの、なくなる仕事

デジタル化でどの業務がどのくらい減ったり増えたりするのか

アナログ販売VSデジタル販売強み弱み

人間が価値を出せる「職人プレミアム」の仕事とは

公式SNSはこちら

はてなブックマークコメント

もっと見る
閉じる

facebookコメント

読者コメント

※. コメントは会員ユーザのみ受け付けております。
もっと見る
閉じる
※注意事項

記者からの追加情報

本文:全約11100字のうち約9000字が
会員登録をご希望の方はここでご登録下さい

新着のお知らせをメールで受けたい方はここでご登録下さい(無料)

企画「他のメディアへの配信/MyNewsJapanからのお知らせ」トップページへ
企画「ココで働け! “企業ミシュラン”」トップページへ
本企画趣旨に賛同いただき、取材協力いただけるかたは、info@mynewsjapan.comまでご連絡下さい(永久会員ID進呈)