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2023年「キャリア」大予測 大企業パンドラの箱は男女賃金格差

動画「いい会社の選び方」解説記事⑥

情報提供
2023展望テキスト記事
第6回2022年振り返り&2023年の予測

2023年大展望シリーズの「キャリア」大予測について動画で話した内容を、より詳しく、元資料をベースに解説する。ワンキャリアの北野唯我・取締役、PIVOTの佐々木紀彦社長と対談する形になっているが、本稿は、私が事前に用意した内容で、『いい会社はどこにある?』の中身のうち、2022年と2023年に特徴的な動きがあった、または予想されるテーマについて、仕事・生活・対価の面からリポートしている。従来型のバラマキ公共事業ではなく「出口のあるリスキル」にしなければいけないし、性別格差をはじめとする労働環境の情報開示は罰則付きで義務化しなければ一向に改革は進まない。情報こそが求職者にとっての武器となり、採用マーケットを正常化する第一歩となる。

Digest
  • 1.雇用政策
  • 2.副業
  • 3.リモートワーク
  • ①《対価》転職者増→賃金増のサイクルを開始できるか
  • ②《仕事》プラチナ昭和企業/古い戦後日本企業は中途を増やすか
  • ③《生活》男女賃金格差は埋まり始めるのか
  • 個人に「情報」という武器を与えよ
前編

後編
■2022年の振り返り

1.雇用政策

1枚目:2022年振り返り
2022年の振り返り

コロナ禍からの脱出が世界的に進んだ2022年は、《雇用だけ守って成長はしない低賃金国》の姿が、よりはっきりした。失業率は2.5%前後の完全雇用を維持し、結局、コロナ禍の3年間を通して、3%を超えなかった。これは、雇用調整助成金を特例として3年間で6兆円以上も支出し、社内失業者を企業に抱え込ませたことに加え、ゼロゼロ融資(保証人ゼロ、金利ゼロ)で資金繰りをつけ、ゾンビ企業15万社超を延命した成果だった。

2019年度の雇調金支出は50億円未満だったため、いきなりの支出増で財政難となった結果、2022年10月からサラリーマンが天引きされる雇用保険料も値上げされたが、あまり問題視されていない。ゼロゼロ融資のほうも、今後、回収不能で貸し倒れになると国民負担となるが、政治問題にはなりそうにない。

これは、「失業を防ぐためなら負担が増えてもよい」とする「雇用第一主義」政策に対する、うっすらとした国民的な合意があるためだ。史上最長を記録した第二次安倍政権は、グラフのとおり、失業率を一貫して下げ続けたこと(もちろん株高も寄与した)で実現し、若干上昇したタイミングで終わっている。日本人は「組織への忠誠心」を最重要と考える傾向にあり、組織と個人をつなぐ仕事(雇用)が皆にあること、が政治的に重要だ。それは、国民負担が増えても許される。改めてその優先順位が明確になったのが、2022年までのコロナ禍の3年間であった。この状況は、失業率が2桁に跳ね上がった米国とは全く異なる。

後述のとおり、人材が1企業内に塩漬けになっている国は経済成長しない。新産業が育ち、その企業が高い給料を払えるようになり、そこに旧産業から続々と人材が転職し、旧産業は流出を引き留めるために、莫大に溜め込んだ内部留保(計500兆円超)を取り崩して給与水準を上げる――これが正しい資本主義自由経済下での給料の上がり方である。

日本にこの市場原理による給与水準アップの流れはなく、首相が経団連と連合に上げてくれとお願いしているという、絶望的な状況が続いている。社員の給料は、経営者の恩情によって上がるものではないが、その程度のことを理解していないのがこの国の為政者たちである。

2.副業

ネタ不足の新聞テレビが、副業ネタを無理やり拾って報道していたが、ガス抜き程度でごまかされ、実際には何も変わっていない。本丸を触っていないから、である。

本丸とは、「定時以外の勤務は働き手の自由である」「副業を禁止してはならない」と明示する立法措置を指す。これらを一切行うことなく、現実には、「長時間労働による過労を防ぐため」などという表向きの理由をつけて、副業を会社側が管理する社会主義的な方向に進んだのが2022年の日本だった。

企業は、副業を自由化するどころか、逆に「届け出」をさせ、内容や時間を束縛して管理する、という真逆の方向に動いた。これは、麻薬や売春と同じ扱いであり、地下に潜らせたくない経営側の意向に沿ったもので、社員にとってのメリットは何もない。SMBC日興、三菱地所、ライオン…と、大企業はほとんどこれだ。

ライオンに至っては、入社3年目までの副業を禁止したうえで(人権侵害である)、4年目以降は会社が副業を紹介までして管理するという、とんでもない管理経済になっている。会社にとってデメリットになるような、競合他社への転職につながりかねない仕事や、本業に影響がでるような長時間の副業は絶対にさせないぞ、という強い意志を感じる。社員としては、会社の言うことは無視し、自らアフターファイブと休日を利用して副業をすればよいだけである。(→『いい会社』283頁参照)

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