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CHAT-GPT、対話型AIの意味は「グーグルのライバル」として調べモノの利便性が向上すること

“ユニクロ過労死事件”のソースを示してきた!

情報提供
1枚目チャットGPT
チャットGPTの答えは意外に正しいものがあった。

「ファーストリテイリングはどうしてブラック企業と呼ばれるのですか?」

それに対して、GPTは、過労死が報じられたことがあります、という。そこで、

「過労死とは、具体的にいつどこで発生したのでしょうか?」と尋ねると、

2007年に発生した山口県のユニクロ店舗の店員の方の過労死です、という。「日本全国に衝撃を与え」とも書いてある。

Digest
  • ソースが示される対話型のAI
  • 出鱈目ではなかった対話型AI
  • AIと仕事の関係

ソースが示される対話型のAI

ファストリ過労死検索結果
ファーストリテイリング&過労死

私はけっこうユニクロを取材してきたが(→ユニクロ過重労働の闇)、ユニクロの過労死事件がマスコミで報道されたことなど一度も記憶にない。

念のために新聞記事横断検索で調べたら、やはり報道された形跡はなかった。

「ファーストリテイリング」でも「ユニクロ」でも、検索した。

やはりキーワード「過労死」に引っかかるような記事はなかった。

CHAT-GPTの欠点は、とにかくソースの表示がないことだ。根拠も示さず、いかにも事実であるかのように、説明しだす。だから、ここが改善されない限り、ビジネスレベルでは使い物にならない。

逆にいえば、ソースが示される仕様になりさえすれば、問題ないことになる。

ユニクロ過労死検索結果
ユニクロ&過労死

この問題を解決する対話型AI検索エンジンとして、Perplexity.AI(パープレキシティ)という、ソースが示される対話型のAIがあることを、ツイッターのフォロワーに教えてもらった。

「なんと渡邊様主催のニュースサイトがソースだと出鱈目を自信満々で教えられました」

そのサイトでは、やはり2007年にユニクロ過労死が起きており、なんと、うちのサイトがソースとして示されている、というのだ。

さっそく確認すると、確かにsourceは、「mynewsjapan」とある(下記参照)。シングルソースである。

出鱈目ではなかった対話型AI

ぱーぷれくシティ
sourceに「mynewsjapan」とある

そんな記事あったっけ――と思いつつ、MNJのサイト内検索をかけると、確かに見つかった。出鱈目ではなかったわけである。

この、反転させた部分(左記参照)が2007年の過労死だ。取材した当時の記憶が、よみがえってきた。

ベテラン社員が語る、ブラック企業・ユニクロが現場にサービス残業&うつ病を強いる実態

この記事のインタビュイーは、現役バリバリの店長で、ユニクロが社宅契約するレオパに上がり込んで取材させてもらった。

該当部分

2012年当時は、2020年に売上5兆円を目指してブラック労働やらせまくりの時期である(実際には2020年度、2兆円は超えたが、5兆円にはぜんぜん届かなかった)。新店のオープンがとにかく長時間労働になって大変なのだ、と強調していた。

インタビュイーは社歴10年超のベテラン社員で、すでに大型店を含む5店舗以上で店長を務めていた。フリースがバカ売れした頃も現場で知っている社員だ。

当時は、売り場に泊まるような、むちゃくちゃな働き方をしていたという。じっくり2時間以上話を聞く中で、過労死の話が、2回、でてきた。

「新店オープンで激務だった店長が、朝がた、布団の中で亡くなっているのが発見されて、店長の親族が『過労死ではないか』と会社に詰め寄ったことがあったらしく、その件について、ブロックミーティングでブロックリーダーが涙したことがあったんです。それで2007年4月から労務管理が厳しくなり、240時間を越えないように、ということになりました。それからは、『今日あと2時間しか働けない!』などと時間を意識するようになり、1日11時間弱に収めるように言われてきたのは確かです」

「今年に入って、海外赴任していた本部の日本人が、確かマレーシアあたりでしたが、亡くなっています。あれは長時間労働による過労死ではないか、と社内で噂になりました。昨年も20代の店長が病死していて、過労が原因とみられる不幸な話は多いです。いずれも、内々に処理され社外には知られていません。知っている範囲で、この半年で店長が3人、鬱で辞めました。鬱になる人が、とにかく多い」

このインタビュイーは、明らかに本当のことを話しているな、とは思った。なにか社内資料など物証でもあればこの話で見出しを立てて記事にしたい内容だし、ほかのインタビュイーからも同じ話を聴けて複数から裏がとれれば、労災認定された事案でなくても、「ユニクロ過労死の疑い」で記事にしたかったが、そこまでの取材はできなかった。

当時で、すでに5年前の出来事だったため、少々古い話になっている、というのもある。そこで記事では、ファクトとして見出しを立てるのではなく、この現役店長が語った「ありのまま」を、記事本文の会員限定部分で記すにとどめ、全体としては、「今」にフォーカスを当てた内容(サビ残とうつ病の実態)にしたのである。

また、2つめのマレーシアの過労死疑いの件も同様で、他から裏がとれず、シングルソースでは見出しを立てられないものだ。

間違いなく事実だな――と思っても、人の生死にかかわる話は、間違っていると名誉にかかわるため、慎重に報じなければならない。会員限定部分には、そういう、「まあ事実で間違いないし、惜しいけど、トップには持ってこれない情報」がたくさん集積しているのが企業ミシュランの特徴でもある。

その限定部分が、なぜかGPTとperplexityには、ウォールを突破され、収集されていたのが驚きだ。なんどググっても、グーグル検索からは出てこない情報だから、である。一度も、無料開放したことがない部分なのだから、当然だ。

「perplexityはホラ吹きではなく、何か悪い奥の手を使って情報を集めてくるドラマに出てくるアシスタントみたいですね」

この、ツイッターで教えてくれた人の感想は、いい得て妙である。対話型AIの、グーグルを凌ぐ情報収集力には、脱帽であった。ちゃんとソースを示したうえで対話形式で答えてくれるのは、情報収集において、実に助かるツールになる。現状の、嘘を散りばめられた答えを教えられても、無価値どころか、混乱を生むだけで、逆効果だからだ。ソースがなければ、正誤の判断はできない。

これまで世界の検索広告市場を一社独占的に牛耳ってきたグーグルが、マイクロソフトが約半分の株を持つOpenAI(ChatGPT開発会社)など対話型AIの登場によって、健全な競争が起こる予感がする。その際には、perplexityのようにソースを明示する機能が決定的に重要となる。

なにか調べものをする際に、対話形式で質問できるというのは明らかな強みであるし、グーグルで調べがつかない情報まで出てくるとなると、皆がそちらを使うようになるのは、当然だからだ。私も、取材準備で使うようになるだろう。

AIと仕事の関係

以上から、対話型AIの登場で、ネット上の調べモノが便利になりそうだ、ということはわかっただろう。

①役に立つ調査ツール(ソースの提示が前提)、である。それ以外では、

②「文書のドラフト作成」
③「アイデアを考えるツール」
④「ブレーンストーミング時の壁打ち相手」

といったところだ。

ようは、新入社員がやるような会議の議事録作成、要約文の生成、アイデア出し、オマエどう思う?に少し気の利いたことを答える、といったレベルである。ビジネスとして単体では成立しないし、プロの域には永遠に達しないが、ツールとして使うと、少し出来のよいインターンの学生くらいの仕事ぶりを発揮する。しかも、瞬時に、0.1秒でやる。だが、あくまでアマチュアである。プロとアマの差は大きいので、人間の仕事を奪うことはない。効率化ツールである。

AIの研究者たちは、世の中にどういう仕事があって、現場でどのような業務の束によって労働が行われているのか無知な人たちばかりなので、「仕事への影響」という点は、実に的外れである。日本の労働市場において、私が、その道筋を明確に示したものが2020年に発売した以下書籍である。

10年後に食える仕事食えない仕事 AIロボット化で変わる職のカタチ

対話型AIをはじめとする生成AIは、「デジタルケンタウロス」(デジタルツールを利用して人間ならではの創造・信用・感情を駆使するホワイトカラー)領域のビジネスパーソンが使いこなすべきツールの1つとして、重要になるだろう。10年後には、エクセルやパワポと同じレベルのUIで使える便利なツールになっているはずである。

そのテーマで最近、アップされた動画があるので、ご覧いただきたい。

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hatetesan2023/07/30 09:54

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