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3.女性が子育てと両立しつつ出世も目指せる ♯【勤務地を選べ家庭生活と両立できる】

❐勤務環境―生活軸『いい会社はどこにある?』

情報提供
ジェンダー視点による仕事選びマップ
ジェンダー視点による「仕事・会社選び」マップ

1(リモートワーク)と2(転勤)に関連して、女性が子育てと仕事を両立でき、正社員として普通に権限と地位を上げて、必要な休みを取得しつつも、しっかり長期間にわたり稼ぎ続けられるキャリアを築けるか――は、確実に「いい会社」の条件になりつつある。少子化で生産年齢人口※が年60万人ずつ減り続けるなか、米英のような「移民による解決」は、国民全体が反対世論なので我が国では選択肢にならず、必然的に人手不足が進行。これまで労働市場への参加率が低かった「高齢者(60代以上)」と「女性」の労働力が必要不可欠になった、という人口ピラミッド上の切迫した背景がある。

Digest
  • 女性の賃金が男性の「3分の1」なキーエンス
  • 透明化と開示情報の定義が重要
  • ジェンダー視点による仕事選びマップ
  • P&G、日本ロレアル、LVMH…
  • 女性が多い職場は、なぜか職務給で頭打ち
  • 女性管理職が多い会社は「子ども、老人、抜け毛、コールセンター」
  • 女性が管理職クラスにもそこそこなれる
  • 「雇用形態の転換実績」を見る
  • 社内婚
  • 特にひどい政府系、NHK、NTT
  • リケジョ天国に
  • 恵まれた「男勝り」な人材
  • 情報開示「本当の義務化」でスタート地点に

女性の賃金が男性の「3分の1」なキーエンス

生涯年収は5250万円違う
性別賃金格差(厚労省)

特に女性は、同じ学歴で比べても、全年代にわたって男性よりも賃金水準が低く、50代までその差が拡大していく。生涯賃金は、同じ大卒以上の正社員で比べても、男性2億6920万円に対し、女性2億1670万円と、5250万円も低い(2022年1月25日「内閣府男女共同参画局」作成資料による)。

男女間賃金格差国際比較
国際比較(OECD)

OECDの調査(2020年時点、2022年12月27日「内閣府男女共同参画局」作成資料より)では、日本の賃金中央値は、男性100に対して女性77.5と、G7で格差が最も大きかった。加盟38カ国の中でも、韓国、イスラエルに次いで、下から3番目だ。親が子どもに同じ額の教育費をかけても、性別によって“期待回収額”が5千万円も少ない国は、確かに理不尽だ。

※「生産年齢人口」=働き手の中心年代となる15歳~65歳の人口を指す。国立社会保障・人口問題研究所の見通しでは、総人口は2015年実績からの30年間で16%減るが、高齢化が進み、労働に適した生産年齢人口は27%も減る。直近では、2015年の7,629万人(実績)→20年後の2035年は6,494万人へと、1135万人(年57万人ずつ)も減少する見通し。そこからさらに加速度がつき、2045年は5,584万人と推計されている。30年で割ると年68万人ペースで減少する。この57万人というのは現在の鳥取県の人口とほぼ同じで、68万人というのは東京都江戸川区の人口に匹敵する。およそ60万人ずつ毎年減っていく、と考えればよい。

これは筆者の取材実感でもその通りで、その原因は、①《女性にパートタイマーをはじめ非正規雇用者が多い》ことに加え、②正規雇用者に限ってみても、《賃金が高い業種で総合職の女性比率が低いうえに、より賃金が高い管理職クラスに昇進する女性比率が、さらに低い》からである。

もくじ
第2章生活軸の構成(本稿は単行本『いい会社はどこにある?』の元原稿 《一部アップデート完全版》です

象徴的な例でいうと、センサー大手のキーエンスは平均年間給与2182万円(2022年3月期、有価証券報告書より)と、日本一賃金が高い会社として有名であるが、女性比率は全社員の6.5%に過ぎず、かつ、そのほとんどが賃金の低い一般職(S職)という採用区分で、総合職が就任する管理職クラスの女性比率は、ゼロ%。女性は賃金が高いポストに就かせない、という強い意志を感じる。女性は、いわば男子校の部活の女子マネ、みたいな「裏方さん」「サポート役」の扱いなのである。※

※女性比率は、厚労省「女性の活躍推進企業データベース」にて開示した数字。管理職は『リクナビ2023』採用情報で開示した数字。

キーエンスの総合職は「ビジネス職」「エンジニア職」があり、主力は営業を担う「ビジネス職」のほうで、賃金も一番高い。筆者が2009年に最初に取材した際には、「1000人規模の外勤営業(=ビジネス職のこと)のうち、女性は1人だけ。採用しても、すぐに辞めてしまいます。女性は一般職で事務処理が仕事ですが、毎日18~19時には帰れて年収650万~700万円」(元社員)。その5年後の取材でも「女性の営業職は全国で10人くらい」と言っていた。つまり、事実上の「性別コース別採用」によって、女性の年収は男性の3分の1未満に抑えられているのである。※

※「キーエンス 北朝鮮もビックリ!分単位で管理される営業マンたち」参照。【ウェブ版追記】キーエンスは女性活躍推進法に基づき、はじめて男女間の賃金格差を開示した。正規雇用労働者は、男性100に対し、女性44.0%だった(対象期間2022年 3月 21日 ~ 2023年 3月 20日) 。

その後の複数回の取材で、パワハラで退職に追い込まれた社員も取材したのであるが、1分単位の「外報」(日報)など管理手法が軍隊的で、「営業マンの機械化」を強みとしているため、女性には体力的にも精神的にもハードルが高い、のはよくわかる。その難しいことをやり切っているからこそ、日本トップクラスの利益率を誇り、社員に高年収を支払えるのであって、そこに女性が適さないのは「不都合な真実」ではあるが、直視しなければいけない現実だ。※

「仕事内容として、商品が入った重いカバンを持って営業に行くので、体力的に女性には向かないんです。駐車場から営業先の工場まで離れていて、かなりの距離を1人で運ぶ必要があったりします。炎天下だと、特に重労働です。私は、マイヘルメット、マイ安全靴を持参していました」(元社員)。キーエンスのような業態と特殊なカルチャーを持つ営業会社で女性比率を高めたら業務が回らなくなり業績が悪化しそうだ。だが、そうでない会社もたくさんある。

透明化と開示情報の定義が重要

重要なことは、強制ではなく、透明化である。

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