遺族代理人の海道宏実弁護士。写真外の右側にHさんの父がいる。
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子供のいじめ自殺が社会問題になって久しいが、同様のリスクは社会人になっても続く。高校を卒業したばかりの男性新入社員、Hさん(19)は2010年12月、上司のいじめが原因で首つり自殺した。福井労働基準監督署は今年7月24日、人格を否定するひどいいじめが繰り返されていたとして、Hさんの自殺を労災認定した。Hさんの手帳には、上司から言われた「死ね」「辞めろ」「この世から消えてしまえ」などの言葉が記されていた。Hさんの勤務先は、消防機器の販売や保守点検をおこなう暁産業(福井県福井市、荒木伸男社長)。厳しい規律のなかで半ば洗脳されていたHさんは、最後には、上司の「死ね」という言葉にすら従ってしまった。いったいどのように追い込まれていったのか。父親に話を聞いた。
【Digest】
◇「書類は机の端から50mm」 厳しい規律
◇辞めろ、死ね、この世から消えてしまえ
◇辞めたい 7月下旬に泣きながら話す
◇「ウソをつくな」と追い詰め
◇「洗脳させられてしまった」
◇リーダーと2週間の原発作業 初日の朝に自殺
◇「いじめはなかった」と会社
福井労基署は今年7月24日、人格を否定するひどいいじめが、社内で繰り返されていたとして、当時19歳だったHさんの自殺を労災と認定した。
Hさんが働いていた暁産業は、福井県で消防機器の販売や保守点検をおこない、この分野では県内最大手の会社という。同社のウェブサイトによると、主な事業内容は、消防自動車や消防ポンプ・ホースの販売のほか、火災報知や避難誘導設備の設計施工、消防設備の保守点検などだ。
Hさんは高校の学校推薦で入社が決定し、同年2月からアルバイトとして働き始め、4月に正社員採用された。アルバイト当時からの配属先であるメンテナンス部では、消化器や誘導灯といった消防機器の保守点検などをおこなっていた。朝6時から7時に家を出て、夜9時や10時ごろに帰宅するのが日常だった。
いまでこそ父は、「ブラック企業であるならブラック企業として、ちゃんとそういうリストに載せて差し上げて、おかしいと気付かせてあげなあかんですよ」と話すが、高校3年生のHさんが就職の会社選びをしていた当時、暁産業は「いい会社」というイメージを持っていた。
「『いい会社入ったな』って最初、私も言ったんですよ。私が甘かったんです」と父は言う。
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(上)暁産業の本社ビル外観(下)周辺の様子。 |
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たしかに、得意先や本社所在地、社員数などを見ると、何も知らなければ、信頼できる「いい会社」だと思う人が多いだろう。父も、そう思った1人だった。
ウェブサイトによれば、まず出てくる得意先は「県下全消防本部」と「県下各自治体」。官公庁相手に消防機器を扱っているとなれば、安定性は抜群だろう。
北陸電力、関西電力、NTT西日本、福井大学、福井医科大学、福井新聞、福井放送といった地元の大手も得意先だ。また、原発が集中する福井県らしく、日本原子力発電、日本原子力研究開発機構、電源開発といった名前も並ぶ。
4階建ての本社ビルは、県庁と県議会と県警本部がある旧福井城の南西の堀端にあり、真裏は福井市役所、交差点を挟んだ斜向いに福井県のJA本館、隣には朝日新聞福井総局という立地だ。実際に行ってみると、「こんなところにあるのか!」と驚く。社員数は44人(男33人、女11人)で、1951年設立の老舗でもある。
だが、Hさんの死後にわかってきた社風は、「軍隊みたいな規律があたりまえの会社」と父が感じるようなものだった。「仮面ライダーにでてくるショッカー軍団みたいな会社」とも父は言う。
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会社資料「朝礼の手順」。書類を置く位置がミリ単位で指定されている。 |
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◇「書類は机の端から50mm」 厳しい規律
この会社の規律の一例が、「朝礼の手順」という社内文書に出ている。
全員でおこなう「おはようございます」という挨拶がいい挨拶だったかどうか、全員で評価し合うことを2回繰り返し.....この続きの文章、および全ての拡大画像は、会員のみに提供されております。
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Hさんの手帳2冊(白・黒)の記載内容の一部。 |
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Hさんの手帳2冊(白・黒)のうち、白手帳の記載内容の一部。 |
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死亡した12月6日の部分。2週間の予定で日本原電に行く予定になっていた。 |
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