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11/30 2016
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『週刊朝日』1997年5月2日号
 電通の懲戒処分について、記事を書いた。

電通、NHK取材に「自浄能力がない」と感想を述べた若手社員を「戒告」の懲戒処分にして自浄能力のなさを改めて示す

 僕は「実名で取材に答える権利は絶対にある」という点で一貫していて、20年前にサラリーマンだった頃(新聞記者の入社2年目)、『週刊朝日』の取材に、実名で答えている。朝日の記者は「匿名にしますか」と定石どおりに言ってきたが、あえて「実名でいいですよ、何1つやましいことはしてませんから」と電話で言った。

 その結果、ほかの人はAさん、Bさん…と匿名だったが、僕は実名で載って、部長に呼び出された。予想されたことだが、僕は、古い日本企業の体質がダメだと実感していたので、そういう状況は、むしろ望ましかった。

 だから、今回、処分された20代の社員には同情する。

 当時の記事を読み返すと、後半はこんな内容になっている。

「会社をやめようと思ったことはあるか」「慶応SFCの退職率が高いとすれば何が原因か」を電子メールで聞くと、<やめようと思ったことはない。(上司を)やめさせてやろうと思ったことは何度もある。大企業を1年でやめたら、社会人としての適性を疑われて当然だ。最低でもあと4、5年は勤めたい><SFCは「問題を発見して、解決する人材を育てる」という教育方針だから、積極性が求められる。これも、出る杭は打たれるという日本企業の風土になじまない。SFCの教育自体に問題はなく、むしろ「日本企業の体質が時代遅れ」というほうがより大きな問題ではない>との答えが返ってきた。
 呼び出したのは、この守屋部長である。本社のほうで見つけて、支社の部長に連絡が来たらしい。「取材を受けることは否定しないが……(少しおれの管理者としての立場も考えてくれよ、おまえ2年目だろ…という顔)」などと、ごにょごにょ、言っていた。

 会社は、もちろん懲戒処分など、できなかった。当然である。普段、新聞記者として取材している側の人間が、取材を受けただけのこと。これがダメとなったら、自己否定することになる。懲戒処分などしようものなら、ニュースだ。ざまあみろ、と思った。これが、古い日本企業の普通の対応だと思う。

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2ページ以降
 もちろん、「(上司を)やめさせてやろうと思ったことは何度もある」と本音で答えているので、人事部にはそういう奴だ、と記録されただろう。でも、もともと終身雇用のつもりで入社していなかったので、さっさと30才くらいまでに辞めればいい、言論の自由がないような窮屈で人権侵害的な組織にいるのは俺には合わないし、人生の無駄だ、人事で飛ばされたらちょうどいい辞めるきっかけになるさ――くらいに思っていた。

 僕はまだ生意気盛り、青臭い理想を語る24歳の若造で、若者特有の「根拠なき自信」にみなぎっていたし、先輩記者を見て「ジャーナリストとして全然たいしたことない奴らばかりだな」という感覚も入社直後から持っていた。

 結局、この記事をきっかけに、自由に意見表明していたブログ(そういう言葉は当時はなかったが)が会社に発見され、一方的な閉鎖命令を受けた。社内規定はなかった。やむなく従った。

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業務外のホームページ等に関する規定
 僕は、外部への意見表明は「言論の自由」だと信じていたので、1年後に再開する。それを発見した会社が懲戒処分をかけてきた。該当する社内規定はなかったので、「会社の経営方針・編集方針を害さないこと」みたいな、なんでも当てはまる規定が根拠とされた。

 そしてのちに、「業務外のホームページ等に関する規定」が新設された。

 部長の管理能力の拙速さもあって、2年半後に外資に転職することになり、この処分(2週間の出勤停止)取り消しを求めた訴訟では、やはりというか、裁判所は大企業の味方であった。

 20年たって、僕は、理不尽な懲戒経験者として、労働裁判経験者として、働く者の立場から物事を伝えるニュースサイトを経営している。20年前のブログの延長であり、僕がやることは一貫してブレない。

 今回、電通を取材してみて、やはり古い日本企業は何も変わっていないな、との思いを強くした。この事例でも、始末書を書かされ、サインさせられているため、処分の取り消しを求める裁判をやっても、勝てないはずだ。

 裁判所は、企業勤めをしたことがない純粋培養の法律バカ集団なので、罪を認める内容が書かれた始末書にサインしてあったら、「認めてるじゃないか」となるわけだ。しかし、力関係が全く違うなかで、会社側から強制的に書かされたものに証拠能力などないことは、サラリーマンなら誰でもわかる。

 構造としては、自白調書をとられた冤罪事件と同じだ。いつも述べているように、日本の重要な問題の多くが「裁判所ぐるみ」という1つの例である。.....この続きの文章、および全ての拡大画像は、会員のみに提供されております。

 
12:55 12/02 2016 | 固定リンク | コメント(1) | アクセス数(764)


04/30 2016
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ホーチミン中心地。後ろはGAPやリーバイスはじめ、下層階に欧米ブランドショップが入る「Vincom Center」。
 先月(2016年3月)、ホーチミンを久しぶりに訪れた。ベトナムには21年前の1995年夏に初めて旅して、初めてのアジアだったため、かなりのカルチャーショックを受け(ハノイとホーチミン)、ホーチミンには20代の後半に一度、ゼミの先輩を訪ねて友人と行った記憶があり、ハノイには2009年3月に10日間ほど訪れた。7年ぶり4回目のベトナムである。

@ホーチミン(ベトナム)2016.3

 シクロ(人力三輪車)は生活シーンから完全に消え、浅草の人力車みたいに観光用に一部が残されているだけになっていた。代わりにタクシーが目立つようになり、観光客を運んでいた。ウーバーもたくさんいて便利だ。

 とはいえ相変わらず自動車に対するバイク比率の高さ(見た感じ1:20とか)はそれほど変わっておらず、20年前よりは車が増えたが、7年前とは同じ印象。信号待ちの光景が、バイクレースのスタート風景みたいに映るのも変わっていない(一枚目写真)。

 7年間の変化は、意外に小さかった。市内に電車くらい走っているかと思ったが、まだ建設中だ。「ビンコムセンター」など商業ビルが中心部に建って欧米ブランドショップが入り、郊外にはイオンモールがオープンして日本の「丸亀うどん」等も出店していた。だが、ホーチミンの市街地はあまり変わっておらず、歩くのが楽しい街だった。

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約1千円の20万ドン札。1千ドン札(=5円相当)まである。
 物価は、7年間でドンの価値は15%ほど下がった。新興国通貨は、かつての円がそうであったように、経済成長とともに上がっていくものであるが、黒田円安政策のもとでもなお、「円高ドン安」となっていた。

 為替は「1ドン(VND)=0.0048円(JPY)、1円 = 206 VND」。ようは、200で割ればよい。20万ドン札が千円札だ。日本もたいがいだが、ベトナムこそデノミが必要である。マルの数を数えるのがタイヘンだ。しかも、20万ドン札と2万ドン札があって、どちらもホーチミン先生が刷ってある。これでは間違えないほうがおかしい。

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PHOは65000ドン(=314円)。チェーン店の2倍、屋台の3倍くらい。麺より多い香菜の量がポイント。好きなだけちぎって入れる。
 さて、ベトナムといえば、大好物のフォー、ヌックミア(さとうきびジュース)、ベトナムコーヒー、生春巻、である。

 僕はPHO(フォー)が大好きなので、毎日2食は食べていた。7年前と変わったのは、ネット上の情報が増え、間違いのない店を探しやすくなったことだ。青空屋台は情報がないので入らず、人気のある大衆食堂ばかりを食べ歩いた。遠くても1時間くらいは歩き、疲れたらタクシー(初乗り1万2千ドン=60円)である。

 ちゃんとした大衆食堂で人気店は、1杯=65000ドン(314円)と少々高い。どこも満席で、すごい熱気だ。「PHO24」などのチェーン店だと3万ドンくらいで、それでも屋台よりずいぶん高い。

 人気店は、どこも香彩類が充実している。3種類ほどの山盛り香菜類が使い放題で、日本でいうと、ほうれん草の束をほどいてドカっと置いたくらいの量がある。これが、客が入れ替わっても常時、机上に置きっぱなしとなっていて、減ると裏で足されたものを持ってくる。

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モヤシ、香菜、スダチ、唐辛子、3種類のソース、ニョクマム…が主人公にみえるほど。
 ほかに、モヤシ、すだち、ニョクマム(魚醤)、チリソースなどを組み合わせ、自分で好みの味に調整できるところがポイントだ。すべて使い放題で、なくなれば持ってきてくれる。切り端などのゴミは、各机の下にゴミ箱が1つずつ用意されていて、捨てていく。

 これらは、21年前から全く同じ。これこそ、食文化である。僕がハノイやホーチミンで食べてきたホンモノのフォーは、豊富な付け合わせを使い放題で、自由自在に自分の好みの味に、無限段階に調整しながら食べられる点にこそ、本質がある。そして僕は大量にこれらを使って、あらゆる味を試す。何を入れてもおいしい。

 東京でフォーを食べるときは、いつも「パクチー大盛りで」と頼むが、その「大盛」とは、本場のフォーについてくる香菜と比べると、10分の1にもならない。本質から外れているのだから話にならない。東京のフォーは完全な偽物である。

 今回思ったのは、そのうち余裕ができたら、本場のベトナム料理屋をやりたい、ということだ。都内で有名なベトナム料理屋にはずいぶん行ったが、ぜんぶカネ儲け主義でコストカットばかりしていて、ショボすぎる。ホンモノがない。

 単純に、コストの問題なのだと思う。香菜類は日本のスーパーだと、少量ワンパック200円といった相場なので、本場と同じようにドサっと置くと、その10倍の量は必要で、香菜だけで2千円也。スダチやモヤシも使い放題にすると、麺や肉の価格を入れると、1杯3~4千円にしなければペイしないだろう。麺類としては、一般大衆向けの価格設定にならない。

 それでも僕は食べたいし、ニーズはそこそこあるだろうから、趣味で店をやって自分で好きなだけ食べたいと思うのだ。

 ちなみに僕はイシャログというサイトを半分趣味で作ったが、400~500万円投資して、売り上げはまだほとんど立っていない。10年単位で回収できればよい。回収できなくても、必要なものは、存在しなければならない。そういうことである。どなたかベトナム人有志と一緒にやりたい。

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少なくとも東京でヌックミアを飲める場所は見当たらない。コーヒー店なんかよりもずっと健康的だし、市場競争力もあると思うんだけど。
◇まだ5千ドンだったヌックミア
 フォーと一緒に、好物の生春巻きがメニューにあれば食べる。そして飲み物は、ある店では、ビール(「333」「タイガー」)が2万ドン(100円)。フレッシュココナッツジュースも同額。そして、さとうきびジュース、食後にベトナムコーヒー。どれも1杯100円前後で完璧においしい。

 大好物のヌックミア(さとうきび生搾りジュース)は、街歩きをしながら、ゴクゴク飲んだ。インドでチャイやラッシーをゴクゴク飲んだように、飲み続けた。主に露店で飲むが、意外にも腹を壊すことはなかった。

 観光客が多い市場だと1万ドン(50円)だが、少し外れると8千ドン。さらに地元民しか行かない路地に入っていくと、移動屋台で、5千ドン(25円)。それより安いところは見つからなかった。5千ドンというのは7年前と同じ価格で、急成長するベトナムのはずが、ぜんぜん値上がりしていなかった(21年前は1500ドンだった)。

◇加工品のほうが値段は高い
 面白いのは、加工食品のほうが高いということだ。「ハイランズコーヒー」というスタバみたいなベトナムコーヒーの店がいたるところにできているが、ここで紅茶系飲料を頼んだら49000ドン(240円)であった。

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ハイランズコーヒーは、だいたい1杯200円くらい。バカ高い。これは49000ドン。添加物入りの不健康なモノのほうが途上国人にはウケるらしい。
 店を出てすぐ隣にある商店でさとうきびジュースを搾ってもらうと(上記映像)、8千ドン(40円)。実に6分の1である。さらに歩けば5千ドンと、10分の1になる。

 先進国では、生ジュースのほうが加工品よりも高いのが相場だ。スタバで座って飲むコーヒーよりも、生搾りジューススタンドで立ち飲みするほうが値段が高い。無駄な添加物がなく自然でおいしい生ジュースのほうが価値が高いのは、我々にとっては当然である。

 ところがベトナムだと、一番安いのが天然の搾りたて生ジュース。日本でさとうきびジュースといえば、沖縄の市場でギリギリ飲めるかもしれない程度だが、東京で飲める場所は見当たらない。実現させるなら、500円以上になるだろう。

 このあたりの、旨くて安くて健康的なもの(ヌックミア)が、よりまずくて高くて不健康な先進国の加工品(ハイランズコーヒーとかコーラとか)にどんどん駆逐されていく様は、文明による文化の侵略であって、どうにかならないものか(文化の進化などではなく、文化帝国主義である)、文化と文明はトレードオフなのか――というのが21年前からの問題意識であった。資本主義自由経済とグローバル化の負の側面、いくつもある「市場の失敗」のなかでは語られることがない側面である。

 21年たってみて、その間、グローバル化をテーマにした本も書いて、今、あらためてベトナムを定点観測してどう思うのかといえば、缶コーラのような保存がきいて安価に大量生産できる「マーケットフレンドリーな商品」と、そうでない商品は確かにあって、後者は確かに不利な戦いを強いられているものの、意外に駆逐されることもなく、容認できる範囲内のバランスを維持しているように見えたことだ。

 この21年でヌックミアやフォーが、その姿を消していたら、または、姿をその本質から変えすぎていたら、残念だった。だが、経済成長とともに物価は上がるものの、大きく消えていくことはなかった。

 ただ、今後さらに十年、二十年をへて、経済成長を遂げたあとにどうなるか、だ。今回、サイゴン川を上るツアーにも参加したが、サイゴン川に面するスラム街はとんでもなく大量に存在している(まさにこれ)。この国の貧困は、厳然として残っている。まだ日本の昭和30年代、といったところだろう。

 ベトナムが日本のような経済成長を遂げたとき、ヌックミアは街中から消えているのだろうか?また、フォーは日本のそば屋のようにチェーン化が進み、日本のフォーの店のように偽物になってしまうのか?

◇保存が利かないモノ
 本で書いたとおり、グローバル化が進む際に、影響を受ける度合には差がある。①一番速く影響を受けるのは、情報・カネ。これは瞬時に国境を越えるからだ。②次が、モノ。少し時間をかけて、最終的に1物1価になる。

 ③モノのなかでも、保存が利かない生鮮食品は、国境を越えにくい。たとえば、日本のコンビニの惣菜工場が中国に移転することはない。保存が利かないからだ。1日3回、中国から都度、輸送していたらコスト高でペイしない。新鮮であることに価値があるのだ。したがって、国内にその工場での作業員の仕事と雇用は、残り続ける。

 ④次に国境を越えにくいのが、ヒト。その地に生まれ育った人間は、簡単に移動できない。だから失業率が高い国と低い国が生まれる。⑤もっとも国境を超えないのは土地だ。国境線が変わらない限り、動かせない。よって不動産は常にローカルビジネスになりやすい。

◇マーケットフレンドリーの逆説
 日本に帰って、似ているな、と思ったのが、日本のイチゴである。日本のイチゴは世界的にみて圧倒的においしい。値段も高くない。冬から春にかけては、日本中で毎日、スーパーに並ぶ。数日で腐るので、輸出はしにくい。鮮度に価値があるからだ。低コストで全く鮮度が落ちない技術が開発されれば別だが、今のところはない。タイなどごく一部への輸出が精いっぱいで、車や電化製品のように地球の裏側では売れない。

 同様に、ヌックミアも、鮮度に価値がある。加工されパックされたジュースも販売されているが、買って飲んでみたところ、マズすぎて捨てた。別モノにしかならないのである。バングラデシュなど世界中に同様の飲み物はあるが、どこも同様に輸出はできない事情には変わりはない。

 そう考えると、「ベトナムのヌックミア」は、「日本のイチゴ」化するのではないか、というのが私の仮説である。同様に、香菜も鮮度が重要なので、大量の香菜にこそ本質があるホンモノのフォーも、今の形のまま、残り続けるかもしれない。

 逆説的だが、マーケットフレンドリーではないからこそ、そのオリジンである地域には、残るのだ。世界化できないからこそ、外からの侵攻も受けないのである。イチゴも、何か別の理由があるのかもしれないが、韓国産のイチゴはマレーシアなどにはふつうに並んでいるが、日本では見たことがない。マズいし鮮度も落ちるし輸送費分がコスト高だからだろう。

 一方、マーケットフレンドリー(市場への親和性が高い)な文化とは、たとえばコーヒーだ。保存が利く。大量生産できる。コーラと同じだ。ベトナムコーヒーはおいしいが、マーケットフレンドリーであるがゆえに、あの独特のカップに入れて飲む文化は、廃れつつあった。21年前はどこでも見かけたが、手軽な自動焙煎器にとって代わられ、チェーン店では、スタバ等と変わらぬ姿で提供されていて、残念である。文化帝国主義だな、と感じる。

 グローバル化が進み、文明化が進んでも、マーケットフレンドリーでない文化は、外部からの侵略を受けることなく、そのままの形で、むしろ市場に残りやすい――これが現状の私の結論であるが、今後も、フォーやコーヒーやヌックミアについて、定点観測を続けていきたい。

 
00:23 05/01 2016 | 固定リンク | コメント(1) | アクセス数(2108)


04/20 2016
 就活生への「若者雇用促進法」に基づく情報開示についての記事は、はっきりと企業側の態度が二分され、なかなか興味深い結果だった。

 ようは、相変わらずの「努力」義務で罰則もないため、「正直者がバカを見る社会を促進する」という悪法になっていることがわかったのだ。

 この5社はいずれも、いわゆるブラック報道で有名な会社なので、離職率も高い。働く人を選ぶ会社だ。体が弱い人が間違って入ると、過労死リスクが高い。だが、企業側としては、新入社員の3年内離職率を開示してしまうとマトモな人が入ってこなくなるから、開示したくないのだ。

 それでも、ワタミ、ゼンショー、ドンキは、ブラック企業報道で批判を浴び、この法律が、まさに自分たちみたいな会社のために作られた法律だということを自覚しているから、やむなくも、きっちり応じた。ここで応じないと、どこでどう叩かれるかわからないからだ。既に痛い目にあっているから、これ以上は避けたい。

 ところが、ユニクロとナガセは、情報開示を求めても、まったく応じない。今のところ、莫大な広告宣伝費によってマスコミを抑え込むのになんとか成功しているし、業績への影響もないからだろう。不利な情報は隠したまま、学生を騙して入社させてしまったほうがトクだ、入社後に洗脳して、数年で辞める奴がいても、使い捨てて、また次を採用すればよい、と考えているのである。

 厚労省の担当者は「離職率が開示される世の中を目指す」と取材で答えている。たぶん現場の役人は、本当にそう思っている。政権与党の自民党も、共産党がブラック企業批判などで躍進した前回衆院選(2014年12月)結果をふまえ、何かしらの対策を打ち出しておきたい。でも、支持母体である経団連はじめ経済界は、余計な情報提供を義務付けられるのは絶対反対だ。

 その結果、すっかり骨抜きされた「やったふり」法案になり、相変わらず、国がブラック企業をかくまっている構図が続く。正直に情報を開示したら若者を採用できなくなった、隠しておいたほうがよかった、という結果を招きかねない、「正直者がバカを見る」という構図になっている。

 民主党政権時に、役員報酬額の公開(有価証券報告書)が義務付けられたが、連合の支持を受ける民主党も、労働環境に関する情報開示はやる気がない。なぜなら、ユニクロやナガセをはじめ、ブラック企業には労組なんか最初からないからだ。

 連合は、カネと雇用には興味があるが、労働時間や離職率には興味がない。大企業労組の年寄り集団である連合にとって、若者の労働環境など優先順位の一番下のほうだ。

 この法律に対する姿勢をみれば、その政党が主に誰の利益を代弁するのか、がはっきりわかる。一番ダメなのは、やったふりすらしなかった民進党。自民はやったふり法案を施行しただけマシだが、経団連の利益を優先し、「努力義務」以上には改善されそうにない。現状、若者の利益を代弁する政党が、共産党以外にないのは問題だ。おおさか維新あたりは、ぜひこの問題に取り組んでほしい。

 答えはわかっている。「努力義務」ではなく、以下情報を「重い罰則つきの開示義務」とし、上場企業については有価証券報告書への掲載を義務付ける。そのように変えるだけで、この法案は、ブラック企業問題の解決におおいに役立つものとなる。

【開示を義務付けるべき情報】
・新卒採用数とその3年後までの離職者数を過去3年分
・過去1年の残業時間の分布と全体平均
・過去1年の有給休暇消化数と消化率の分布と全体平均
・過去1年の育休、育児短縮時間勤務の取得者数
・過去10年の労災認定事項すべて

 
08:54 04/20 2016 | 固定リンク | コメント(2) | アクセス数(1396)


01/24 2016
 私は働き手の立場で取材して12年になるが、全職種をカバーするうえで、介護は欠かせない職種だ。親兄弟も含め、いずれ多くの人に関係してくる介護問題。じっくり取材して計2万3千字にまとめた。

介護福祉士&ケアマネ 「芸能人呼ぶカネあるなら給料上げて!」非効率事業者が淘汰されない、官製低賃金労働者

介護福祉士&ケアマネ 整形外科通いも当り前、低ストレス・重労働でキャリアパス見えず…

 介護職がかなり足りなくなる(既に足りない)という話は、厚労省の“予算獲得ポジショントーク”を加味したとしても、たぶん本当で、今後、大きな社会問題になりうる。足りなくなる理由は、重労働&低賃金でなり手がどんどん増える状況にないから。これは厚労省も半ば認めている。

 記事の最後に解決策を書いたので、再掲しておこう。
 ようは、こういうことだ。

①介護保険制度という法律によってサービスの売値が決められてしまっている

②経営側としては、コストをいかにカットするかを考えるしかない

③一番大きなコストは人件費だ

④介護労働者の賃金をカットして私腹を肥やそう&さらに大きく儲けるための設備投資資金に充てるため内部留保にしておこう

 つまり、売値だけを規制している以上、このサイクルが回り続けて、介護職の賃金が上がるわけがなく、低位安定が続く構造なのである。これが、特養の社福が平均3.1億円の内部留保を持っている背景でもある。

 サービスの売値を規制する以上は、人件費の下限(最賃)も規制しなければいけない(A案)。または、歯医者でやっているように「混合診療も可」(保険以外のサービスも可=混合介護の解禁)として、売値に自由度を持たせる(B案)。この2つの、どちらかしか方向性はない。

 後者(B案)の「混合介護」については現在、八代尚宏教授が書いているとおり、事実上、禁止されている。ただ、顧客が弱ったお年寄りということで、解禁するとトラブルが増える可能性がある。中期的にはやるべきだと私も思うが、即効性の高い解決策としては、A案を先にやるべきだと思う。

 たとえば1時間の生活支援サービスだと、3千円が介護保険から事業者に出て、半分の1500円が訪問介護員に時給として支払われる、というのが現状だが、この3千円のほうを上げても事業者の内部留保と放漫経営に使われるだけだから、絶対にダメである。1500円のほうを「最低賃金1600円」と上方向に規制するのだ。

 そうなると、3千円-1600円=1400円のなかを、いかに効率化してコストダウンするか、という競争になる。IT投資をする、機械化する、M&Aで規模の利益を追求する、といった、介護の効率化が進む。1600円を払えない事業者は倒産して貰い、もっと払っても良質なサービスを維持できる事業者だけに生き残ってもらわなければいけない。

 その健全な競争を進めるために、サービスレベルの透明化が不可欠となる。顧客フィードバックの仕組みと、その開示制度がない限り、外から評価しようがないからだ。以下、そういう要旨で解決策を提示した。

◇解決策として
 介護市場は、書籍の定価販売を義務付けた再販規制のある書籍市場と似ている。本は、再販で末端価格を統制できてしまうために値引き競争がなく、中小零細出版社でも多数、生き残りやすい。民主国家において、多様な言論を確保するという目的に適った仕組みだ。その一方で、講談社・小学館・集英社のような大手総合出版社が過剰な利益を得やすくなっている。この3社は従業員の賃金が異常に高く、平均年収1300万円以上はある。

 介護も同様に、介護保険制度でサービスの販売価格が予め決められ、価格競争はない。国が必ず支払ってくれるため、とりっぱぐれもない。この手の市場では、大手のみが規模の利益を得やすく、儲かり過ぎてしまう歪みが生じる。

 介護の場合、出版における「多様な言論」にあたる「多様なサービス」が必要かというと、そもそもサービス内容まで行政に細かく決められており、むしろ多様性のない一律なサービス提供が求められている。

 運営主体への給付額をアップしたところで、労せずして、「内部留保」と「社福や医療法人の理事長(経営者)ら」に利益が回ってしまうだけ。したがって、現場介護職の平均年収を100万円上げたいなら、制度設計を改革する必要がある。

 1案として、以下を提示する。簡単に言うと、もっと「介護事業者」に厳しくし、「利用者」と「介護労働者」に利益を配分すべき、ということだ。

①各資格ごとに最低賃金を設定

 たとえば、初任者研修修了者1200円、介護福祉士1400円、認定介護福祉士(国が現在、構想中でまだ存在しない)1600円、ケアマネ1800円、主任ケアマネ2000円、などと、民間よりもかなり高めに最賃を決める。

 ただしその分、事業者に支給される介護給付費の総額を増やす余裕は国の財政としてないため、よりメリハリのついた使い方に変える。たとえば、生活支援で「買い物」が認められているが、これは月1回などに制限をつける。ほとんどの場合は買うものが決まっており、通販や、スーパーの配達サービスで事足りるからである。

 「買い物支援には、疑問を感じています。昔からやっていたから、通販を使ったことがないから、という理由で、おばあさんが言ってもきかない。雨でも台風でも、車いすで買い物に行く、と言い張る。4千円分の食料品を買うために。それで、ヘルパーは1時間、1520円の時給を貰い、その2倍強が介護予算から出ています」(Aさん)

 予算がじゃぶじゃぶにあるわけでもない、産油国でもない日本で、この使い方はぜいたくというほかない。もっと命にかかわる、本当に必要不可欠なサービスにのみ、使われるべきだろう。

②利用者によるフィードバック(顧客満足度調査)を厳格に運営

 最低賃金を上げるだけでは、その最低賃金水準に張り付き、介護の質も上がらないため、事業者間の競争原理が、確実に働くようにしなければならない。現状は、だまっていても利用者(顧客)が増え続ける成長市場を背景に「ぬるま湯」となっており、非効率が温存されている。

 解決策として、利用者が選択する際の役に立つ「顧客評価結果」を公表する。アマゾンの出品者への評価やウーバーの利用者評価結果は、いずれも5点満点で表示されているが、あれに近いものである。

 この適正な運営を、行政の最重要業務の1つに位置付ける。現状では、訪問介護の場合、「地域包括支援センター」からの紹介で事業者に申し込みが来るケースが多いというが、これは、利用者がどこの事業者に頼めばよいかわからず、選択するにせよ「近所の噂」程度しかなく、確たる情報がないからだ。

 ここで1つ障害となるのが、利用者からどうフィードバックを得るか、である。たとえばBさんが所属する大手医療法人では、利用者に満足度調査をしても、ちゃんと書かないのだという。

 「利用者さんの声が一番なのに、『ちょうどいい』ばかりで、差が付かないんです。日本人は本音を言わないし、悪い評価をしたら、バレて報復されるんじゃないか、と恐れている。アンケート箱みたいにして持って行って『絶対匿名だから』といくら言っても、信用してもらえないんです」

 顧客評価制度は、このように、運用が難しい。しかしこれがないと、介護職の人手はずっと足りない状態が続くため、やる気のない人(事業者)やダメな人(事業者)が淘汰されず、健全な介護職の労働市場が育たない。乗り越えねばならない課題である。

 最賃で底上げを図ったうえで、徹底した利用者ベースの競争を促進し、評価の高い介護サービスを提供する法人には、より多くの利用者が集まり、給与水準も上がる。競争に敗れた法人は潰れるか、優秀な法人に経営統合される。そして全体の効率が高まり、給与水準が上がり、利用者満足度が高まる。このサイクルを作らねばならない。

 現状で、訪問介護事業で「粗利5割」(Cさん)というビジネスは、まともな経営者にとっては十分に魅力的で、利益をあげられるはずだ。経営センスがなく無駄なコストを放置してしまう零細事業者は、淘汰されたほうが国民のためである。

 競争が続くと、最終的には統合が進み、少数の大規模法人が生き残るはずだ。介護というのは、コンサル会社のように、独創性や独自性が競争力の源泉になる仕事ではなく、同じ内容のサービスを均質に確実に提供する仕事だからである。その場合、IT化、機械化投資を行い、無駄なコストを省いた会社が、より高い給与を支払え、よりよいサービスを提供できるようになる。

 極端に言えば、全部統合してしまって同じ情報システムで、同じ会計システム、同じ給与管理システム、同じ介護保険点数申請システムにしてしまえば、間接業務の無駄を省け、その分を現場の給与に還元できるわけだが、それでは独占の弊害で競争がなくなる。この分野での適切な競争を促す公取の役割は大きい。

 現状の、乱立した多数の法人の経営者給料や間接部門のコストは、本来、介護サービスを全国に効率的に提供するという目的に照らして、全く必要がない。そのうえ、さらに平均3.1億円も貯め込まれた内部留保は、元は我々国民が納めた介護保険料や税金である。最賃の設定と顧客評価を軸とした介護事業者に対する競争政策で、事業者側の立場に偏った介護政策を転換しなければならない。

 
20:13 01/24 2016 | 固定リンク | コメント(0) | アクセス数(1434)


09/30 2015
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金融事業がエレキを補填する形になっているソニーの業績
 先月までの一連の取材で記事を4本書いたが、ソニーはどこに向かうべきなのか、という話も、社員・元社員に毎回、聞いていた。今回、私なりのソニーが目指すべき戦略について、意見をまとめておこうと思う。ソニーは、古い日本企業の縮図(バブル期入社組の40代後半以上が多い、年功序列型賃金、終身雇用、コモディティー化、新興国企業との戦い)ともいえる会社で、他社にとっても、その答えは応用がきくであろうからだ。なお、インタビュイーは全員、いわゆる有名私大卒のエレキ事業に属する男性で、多様性のなさも日本企業らしい(20代~40代)。

1:職務給「ジョブグレード制」採用で、ほとんど全員年収カットへ
2:ヒット商品が出ないワケ――バラバラ組織、あきらめの早さ、尖ったモノを出せないプロセス…
3:「久夛良木さんに社長をやって貰いたかった」TV時代の部下が語る失敗の原因、リストラの窮状
4:早期退職した社歴15年超の技術者が感じた 「この会社、社長に権限ないんじゃない?」の現場

 ソニーの2015年3月期決算は1259億円の最終赤字で、無配だ。傾向としては、金融分野が安定的に収益を稼いでいるが、エレクトロニクス(エレキ)分野が赤字続きであるため補填しきれず最終赤字になる、という構造が、ここ10年で定着した感がある。

 「今のソニーは、ジャックウェルチが就任した当時のGE。20年くらいかけて痛みを伴う構造改革を続けるしかない。フィリップスが『医療』『照明』『白物家電』の3つに絞る構造改革をしたように、大きなイノベーションがなくても稼げる市場を、確実に抑えていくべき」。数年前に話を聞いた中堅社員は、「でも、それはソニーには無理」ということで、ほどなくソニーを辞めた。

 今のソニーに、「選択と集中」による構造改革が必要だという点は、誰も異論はないだろう。問題は、この10年、社員を減らすことに苦心してきたものの、いまだ7割超の社員が赤字体質なエレキに所属しており(連結社員数14万人のうち約10万人がエレキ、利益が出ている金融は8500人)、そこが胴体であり創業の事業であるから、エレキ中心に考えざるを得ない点にある。

 業績拡大期はともかく、苦しい時期は、本業に立ち返り、本業に全リソースを集中するのがセオリーだ。ブラック批判で赤字転落したワタミは、本業の外食で生き残るため、介護事業の売却を決めた。真っ当な戦略である。

 もちろん、何を選択するかが重要だ。シャープは「選択と集中」を誤って、コモディティー化の宿命を背負っていた『液晶事業』を選択して集中投資してしまい、現在、その液晶事業を売却せざるを得ない方針に追い込まれ、決定的な苦境に至っている。

◇グループ内に金融・音楽・映画会社は要らない
 まず、迷う必要なく真っ先に判断可能なのは、非エレキ部門だ。金融・映画・音楽は完全に切り離し、売却すべきだと思う。エレキとのシナジーがないどころか、逆に足かせになっているからだ。

 iPodでアップルに先行を許した際に議論になったが、特定の音楽レーベル(ソニーミュージック)や映画会社(ソニーピクチャーズ)を連結グループ内に持ってしまっていると、本業のエレキ製品で“等距離外交”ができず、消費者からもそう見られてしまい(アンフェアな品ぞろえだろう…)、さらに利害相反(iPodが普及するとソニーミュージックのCDが売れなくなる、著作権が侵害される…)を生み、不利なことばかりだ。

 実際にソニーのスマホ「エクスぺリア」を使ってみても感じるが、消費者はソニーグループのコンテンツだけを見たいわけでは全くない。特定のレーベルに所属するアーティストや作品だけを見たい・聴きたいという消費者などほとんど存在せず、自分の好みに合った作品を横断的にすべて鑑賞したいのである。従ってソニーは、絶対に、どの音楽・映画会社とも等距離でなければいけない。

 金融についても、これまでのソニーは、エレキの赤字を金融の黒字で埋め合わせることができたため、エレキの改革が放置されてきた面がある。消費者や株主はともかく、「社員共同体」としては、それが望ましかった。自分が在籍している間に、雇用と報酬が保たれれば、それでよいからだ。それがこの10年である。

 「サラリーマンの会社なので、行くところまで行って“ゴーン”が来ないと。でも、金融とイメージセンサーがあるだけに、中途半端な状態なんです」(昨年、早期退職で辞めた元社員)

 つまりソニーは、本業のイメージセンサーはともかく、金融事業を抱えているために、背水の陣を敷く必要がなかった。資金的な余裕があるので、サラリーマンあがりで内部昇格した経営陣が、あえて同僚たちを露頭に迷わせる「コストカッター」を、次の社長に迎え入れる理由がないのだ。

 当時の日産のような、または今のシャープのような、危機的な状況に追い込まれれば可能だが、安定的に儲かる金融事業やシェアトップのイメージセンサーを持っているため、そうならないまま、中途半端な状態でジリ貧が続いてしまった。

 さらに、映画や音楽でも利益が出ていたために、コングロマリットの宿命として、当然、黒字事業からCEOが輩出され、したがって、社員の7割超がエレキに属する会社なのに、エレキ出身者が経営トップに就けず、エレキ中心の戦略が立てられず、ズルズルと赤字が垂れ流され、ますますエレキから意思決定者を送り込めない、という悪循環が、2005年のストリンガーから、10年以上続いている。

 ソニー生命・ソニー損保・ソニー銀行の客は、ソニーブランドに惹かれて加入しているのか?ゼロとは言わないが、もはや全く別モノだと考えられていると思う。それぞれ独自ブランドとして成長した金融事業は、高く売れる。映画・音楽も含め、「背水の陣を敷けない」「CEOを輩出できない」「シナジーがないどころか新事業の障害になる」という“エレキ再生の足かせ”は、早々に切り離してカネに換え、エレキ再生の資金とするのが、賢明な選択である。

◇GEの構造改革は米国ならでは
 グローバルメーカーを例にソニーが目指すべき方向をあげるとすると、いくつかの選択肢があるわけだが、先例から、大きく以下の4つがある。

① GE:業界横断的な「選択と集中」。一時は金融を儲け頭に。
② フィリップス:メーカーという括りの中での選択と集中。
③ IBM:モノづくり→関連サービス業への業態転換。
④ BMW:同じ製品のなかでの高付加価値品へのこだわり、特化。

 GEは、「選択と集中」によって、一時、金融事業が営業利益の過半を占めるまでになり、今また、製造業に回帰しようとしている。

 ソニーは既に金融に手を出して儲かっているから、カルロス・ゴーンのような経営者を招聘して、「ゲーム」「イメージセンサー」「金融」に特化して残りは順次売却、みたいなGE方式をやれば、短期的には利益が出るだろうし株価も上がり、稼ぎ頭が不明なシャープに比べると、生き延びやすい。

 だが、事業を従業員つきで、短期間に売ったり買ったりできる環境は、企業別労組が強い日本のメーカーにはなく、労使交渉をやっている間に事業環境が変わってしまう。

 今回の取材でよくわかったのは、「大胆なリストラ」と対外的に言ってはいるものの、辞める人にも減給する人にも、配慮に配慮を重ねまくるという、「社員共同体」としてのソニーの姿だ。降格になる人でも、初年度最大2%減まで、次年度で5%減まで、など、超温情的な激変緩和措置が設けられていた。

 ソニーは、ただでさえ日本で一番給料が高いモノ作りメーカーなのだから.....この続きの文章、および全ての拡大画像は、会員のみに提供されております。
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画面が曲面になっている、LG電子のcurvedTV。セブの電器店にて。ソニーは目新しい新製品を出せていない。
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ソニーのヒット商品が生まれない「負のサイクル」

 
18:18 09/30 2015 | 固定リンク | コメント(2) | アクセス数(6213)


05/22 2015
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これは嘘。本音は掲載されなかった。本音どころか、旅行者にとって決定的に重要なファクトが、ホテルや旅行業者にとって都合が悪いからといって掲載されず。口コミサイトとしては終わってますね、これは。
 『イシャログ』を本格運用するにあたって他の口コミサイトをいろいろ使ってみているわけだが、ダメな例として『トリップアドバイザー』をあげておこう。米国のNASDAQ上場企業なので短期的な金儲け主義に走るのはわかるのだが、利用者としては残念というか、もはや理念もへったくれもない。あそこに載っている口コミ情報は総体として嘘だから、信用しないほうがよい。

 今年のGWはマニラやセブにいた。取材拠点として、以下のビジネスホテルを予約したところ、なんと宿泊の前日になって、「オーバーブッキングで部屋がないから他を紹介したい」というホテル側の意向を伝えるメールが、ホテルズドットコムから来た(下記画像参照)。既にクレジットで料金支払い済みだった。

 ホテル業界に詳しい人に聞くと、予約を受付ける情報システムがすべてつながっているわけではないため、たとえば部屋数100のホテルで、楽天に40、エクスペディアに40、JTBに40…と、部屋を満室にしたいがために、まず120を出してしまって、予約状況に応じて途中で絞っていくようなこともあるそうだ。

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ホテルズドットコムからのメール
 ところが、タイムラグがあるために、100を超えて予約を受けてしまうことも起こる。しかし、仮にそうなっても、前日まで客に知らせないというのはかなり宿泊者をバカにした金儲け主義のダメなホテルであり、貴重な口コミとして、ネット上で情報を共有し、そういう経営体質を持ったホテルであることを、他の旅行者に伝え、注意喚起しなければならない。それが口コミサイトの存在価値だ。

 そもそも、前日でも空いてるホテルというのは、人気のない、ダメなホテルだけだから、勝手にキャンセルされたら、旅行者は困ってしまう。特に、今回のような取材の予定が入っているときにこれをやられたら、たまったものではない。

 そこで私は、取材して以下の口コミを書いた。
施設名(名称): ハロルズ
都市名(市区町村): セブシティー, セブ島, ヴィサヤ, フィリピン, アジア
タイトル: オーバーブッキング被害
ID#: 270291451

トリップアドバイザーからホテルズドットコム経由で予約したところ、予約して支払い済なのにオーバーブッキングで部屋がないと前日に連絡してきました。絶対に誰にも勧められません。客を金儲けの手段としか考えてないホテル。結局、当日になって用意させたが、私は他のホテルを探したりで一日潰してるのに、5月6日現在、一言の謝罪もなし。もはや人間として終わってますね。

ホテルの問題でもありますが、代理店の問題でもあります。「ホテルズドットコムは、自らも代理店だが、さらに代理店経由であるため、オーバーブッキングの際にオミットするターゲットになりやすい」(日本語版責任者の沼田氏)。タイの会社なので日本には営業所もなく、日本の法律も適用されない。もちろん違法。優良誤認で、存在しない部屋を予約させ、事前決済までさせてる。

トリップアドバイザーも、こういう悪質なホテル&代理店を表示している責任は重いので、説明を求めたい。

 トリップアドバイザーは、利用者からはカネをとらず、代理店・仲介業者(楽天やエクスペディアその他もろもろの宿泊予約サイト)に送客することによって、仲介業者からアフィリエイト収入を得て儲けている。ホテルズドットコムもその1つだ。もちろんホテルからの広告収入もある。

 したがって、旅行代理店やホテルにとって都合の悪い情報を載せると、利害相反となる。今回の口コミでは、トリップアドバイザーの「本当の客」である代理店やホテルのネガティブ情報であっても、ちゃんと載せられるのか?が問われたわけだが、ある程度予想はしていたものの、見事に載せなかった。

 何の留保もなく、丸ごとはねてきた。「ここだけ載せてよいですか?」「ここだけ修正いただけますか?」とすら、聞かれなかった。すがすがしいまでの金儲け主義で、もはや口コミサイトとして失格といえるクズっぷりである。

 私はトリップアドバイザー経由でホテルズドットコムから予約して決済したので、トリップアドバイザーはアフィリエイト収入で一儲けしているわけだが、私の口コミのほうは載せない。それで「中立的な立場で口コミを掲載しています」などと堂々と嘘をつく。皆さんは、このような詐欺的商法に騙されないよう、注意していただきたい。

 この口コミが載らないことによって、ホテル側は反省もせず、今後も同じダブルブッキングを繰り返すだろう。口コミが載らないことによって、旅行者が、その被害から逃れる手段も失われた。トリップアドバイザーの口コミは、総体として操作されている嘘、ということだ。

 このような、中立を装って消費者の利益を害する口コミサイトは、悪質である。私は、徹底的に消費者(患者)の側に立ち、消費者(患者)の利益を最優先に考えた口コミサイトにする。提供者側(医者)にとってネガティブな口コミを載せない、ということは絶対にしないので、安心してご投稿いただきたい。

 
17:14 05/22 2015 | 固定リンク | コメント(2) | アクセス数(12374)


04/02 2015
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亡くなった社員が、かつて働いていた「魚民」。死亡時の勤務地は新橋だったという。
 「過労死、でましたよ、うちのお客さんで。長いこと『魚民』で働いてた人です」

 行きつけのお店で、開口一番、店主からそう聞いた。僕は仕事柄、飲み屋・寿司屋・理髪店などを重要な情報源としており、そのお店でも、ソニーやリクルートなど何人も現役社員を紹介して貰って取材している。

 だから、昨年、魚民に勤めているお客さんがいて、無茶苦茶に働いていて、無茶苦茶稼いでいるらしい、という話を聞いて、ちょうど私もワタミや、大庄の取材をしたところだったから、同じ“ブラック居酒屋”の大手として知られるモンテローザとあって、「紹介してくださいよ~」とお願いしたことがあった。

 そのときは「いつも忙しそうだからなぁ…」とのことで、実現には至らなかった。これで、二度と実現は叶わなくなったわけだ。死亡時、29歳という若さだったという。

 過労死は、たいてい心臓か脳を直接の原因とするが、『日本海庄や』(被害者=24歳)がそうだったように、20代の若者の場合は、急性心不全など、過労が心臓に来るケースが多い印象がある。

 記事風に書くと、以下のようになるだろう。

 2014年夏ごろ、モンテローザ五反田の寮で、29才の男性社員が亡くなった。遺族や関係者によれば、過労死だったが、詳しい病名などは不明。出勤してこないため不審に思った上司が寮の部屋に向かうと、床に這いつくばるようにして死んでいるのが発見されたという。

 男性は、学生時代から10年以上にわたって、『魚民』西小山店や浜松町店など複数の店で、ずっとアルバイトとして働き、バイトのまま店長のような仕事も任され、「社員にならないか」とたびたび勧誘を受けるなど、高い評価を得ていた。

 だが、自由な身分で転勤がない(品川区の実家から通える)メリットを優先させたためか、バイトのまま働き続けた。だが20代も後半になり、ついに正社員として正式にモンテローザに就職。間もなく、亡くなった。モンテローザは、立派な葬儀をあげた。

 最期の勤務先は“サラリーマンの聖地”新橋にある店での戦死となったようだ。「新橋は、ぜんぜん違うんです、何もしなくても、どんどんお客さんが入ってくるんですよ」などと、住宅地の店舗との忙しさの違いを語っていたという。

 生前の彼を知る店主はこう語る。
「いつも目の下にクマを作って、寝不足。魚民のアルバイト時代に、居眠り運転で、車を電柱に衝突させ、廃車にしたこともありました。私が魚民に行くと、いつもいい席を確保してくれて、親切な男でした。

 他店のヘルプに入ったりすると、やっただけ残業手当がつき、月収が70万円を超えたりするほどだというんです。20代でそれだけ貰って、やればやっただけ稼げるもんだから、面白くなってのめり込んじゃったのでは、という印象です。責任が重い正社員になってからは、キツくても断れなかったでしょうし。

 昨年夏ごろから店に来なくなり、年末になって、親族から亡くなったことを聞き驚きました。彼が好きだったパチンコのスロットとタバコでも供えに行こうかと思っています。いま思うと、正社員にならなきゃ良かったんじゃないかな…」

 本件のように、遺族が労基署や裁判所を舞台に争わない場合、過労死は、闇から闇へと葬られる。したがって、過労死は社会問題化してはいるが、その実態はどこにも統計上の数字に残らない。薄気味悪い日本の闇だ。

 会社側は、ワタミのようにちょっと頭がいかれてる創業者は社会を敵にまわして赤字転落に至るが、通常は空気を読んで、裏で穏便に済ませる。盛大に葬儀をあげ、誠意を見せ、金銭的な解決を図るのが一般的だ。騒いでも命は返ってこないし時間の無駄なので、遺族側も矛先を収める。

 しかし、それでは事実が表面化しないために、事態は深刻化していく。大企業にとっては、労基法を守ることによる人件費増のほうが、裁判所が決める命の相場(8千万円)よりも、はるかに大きいのだ。

 従って、1つの解決策は、この命の相場を、過労死が割に合わないくらいに法律で引き上げることである。もう1つの解決策は、私が常に主張しているように、虚偽報告に重い罰則をつけたうえで情報開示(過労死、過労自殺、うつ病、離職率、残業時間、有休消化率…)を徹底させ、有報とウェブ上に毎年掲載を義務付けることである。

※本件、問題意識を持っている関係者(モンテの現役社員、元社員なら誰でも)の情報提供を求めます。会社側も、隠匿せず、ワタミのようになりたくなかったら、積極的に情報開示して再発防止策を打ち出すべきでしょう。

連絡先フォーム

モンテローザ 月400時間労働、うちサービス残業140時間、さらに「親睦会」で給料から売り上げ立て…元店長が語る“ブラック居酒屋”の実態(09/18 2015)

 
22:49 09/18 2015 | 固定リンク | コメント(2) | アクセス数(9983)


03/20 2015
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左:東洋経済、右:THE21
 発売中の『THE21』4月号の「これから10年、伸びる業界・沈む業界」という記事で取材協力した。先月の『週刊東洋経済』に続き、またも『10年後に食える仕事 食えない仕事』で示したフレームワークの図を使いたいというので載せた。

 もう刊行から3年が経ったが、単行本自体が10万部売れて、この図も様々な雑誌にいまだに取り上げられ続けているのは、これが、日本人の仕事の未来を考えるうえで、極めて有効なソリューションだからだ。一言でいえば、「使える」のである。

 私は2004年まで5年ほどコンサルティング会社に勤務し、様々な分析手法に触れた。2011年に中国とインドに計2か月ほど滞在し、「グローバル化が進むと、日本人としての特殊性を活かせるかどうかが生き残りのポイントだな」と思うに至り、帰国後、講演資料として作成したのがこの図だった。

 コンサル会社はPPMのようなフレームワークを使って分析する。独自性の高い説得力のあるフレームを考え出し顧客を納得させることができると、「高いバリューが出ている」という評価になる。その点で、僕は社会に対して高いバリューを出した。しかし、コンサル会社が行う入社面接では、こういった能力はほとんど見ようとせず、即興の「ケース面接」ばかりで判断する。だから僕は戦略コンサル会社11社から不採用通知を貰っている。

 まったく同じことを思ったのが、ディベートについてだ。大学のディベートサークルに入ったら、いきなり即興ディベートばかりをやらされるので、こんなものは意味がない、と思って辞めた。その場でお題目を考え、すぐにYES/NOに分かれてディベートを始めても、じっくり調査したり考えるインプットの時間がないので、よいディベートなどできるわけがない。僕はものごとをじっくり考えてソリューションを考えたいし、本来、ディベートは物事の裏表を多面的に考えるためにやるのだから、即興ディベートなどゲームでしかなく、何の役にも立たないのだ。

 即興ディベートとケース面接は、その点で極めて似ている。どちらも、ものごとの本質はそこからは見えてこないし、より有効な問題解決にもつながらない。コンサル会社は、あの頭の回転速度だけを試す採用面接方法は、やめたほうがいい。即興型ではなく、僕のようなじっくり深堀型の人材こそ、コンサル会社で本来、使えるはずなのだから。


 以下、『THE21』4月号の私の原稿部分を転載しておく。

あなたの仕事はどう変わるのか?これから10年、伸びる業界・沈む業界
■キーワードは「IT」「グローバル」「高齢者」
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『THE21』4月号
 国内の産業はどうなっていくのか? 『10年後に食える仕事、食えない仕事』で日本人の仕事を論じたジャーナリストの渡邉正裕氏は指摘する.....この続きの文章、および全ての拡大画像は、会員のみに提供されております。
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計6ページ

 
03:31 03/20 2015 | 固定リンク | コメント(1) | アクセス数(2477)


03/09 2015
 ユニクロ新卒採用900人についてのツイートが拡散され表示回数が20万回超となっている。ずいぶんとこの問題(新卒大量採用の本当の意味)には、世間の関心が高いことがわかった。

 柳井社長が国内長者番付1位の資産家であることが、ちょうど先週報じられた、というタイミングもあっただろうし、先月、来日したピケティ教授がメディアに出まくって格差問題が意識されていたこともあるだろう。

 この日、一斉に各局の報道番組で流された「ユニクロ900人入社式」のニュースについて、それだけ多くの人が、胡散臭さを感じたわけである。「若者を使い捨てていく経営者が資産を増やしていく社会って、何かおかしいんじゃないか」と。

 私も、このような、スポンサー企業側からの一方的な視点でしかない報道姿勢にはうんざりしている。このニュースには、働く側の視点が全くない。他のコーナーでユニクロの大量離職問題が報道されることも全くないから、バランスが最悪だ。これは、多様な視点を求める放送法にも抵触している。

 しかし、柳井社長はもちろんそれを知っている。テレビ局が、巨大広告主である自分を批判できないことも知っている。だから、この「情弱使い捨て戦略」は、ユニクロにとって、極めて合理的なのだ。そんな労働環境でも、入社式にカメラマンの入場を許して報道させておけば、来年もたくさん採れてしまうんだから。

 マスコミは、情弱を洗脳する手段として、ユニクロの人事戦略に組み込まれているようなものだ。900人入社の報道を見る情弱は「成長が続いていて、ずいぶん景気がいい会社だ」としか思わない。入社数は報道されるが、離職率は一秒も報道されないからだ。

 ユニクロにしてみれば、ごく少数のスーパーマンだけが幹部候補として残ってくれればよく、残り大多数は、給料が安い20代後半までに辞めてくれて、また安い新人と入れ替わったほうが人件費を抑えられる。店舗仕事はマニュアルでガチガチに縛られた肉体労働だから、若くて体力があるほうが望ましい。オヤジもオバサンもいらない。

 使い捨てられることを知らずに入社する若者には気の毒だが、9割は使い捨て要員とみてよい。裁判でも認定されている通り、ユニクロは労基法を守らないし、「絶対にサービス残業はなくならない仕組み」(複数の元社員)だから、普通の体力しかない社員は疲弊し、持ちこたえられない。

 ユニクロは正式に最高裁がブラック労働を認定し、私も数多くの社員(ほとんど有名私大卒)を取材して、実態を報じてきた。ただ、弱小なニュースサイトの報道は、残念ながら情報弱者には届かない。

離職率3年で5割、5年で8割
ベテラン社員が語るサービス残業&うつ病
「柳井正は人として終わっている」
「これは軍隊以上だ」
ユニクロのバイオレンス経営
ブラック認定されたユニクロ
ジーユーもブラック

 この会社は、国内4182人の社員(別途、非正規が17708人)で国内831店のユニクロを回しているわけだが、しばらく国内は増やさず850店程度を維持する見通しのなかで、国内900人もの新卒正社員を採ったということは(海外は別途現地採用している)、離職率の高さを見越していることになる。

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有価証券報告書より
 パートを「地域限定正社員」に入れ替えていくために多めに採ったにせよ、非正規の人にだって生活があるので、勝手に辞めさせるわけにもいかない。

 既存社員の一部を海外展開要員として送り込むにせよ、そのようなクラス(SV以上)の人材は既に大量出店が続く海外に出ていて手薄だ。

 結局、大多数の新人は、数年で心身をすり減らして辞めていく人の穴埋め要員として活用され、自分も数年後に、部品のように取り替えられる。ツイートを見た社会人は、自身の経験からそのカラクリに気づいているから、ユニクロのPRでしかない入社式のニュースに違和感を感じたのだろう。

■「あと1人ずつ増やせれば」
 ユニクロは働く人から見たら、9割以上の人にとって、間違いなくブラック企業であり、ごく少数の超人的にタフな人にとってはよい会社である。

 一方で、ユニクロは消費者から見ると、100点満点な会社であり、私も高く評価している。完璧に訓練された社員による、完璧なオペレーション。店にはゴミもなく、品切れの補充も迅速で、レジのスピードも超トップ、店員は私語もなくキビキビ動き、店にはほどよい緊張感がある。製品は頑丈で日本人の体形にぴったり。ZARAやH&Mなど話にならない(→ユニクロはファッション店?)。

 まるでトヨタの工場なのだ。真面目で几帳面で手抜きをしない日本人の強みが如何なく発揮されている。ユニクロの後に訪れれば、アローズやGAPの店は、あらゆる点で二流に見える。

 しかし、そのレベルを保つための社員の労働強度は、半端ないものがある。過労死が多発してきたトヨタの現場と同じようなものである。常に120%で動いても終わらないだけの業務量が課され、普通に働くことは許されない。

 だから、取材の際に社員が口々に言うのは、「あと1人ずつ、各店舗に人を増やせるなら、すべてがうまく回るのに」という話だ。1人ずつ増やしたところで、利益は十分に出る。それで、働く人も、消費者も、株主も、オーナーも、十分にハッピーではないか。しかし、それを許さず、利益を極限まで追求するのが柳井社長なのだ。この手加減を知らない強欲ぶりだけは、残念でならない。

■情報ギャップを埋める法整備を
 問題の本質は、両者の情報ギャップにある。学生は、その企業の労働条件が全くわからないなかで、選択を迫られる。会社に離職率や有休消化率を聞いても、人事部はもちろん教えない。それどころか、×をつけられて不利になるはずだ。

 そもそも職歴のない学生が、百戦錬磨の人事に、強気で聞けるわけがない。ただでさえ大企業は、交渉力が強いのである。これは、全くフェアではない。

 だから、以下情報を、ウェブ上に開示するよう義務付けるべきだ。それで全てはカイゼンに向かう。労務部門が持っている情報をウェブにアップするだけだから、追加コストも一切かからない。政治家が法律を通すだけでよい。

 ・新卒の3年後離職率
 ・平均の残業時間
 ・平均の有給休暇取得日数
 ・休職者の数と理由
 ・労災認定数と内容

 それを見て、それでも働きたい人はユニクロで働けばよい。僕が取材した限りでは、ユニクロは、すべてこれらの数字は最悪に近いが、それでも店長の給料は業界トップだし、業界トップ企業のノウハウを身に着けて転職なり独立なり、次のステップに進みたい人もいるわけだから、そういう人は入社すればよいと思う。

 ただ、情報が開示されると、それまで押えつけられていたマスコミも、合法を盾に報じやすくなる。テレビや新聞はともかくとして、東洋経済やダイヤモンドのような経済メディアは、就活シーズンに見やすいランキング表を作成して特集を組む。そうすると、下位の企業にはブラックなイメージがついてしまうため、ユニクロとしても数字をカイゼンせざるを得なくなることは確実である。

 この情報開示義務は、過労死防止にもダイレクトにつながる。経団連は人件費増につながるために絶対反対だ。業界団体のための政治なのか、働く国民のための政治なのか、日本の国のかたちが問われる。

 残念ながら自民党は戦後一貫して、国民・生活者よりも、企業利益を優先させてきた。途上国の開発独裁型政党から脱皮できない今の自民党には、全く期待できない。ただ、次の時代を担う政権は、こういった情報開示の法律を公約に掲げられる政党以外は、ありえない。これができないのなら、自民党と同じであり、存在価値がないからだ。

 
11:08 03/09 2015 | 固定リンク | コメント(3) | アクセス数(4331)


01/01 2015
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アマゾンの“カビつきマットレス”は秘密主義で原因不明
 アマゾンの記事はずいぶん読まれているが、冒頭の「amazon.co.jpで商品を購入しても、配送業者を教えない、出荷されるデポの場所すら教えず『企業秘密』を貫く」について補足しておこう。

 3~4か月ほど前、アマゾンで、ほぼ同じ時期にマットレスを2つ購入したのだが、1つはパッケージを開けるといきなり黒カビが生えていて使える状態ではなく、その日はフローリングで寝ざるをえなかった。

 もう1つは、なぜか外箱がない状態で送られてきて(量販店に並んでるまま、ビニール1枚被った状態)、ホコリまみれだった。衛生商品の扱いとして、箱に梱包もせずに送りつけてくるとは、非常識すぎて唖然とした。

 いったいどういうことなのか、アマゾンのコールセンターに電話して、どのデポから送られて、どの配送業者が関わったのか、という基本的な事実関係を教えるよう尋ねると、「開示しておりません」「企業秘密です」「返品は受け付けています」と事務的な対応をされた。マニュアルがそうなのだろう。責任者に代われと言っても、同じことの繰り返しだった。

 こちらとしては、返品に時間をとられ、スケジュールを狂わされ、迷惑しているのだ。こういうときは、まず素直に事実経過をすべて客に説明して、「すみませんでした、原因を調査して再発防止します」と言えば、それで終わる。他社なら、長くても30分以内に完了するだろう。だがアマゾンは、いくら言っても、ごく基本的な情報すら開示しないので一向に解決に向かわない。

 最後に届けてきた佐川の路線伝票番号をウェブでたどると、市内に入ってからの配送業者が佐川であることは分かるが、その前(デポ~市内までのほうが距離は長い)が不明なのだ。その不明なところで問題が起きていて商品がカビたりするわけだから、客が知りたいのは当然である。

 私がしつこく聞くと、あとはメールで…と言い出し、一方的に電話を切られた。客に迷惑をかけておいて、最低最悪の対応だ。購入済みの商品が、どこからやってきて、どの業者が配送に関わるのか、など、他社なら2つ返事ですぐに答える。

 いったい、このアマゾンの異常な秘密主義は、なんなのだ?顧客満足(CS)の異常な低さは、どういうことなのか?あまりにも独善的である。

 外箱なしで送りつけてきた件についてメーカー(輸入代理店)側のフラグスポーツという会社に尋ねると、営業責任者だという藤田氏が、最初は「そんなことはありえない、調べます」と言っていたが、次の電話で「調べた結果、確かにアマゾンが箱なしで送っていることが分かりました」と事実関係を認めた。

 そして、「アマゾンには、箱をつけないのなら取引できない、という姿勢で強く言って、今後は、お客様には箱をつけて送付することで合意しました」と報告してきた。メーカーとしては、常識的な対応である。

 おかしいのはアマゾンだけだ。この件をアマゾンのコールセンターにぶつけると、なんと「この商品はそもそもメーカー直送だから、うちは梱包に関与していない」とトンチンカンなことを言い出した。そして、また「電話では答えない」と言い出し、勝手に電話を切った。もうこの会社は、終わってるとしか言いようがない。(※この話はすべて録音済み)

 ようは、オペレーターが訓練されておらず混乱しているのと、「企業秘密」などとマニュアル通りのお役所的な対応を繰り返すだけなのだ。クレーム対応としては、こんなことをしたら客のさらなる反発を食らうだけなのに、頭が悪すぎる。

 記事にも書いた通り、アマゾンジャパンのカスタマーサポートは、仙台と札幌にある。「基本的にオペレーションのことなんて何もわかっていない非正規社員が、大半の対応をしています。正社員は行きたがる人も少なく、人手不足なのです。しかし、その下には、現地で雇用した契約社員や派遣社員がたくさんいます。地域での雇用創出をお題目にしていますが、一般的な潮流にもあるように、要はコストカットの一環です。ここでも、CS(顧客満足)よりもマニュアル重視の姿勢をとっていますね」(元社員)

■公害企業の論理
 いまだにアマゾンは一言の謝罪もなければ、事実関係も隠したままだ。

 中間の配送業者を教えられないのは、誰も聞いたことがないような中小業者を使ってコストダウンしていることがバレるのを恐れているから、と推測できる。衛生商品に外箱すらつけないで送るのは、箱代の削減という、みみっちいコストダウンが目的であろう。

 いったいこの、独善的なコストダウンによる金儲け主義と非常識な秘密主義、電話でコミュニケーションすらできない最悪の顧客対応は、なんなのか?

 そんな疑問から、元社員への取材を始め、これはアマゾンのDNAなのだ、ということがよく分かった。アマゾンにとっては、客がどう感じようが、どうでもよい。顧客の満足は、顧客ではなくアマゾン側が決めるのだ。

 安く、速く、必要なものを届けさえすれば、それで最大公約数が満足するだろう、それ以外は切り捨てよう、という独善性こそ、アマゾンの考え方なのである。

 たとえば、100人のうち1人2人が不満(カビ、箱、配送業者、デポ…)を感じて返品しても、残りの客は、気が付かなかったり、気にしなかったり、返品作業が大変だから泣き寝入りしてしまったりする。それならば、コストダウンした金額のほうが上回るから、やってしまえ、何を聞かれても「企業秘密」で押し通そう、というのが、冷徹な株主資本主義を実践する企業の論理だ。

 これは、10年前に映画化もされた『ザ・コーポレーション』(早川書房)で詳しく説明されている。たとえば自動車メーカーで、一定の確率で事故が起きて人が死んでも、その訴訟で負けて支払う費用よりもコストダウン額のほうが上回るなら、事故が起きやすいことが予め分かっている部品に、冷徹に取り替えていく。すべては数字であり、損得計算なのだ。これは「経済の外部性(社会に負担を押し付ける)」の活用であり、公害企業の論理である。

 私のケースでいえば、返品にかかる客側の時間は二度と取り返せない貴重な時間だから、コスト換算できない損失であるが、そのコストがアマゾンに降りかかってくることはない。社会に負担を押し付けているわけである。

 アマゾンは「我々のやり方に不満があるなら返品すればいい」という姿勢だ。返品したって失った時間は返ってこないのだから、何の意味もない。そんなことは人間ならば、わかる。だが、その犯罪的な独善性に気づかないところが、『ザ・コーポレーション』でも説明されている通り、サイコパスなのだ。従業員は、“組織の人”になったとたん、人格がなくなり、人間的な対応はできなくなってしまう。

 いまだにアマゾンは事実関係の説明もなければ、嫌なら返品しろ、と言うのみ。カネじゃないのだよ。常識の欠落とか、時間の貴重さとか、一言あやまるとか、事実関係を報告するとか、人間らしい血の通った、ごく当り前の顧客対応を求めているのだ。

 このアマゾンの理念は、働く人たちに対しても貫かれていることが、取材してよくわかった。「アマゾンジャパンは血も涙もない会社でした」「数字でしか見ない」と元社員が言っていたが、まさにその通りだ、と思った。サイコパス(精神病、人格障害者)に人間らしい対応など求めても無理である。

 アマゾンは日本の(世界中の)小売り業を効率化し前進させてきたリーダー企業であり、社会にポジティブなインパクトを与えてきた面も、確かに大きい。書籍の当日配送など、評価すべきイノベーションを成し遂げてきた。私もその恩恵を受けてきた1人であることは疑いない。

 アマゾンは既に日本市場でダントツのシェアを持っているわけだが、本や電化製品くらいならまだしも、マットレスのような衛生商品を、カビた状態で送ってきたり、箱なしでゴミまみれで送ってきて、文句を言うと電話を一方的に切って平然としているサイコパスな組織であることも、よく知っておくべきだろう。

 「衛生用品やら家具やら、近年、取り扱いを始めたばかりのものは、まだノウハウが不十分なのでしょう」(元社員)とのことだが、客への迷惑を全く顧みないコストダウン&徹底した秘密主義は一貫しており、今後も変わらないだろう。

 サイコパスだからこそ空気を読まず前進できる、という点もあろうが、みなさんも消費者として、サイコパスがのさばり過ぎる社会のリスクも、よく考えてみてほしい。そして、社員として働くことを検討中なら、以下を熟読のうえ、判断していただきたい。

「アマゾンジャパンは血も涙もない会社でした」採用・年俸・評価・PIP…元社員が語る“合理的すぎてブラック”な人事管理

 
07:52 01/01 2015 | 固定リンク | コメント(4) | アクセス数(6423)



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渡邉正裕(WATANABE Masahiro)
(株)MyNewsJapan代表取締役社長/編集長/ジャーナリスト。ほぼすべての主要企業内ホワイトカラーに情報源を持つ。現役社員への取材に基づき企業の働く環境を一定基準で評価する「企業ミシュラン」を主宰。日経新聞記者、IBMのコンサルタントを経てインターネット新聞を創業、3年目に単年度黒字化。
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