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01/09 2019
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自転車中心の都市交通
 都市の魅力・実力は、様々なインフラ(都市基盤)の充実度が尺度となる。外国を旅する際は、自国と比較することで理解が深まり、日本も見えてくる。今回の滞在では以下はじめ多岐にわたって報告してきた。(◎=オランダの優れた点 ⇔ ×=日本に比べ劣っている点)

キャッシュレス決済インフラ
健康な食生活インフラ
生産性も賃金も高い労働者インフラ
未熟な外食インフラ
×不便極まりないトイレインフラ

 今回は、書き残したことを忘れないうちに、まとめてメモしておく。

■ベネチアと異なるアムステルダムの成り立ち
 アムステルダムは、運河や並木道、窓が多く幅が狭いビル、そして路上のトラム網と、実によく整備された機能的な街で、美しい。由来が「アムステル川をせき止めたところ(アムステルのダム:Dam in de Amstel)」からもわかるとおり、大半は干拓地だという。13世紀までは小さな漁村だった土地を、人間が人工的に築き上げて現在の街になったのだから、人間の創造力・想像力の賜物。 “リアルZOZO(造・像)タウン”なのだ。

 以前にイスタンブル(ギリシア語で「町へ」を意味する「イス・ティン・ポリン」 に由来)について書いたことがあるが、アムステルダムも、人名ではなく、街の成り立ちを由来とした強力な名称である。ただのダムではなく、高度に管理された運河に水を流し、美しい街を造って、人が住む。古い街を沈めて水を貯める日本の絶望的なダムとは真逆の発想だ。

 ここに中国人が住んでいれば碁盤の目のような街を設計したかもしれないし、日本人なら八郎潟のように埋め立てて農地にしたかもしれず、または都内の多くの川がそうなったように、土建屋の餌食になってコンクリで固めて蓋をされていただろう。日本の都市には景観の概念が欠落しており、治水しか考えてない。発想が途上国だ。

 アムステルダムを流れる運河は水位が高く、人間が歩く地面からごく近いところを流れている。これで大雨のときに氾濫しない水量管理の技術には驚く。災害に見舞われやすい干拓地を、人間が生活しやすいように、住民たちが話し合い、改善し、合理的な意思決定を重ねた結果が、今の美しいアムステルダムの姿だ。その協力&改善の社会インフラは、「ポルダー(=干拓地コミュニティ)モデル」と呼ばれる。オランダ人の本質が見えてくるような街である。

災害国家であり、みずから国をつくったオランダ人の歴史。これが、オランダの奇跡を「ポルダーモデル」(あるいは「オランダ モデル」)と呼ぶ所以である。ポルダーとは干拓地を単位とするコミュニティであり、災害で失われた土地を回復し、埋立地を 拡げるにあたって、各地域がイニシアティブをとりながら干拓地住民に自発的協力を要請したことに由来する。
――『幸せな小国オランダの智慧 災害にも負けないイノベーション社会』(紺野登著、PHP新書)

 同じ「水の都」で世界遺産のベネチア(直前に訪れた)は、もともと干潟のなかにあった島で、大量の杭を打って固めて造成し運河を整備したため、新たに干拓したわけではない。柔らかい地盤に重い石造りの街を築いたため、今も水没の危機が言われ、私も2週間遅く訪れていたら直撃を受けていた。どちらも美意識の高さは感じるが、とりあえず直近で住めればいいや的な楽観的なイタリア人と、計画性の高い合理主義的なオランダ人の違いを感じたのだった。

■◎自転車中心の都市交通インフラ
 オランダの風景といえば、事前イメージは、チューリップ、パプリカなど戦略的な大規模農業、そして水車…である。だが、アムステルダム・ユトレヒト・ロッテルダムといった主要都市をちょろっと訪れた範囲では、移動の電車内からも、チューリップは1本も見なかったし、水車などどこにも現れなかった。少なくともこれらは、オランダの日常風景ではなく限定的だ。

 鉄道の車窓風景は、のどかな牛の放牧が延々と続いた。オランダの国土は九州ほどの狭い土地だが、日本のような険しい山地はなく、平坦で住みやすい土地が広がり、あり余っている印象だった。

 気温は札幌くらいで、東京より若干低め。それでも欧州全般で見られるように、カフェやレストラン前の路上テラス席が充実していた。道路のテラス席設置については、店の経営者が行政側に申請して、使用料を払って使う仕組みなのだという。これはイタリアでも感じたが、日本にも、開放的な路上テラス(税金で作った道路の一部を飲食店に貸し出し、自治体の収入も増えて一石二鳥)で飲食する文化は、ぜひ取り入れてほしい。

ほとんど、どこが境目なのかわからない歩道と自転車道も

 今回、街の風景として一番印象的だったのは、交通インフラだ。オランダは、決済の中心がPIN(デビット)なら、交通の中心は圧倒的に自転車だった。国民の自転車保有率が世界一(1人あたり1.1台)で、人口よりも自転車の数が多いというのも納得だ。

 街を歩けば、そのコンセプトは明確でわかりやすい。一番エラいのは自転車で、市内交通は「自転車道」を中心に設計されている。次が、縦横無尽に走り回るトラムと、バス。そのあとが歩行者で、自動車は一番最後で、肩身が狭い。

 私が外国に行ってタクシーに乗らなかったのは、国としてはオランダが初めてだ(都市としてはベネチアには車道が存在しないため『水上タクシー』のみ利用)。オランダは地下鉄、国鉄、トラム、バスと、公共交通が発達しており、タクシーの必要性を感じなかった。滞在中、タクシーの存在すら忘れていた。

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僕が気に入ったのは、これ。子ども2人が乗れる大きな荷台つき自転車。
 歩道と自転車道の境界線がわかりにくい道路もあって、うっかり自転車道に入って歩いていたら、自転車の人から、「オイッ!」と何度も叫ばれた。Heyじゃなかった。「おい!」は日本語かと思っていたがそうでもないようだ。

 日本にも自転車道はあるが、自転車に乗っている人が少ないので歩行者も侵入して歩いている。だが、自転車人口が多いオランダでは、その感覚だと確実に事故る。観光地であるアムステルダム駅周辺は、フラフラと私のような旅行者が侵入するため、現地人にとって特に危険だという。

 この自転車道には、自転車だけでなく、バイクもすごいスピードで普通に飛ばしていて、これは接触したら本格的に死ぬな、と思った。法改正があるようで、「来年から規制が強化され、バイクは自動車道のほうを走ることになりそう」だという話を現地の日本人から聞いた。

 自転車中心社会なので、様々なタイプの自転車が走っていた。なかでも、前に大きな荷台がついたタイプが目立つ。乳母車のように子どもを載せたり、運送業者が荷物を載せている。クネクネした細い道が多い日本では操縦が難しいかもしれないが、日本でも走らせても快適そうだ。

 自転車を、そのまま電車内に持ち込め、車両内中央で固定する柱まで用意されている。日本の電車では、たとえばJRだと、解体するか折りたたんで専用の袋に収納しない限り、そのまま持ち込むことはできないルール。オランダはとにかく自転車中心である。

自転車は、そのまま電車内へ
 一昔前の中国は、完全に自転車が交通の中心だった。ベトナムは既に20年前から原付バイク(二輪車=HONDA)中心で今に至る。今の中国は、すっかり四輪自動車中心になり、EV(電気自動車)へと移行しつつある。一般的には、自転車→バイク→自動車→EVと進化を遂げるわけだが、一周回ってまた自転車、というところがユニークだ。

 なにしろ、運河を中心とした街の骨格、道路の幅は、500年前の馬車の時代にできており、変えようがない。平坦な国土における効率的な交通インフラを考えたとき、自転車中心に再構築するのが合理的な結論なのだろう。

■△チップカードの使い勝手
 地下鉄(メトロ)と国鉄(NS)は、日本のSUICA・PASMO同様、非接触式の「チップカード」(OV-chipkaart=オーフェイ・チップカールト)で料金を支払う。絵柄には水車が描かれているが、前述のとおり見かけることはなく、日本でいう「ゲイシャ」「フジヤマ」みたいなシンボリックな存在だ。

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交通系の「OVチップカード」。チャージできる。
 このチップは、オランダ企業フィリップスの「MIFARE方式」を採用しているとのことで、普段、「フェリカ方式」SUICAの超速&確実反応に慣れているためか、使い勝手はイマイチ。反応が鈍く何度もやり直した。SUICAは「日本の朝の殺人的ラッシュ時に改札で人を止めることなく確実に料金を徴収する」が基準となってスタートしているだけあって、あの異常な数の人間をさばけるということは、世界一の反応速度に違いないのだ。

 オランダの鉄道は、そもそも支払いの仕組みがわかりにくい。同じプラットホーム上で、国鉄(NS)から私鉄に乗り換える際にチェックアウト&チェックイン作業のタッチを、乗客が自主的に行う必要アリ、というのは理解し難い。どちらかを忘れてしまったり、タッチしたつもりが実は反応していなかったり。トラブルが起きやすい仕組みなのだ。

 マスを相手にする事業でこの仕組みをやってしまうと、絶対わからない人、忘れる人、ミスする人が出てきてしまう。一見さんである旅行者フレンドリーでは全くない。ミスが発生しえない仕組みこそが優れた交通インフラなので、その点、日本は大量の人数をさばいてきた歴史があり(利用者数世界上位を日本の駅がほぼ独占し、新宿駅はギネス認定)、その環境が優れたインフラを生み出したのだと実感する。

 ガラパゴス進化を遂げた日本の交通系ICは、コンビニやスーパーなど街中の支払いでも使えるし、反応速度も圧倒的で、さらにはスマホにも搭載されて一体化し、カード形式ですらなくなった。交通系の支払い手段としては、間違いなく世界一優れた決済インフラといってよいだろう。(非交通系電子マネーはデビットのオランダPINが世界一だと思う)

 日本への旅行者視点では、カード式の交通系ICを滞在中に買って貰い、そこにクレジットカードからチャージする機械が駅にあれば問題ないが、なんと現状はそれができない。

 外国人旅行者にとっては、いったん現金をおろして再度SUICAにチャージ、という二度手間がかかってしまう。日本のガラパゴスな現金史上主義は世界中の旅行者にとって迷惑なのに、このままの状態で東京オリンピックを迎えようとしているのだから恥ずかしい。

◇オランダが優れている点
 その他、オランダが日本より優れている点として、以下が報道されている。

「健康な食事」ランキング1位(日本は21位)――オックスファム調査2014年

◎子どもの幸福度1位(日本は6位)――ユニセフ調査2013年

年金制度ランキング1位(日本は29位)――マーサー調査2018年

 後半では、日本の優れた点も書き留めておきたい。

■「衛生インフラ」と外食に優れる日本
 日本のほうが優れている点をあげると、衛生面と外食関係が多い。日本は、衛生と外食のインフラにおいて、ナンバー1の国だと思う。どこかの調査機関が、こういった指標で世界ランキングして世界に配信したらよいと思う。おそらく日本が1位だろう。

①△食事の「お手拭き」問題
 これはカルチャー問題なので優劣は難しいが、オランダでもイタリアでも同じだった。基本、レストランではパンが付け合わせで出てくるのに、それを素手でちぎって食べる。これは普通に不衛生である。

 オランダにすむ日本人女性に聞くと、「自転車のハンドルを握って移動するので、手は汗まみれになる。そのままというわけにはいかないので、ウェットティッシュを持ち歩いている」とのこと。現地の人は平気みたいで、特に不衛生とも感じていないようである。

 コンビニ弁当やカフェのサンドイッチにさえ小さなお手拭きをつけてくれる日本の文化のほうが、神経質で過剰なのだろうか?確かに、手についたゴミやばい菌が食物と一緒に胃に入ったところで、赤ん坊でもない限り、健康に異常はなさそうだし、欧州でそのような健康被害が出ている話も聞かない。気の持ち方の問題なのかもしれない。

 旅行中、日本人が運営する寿司屋に1回だけ訪れたが(『EN』)、そこではさすがにお手拭きが出てきた。イタリアでもオランダでも、本当に、この1店だけだった。

②×水洗インフラ(トイレ、手洗い・水飲み場)
 日本の街中には、公園はじめ無料トイレがたくさんあって、無料の水飲み&手洗い場がある。フィレンツェの街を歩いていて、同じ感覚で公園の手洗い・水飲み場と公衆トイレを探していたら、30分以上まっすぐ歩いても見つからず、困ったことがあった。公園はあって、遊具は置いてあっても、「水回り」が全く存在しないのだ。

 この“水洗インフラ”の整備は、実は日本の極めて優秀な特徴であることがわかった。鉄道駅のトイレも当然、無料だ(記事に書いた通り)。身近にある常識には、海外に出ない限り、なかなか気づかないものである。

③△街中のゴミステーション
 オランダは街中にゴミ収集所がたくさんあって、けっこうなスペースを占有している。これは家庭から出るゴミで、このボックスに入れると地中にどんどん溜まっていって、ゴミ収集車が機械でまとめて引き上げ、中のゴミを回収していく。スマートではある。日本のように、決められた曜日(燃えるゴミは水曜と土曜、とか)の朝8時までに出せ、みたいな決まりはない。

 住人にとって、家庭から出るゴミ捨ての作業はラクなのか、インフラとして優れているのか。神奈川県からオランダに移住した日本人に聞くと、「日本と同じか、便利です。いつでも出せるから。ゴミ当番のような仕事もありません」。日本だと、地域によっては、町内会で順番に役割を決め、カラスに食われないように生ごみにネットを張ったり、片づけしたり、といった煩わしい仕事もある。ゴミを出したくても指定の曜日まで出せないストレスもある。その点、いつでも気軽に出せるオランダ方式は住民視点では優れている。

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ゴミステーション
 一方で、事業で出る法人のゴミは、行政と契約してカネを払うと回収される仕組みだが、運営がいい加減で、契約通りの時間や頻度で回収にやって来ないことが多いという。道端に散乱しているゴミを時折みかけるのは、その結果だろう(画像下)。

 日本は、街中に行政が設置するゴミ箱がなく、ゴミ袋も常時、路上にないから、日常風景として綺麗ではある。ゴミは各自が勝手に自宅に持ち帰るか、コンビニや駅で捨てる。これが諸外国では機能しない。道に捨ててしまうからだ。だから、ゴミ箱をたくさん配置して、せめてそこに捨てるよう促す。「ゴミ箱がなければ捨てない」のが日本人。「ゴミ箱がなければそのへんに捨てちゃう」のが欧州人、である。社会人として、日本のほうが優れている。だからワールドカップサッカーのスタジアムでゴミを持ち帰っただけで称賛され、世界で報道される。

 私はこの現象を、義務教育の恐ろしさを示す事例だと認識している。生徒が掃除するのが当り前で、小学校・中学校と、業者は教室を掃除しない。公立でも私立でも同じだ。これが欧州では全く違うという。NHKが、フランスの街頭で、日本の小学校の掃除風景を動画で見せて感想を聞いていたが(『日仏友好160年 とことんフランス!』)、全員がしかめっ面で「そんなことを子どもにやらせるなんてありえない」という反応だった。日本と真逆で、ゴミ掃除は、行政や業者の仕事、という発想があるそうだ。日本の感覚にそれはない。教育で身についた常識は、一生、ついてまわる。教育は洗脳、なのである。

 日本の街中の綺麗さを考えると、この洗脳教育は悪くないし、「自分のことは自分でやる、自分が出すゴミは自分で片づける」といった当り前の道徳観は、日本が優れている点と言えるのではないか。

④×飲食店の水準
 今のオランダでは、日本食プレミアムがある――複数の現地の日本人がそう言っていた。いつまで続くかはわからないが、確かに、日本食の店は繁盛していた。アムステルダムのラーメン店は増殖中とはいえ、まだ15店ほどで、そのうち日本人が経営する店は数えるほどに過ぎない。

 日本人経営ラーメン店の走りである札幌ラーメン『SORA』(2016年オープン)に行ってみた。店員7~8人は全員が日本人(または中国系?)だった。日本人とみるや、日本語で対応してくれる。席は30席ほど、19時の時点で空いてるのはカウンター3席だけ。私が出るころには外で待っている人がいたくらい繁盛している。客は全員が白人系で、総じて若かった。女性グループか、カップルがメイン。見渡すと、性別では女性が若干多いくらいだった。

 店内の装飾が、「北海道の田舎のほうにありそうな地場ラーメン店」をそのまま持ってきた感じを演出しており田舎くさいが、その“ダサローカル”ぶりが、いかにも日本ぽくて、現地の人にウケているようだ。クールではないが、ダサいままのほうが儲かるから、戦略的にズブズブの札幌感、日本の田舎色を演出する。アムステルダムという国際最先端都市で、これはなかなかできるもんじゃないな、と思った。

 オーナーの藤田氏は、長男の名前を店名に冠し、麺は北海道から空輸と、気合十分。クラウドファンディングは苦戦してぜんぜん集まらなかったようだが、それでも「パリでフランス料理のお店の料理長として働いていた時、ヨーロッパにおけるラーメンブームを肌で感じ、独立を決意」という肌感覚は正しかったようで、開業2年あまりで、今や3号店ができる勢いだという。

 実際に現場を見て、「ビジネスとしては、大きなマーケットの流れ(=ラーメンブーム)に乗ることが圧倒的に正しいのだ」と、心底、実感した。僕は『どさん子ラーメン』ファンで、実家の近くにも大学の近く(湘南台)にも店があったので、ずっと食べて来た。SORAのラーメンは、味も内装も、ごく普通に札幌の郊外ロードサイドにありそうな、札幌味噌ラーメン店に仕上がっていた。

 『極上札幌黒味噌ラーメン』(17.5ユーロ=2,275円)を食べた。ラーメンを食べるのに水は必須だが、水200mlの2.5ユーロ(=325円)は納得性が低いので、キリンビールの小ボトル(3.2ユーロ)と、ウーロン茶(2.7ユーロ)を頼むことに。久しぶりに白米が食べたいということで、小ライス(2ユーロ)もオーダー。餃子(5.2ユーロ)も食べた。会計は34.8ユーロ(4,524円)だった。

 ビールとウーロン茶を飲み干し、最後に、水を一杯、飲みたくなった。でも、水に300円と考えると、バカバカしいのでやめた。水なんてタダで飲み放題だろう――というのが日本人の感覚だが、オランダでその常識は通用しない。4,500円払っても水さえ自由に飲めないストレス。それでも満足して帰ってくれるのがオランダ人の外食レベルである。

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日本人経営のラーメン店として先がけの『SORA』
 あ、これはボロ儲けできて笑いが止まらないやつだ!海外には、こんな世界があるんだな――と実感した。いくら材料の一部を空輸しているといっても、2~3倍の価格で売ってなお、行列ができる。マーケットの大きな流れには、誰も逆らえない。藤田氏の感覚は正しかったわけだし、ビジネスセンスがある人だと思う。味もサービスレベルも、日本の半分くらいあれば十分、ボロ儲けできそうな印象を持った。

 日本人の感覚では、味が同じか少し劣るくらい(現地の食材を使うので当然そうなる)で、価格は2~3倍、水一杯300円なのだから、不満を持って当然。だが、オランダ人客のマーケットでウケて、儲けを最大化すべく戦っているのだから、日本人など無視してよい。一番手で進出したメリットで、競合もいない。満足度が低水準なオランダ人にとっては、これがクールなのであって、繁盛しているわけである(グーグルの口コミは4.5、フェイスブック4.9)。どれだけオランダの外食文化が貧弱で低レベルなのか、いかに日本の外食産業が世界一か、を思い知ることができた。

 イタリアのローマでも、『Ramen Bar Akira』でトンコツラーメンを食べたのだが、こちらも同様に、女子会、カップル、ファミリー、8人ほどの宴会、で満席となっており、19時まででよければ、と時間制限つきでやっと入れたほど。味は、もっとも正統派なトンコツラーメンで、やはり価格は2倍だった。ヨーロッパでは、日本のラーメンがいま、大人気なのである。

 ようは、こういうことだ。日本人の内向き志向が言われて久しいが、とにかく(居心地のよい)国内から出たくない料理人が多すぎることで(他国に比べ)、人口が減少に転じている日本国内では、日々、消耗戦が繰り広げられている。海外は需要が高まっている成長市場であるが、中華系のオーナーがやると、どう頑張ってもニセモノにしかならない。だから、日本人が乗り込めば成功しやすい。単純な話だ。“ローリスク&ハイリターン”のチャンスがこれだけ転がっているのだから、若い人は、もっと欧州市場に挑戦したほうがよい。

 現在、リスクとして顕在化しつつあるのは、日本人スタッフの雇用確保問題だそうだ。個人事業主ビザで入国し、実際には飲食スタッフとして働いている、という実情は、現在は黙認されており、見たところ、『SORA』の店員も大半がそうだった。だが、「収入が飲食スタッフ1種類しかない人は、業務委託を受けている個人事業主としては認めない」という規制がかかりそうで、いつからそうなるかはわからないが、飲食経営者の間では、それが共通の話題なのだという。バイト労働者は日本でも個人事業主とは認められないので、本来の姿に戻るだけ、ではある。

 そうなると、日本人スタッフの大半は強制帰国となり、新たにオランダ人スタッフを雇う必要が生じて、一時的にオペレーションに支障がでる。外国人は、景気が悪くなると排斥にあう。行政の裁量次第で、グレーゾーンの日本人は帰国させられる。日本でも、かつてたくさん働いていた出稼ぎイラン人(上野公園でよくみかけた)は、バブル崩壊後の1992年に「ビザ免除」を終わらせ、帰国させている。

 いざとなれば自国民優先なのは万国共通。そういうリスクを背負っている以上、稼げるときに稼いでおかないと潰されてしまう。外国人はツラいのだ。

⑤×コールドチェーンインフラ
 飲食店の質を考えるうえで、切り離せないのが食材の調達ルートである。オランダやイタリアはどちらも海に面しているので、魚貝類はそれなりに旨いのかと思っていたが、現地に行ってみて、まったくそんなことはなかった。欧州は生牡蠣を食べる文化があるので期待していたが、高いだけで味は普通、サイズも全て小粒だった。日本の北海道(厚岸、昆布森)産と比べると明らかに大きさも質も劣る。養殖技術の問題だろう。2倍の価格で、量も質も半分。つまり、日本の牡蠣は欧州に比べ、4倍の付加価値はあるな、と思った。

 世界中から最良のものを仕入れる魚貝流通大国の日本に比べると、イタリアでもオランダでも、地場で獲れるものだけを食べる、という印象が強かった。したがって、飲食店で出てくるメニューが、地場の市場に並んでいるものと一緒なのだ。アイルランド産の本マグロは、距離が近い欧州では消費されず、高い値がつく築地(豊洲)を通って日本の和食店で出される。

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上:『EN』 下:『シーフードバー』
 だいたいどこでも置いてあるのが、北欧から全世界に輸出されている養殖サーモン、スペインなど欧州産の養殖マグロ、イカ、タコ、正体不明の何らかの白身(スズキ等)、手長エビ、ムール貝くらい、だった。

 前述の『EN』(2人で234ユーロだった)は、ホテルオークラアムステルダムの高級和食店出身の日本人2人が運営しているとあって、それなりの味であったが、仕入れだけはどうにもならないようだ。

 2人に話を聞くと、「ハマチだけ日本から輸入しています」「マグロは畜養。天然モノは規制があって地中海では獲っちゃいけない」などと言っていた。調理や盛り付けは一流だが、何分、食材が貧弱なのは致し方ない。

 前述のNHK番組『日仏友好160年 とことんフランス!』で、一流の料理人が、活〆(ikejime)のおいしさを伝えようと、漁師に生け捕りさせて生きたまま内陸のパリまで輸送し、神経ジメで死後硬直を遅らせて鮮度を保つ技術を現地の料理人たちに教えている場面があったが、漁師から飲食店までのコールドチェーンがない以上、末端の職人だけではどうにもならない。この魚貝インフラは、圧倒的な日本の強みと言ってよい。

 ここ数年で市内3店舗に増えたという人気の『The Seafood Bar』(2人で155ユーロだった)も訪れたが、見た目は派手ながら、中身(質)が残念な感じ。冷凍食品のように、旨味が消えている。盛り合せにザリガニが入っているのは欧州らしい(スウェーデンでは普通の食材だという)が、貝もエビも身が痩せていた。

 シーフード専門店自体が、ここ数年で出現し始めたばかりという草創期のステージなので、こんなものだろう。それでも、平日夜で、ほぼ満席状態なのだった。アムステルダムの外食文化は、日本の高度成長期の走り(1960年代)のごとく、まだまだこれから、という印象。オランダのシーフードおよび日本食事情がどう進化していくのか、楽しみである。

 
10:16 01/13 2019 | 固定リンク | アクセス数(4048) | ブログトップへ | <<前へ | 次へ>> 

コメント
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EdgarDok  06:43 04/04 2019
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(株)MyNewsJapan代表取締役社長/編集長/ジャーナリスト。ほぼすべての主要企業内ホワイトカラーに情報源を持つ。現役社員への取材に基づき企業の働く環境を一定基準で評価する「企業ミシュラン」を主宰。日経新聞記者、IBMのコンサルタントを経てインターネット新聞を創業、3年目に単年度黒字化。
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