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若者雇用促進法が促進するのは「正直者がバカを見るアンフェアな社会」

情報提供

就活生への「若者雇用促進法」に基づく情報開示についての記事は、はっきりと企業側の態度が二分され、なかなか興味深い結果だった。

ようは、相変わらずの「努力」義務で罰則もないため、「正直者がバカを見る社会を促進する」という悪法になっていることがわかったのだ。

この5社はいずれも、いわゆるブラック報道で有名な会社なので、離職率も高い。働く人を選ぶ会社だ。体が弱い人が間違って入ると、過労死リスクが高い。だが、企業側としては、新入社員の3年内離職率を開示してしまうとマトモな人が入ってこなくなるから、開示したくないのだ。

それでも、ワタミ、ゼンショー、ドンキは、ブラック企業報道で批判を浴び、この法律が、まさに自分たちみたいな会社のために作られた法律だということを自覚しているから、やむなくも、きっちり応じた。ここで応じないと、どこでどう叩かれるかわからないからだ。既に痛い目にあっているから、これ以上は避けたい。

ところが、ユニクロとナガセは、情報開示を求めても、まったく応じない。今のところ、莫大な広告宣伝費によってマスコミを抑え込むのになんとか成功しているし、業績への影響もないからだろう。不利な情報は隠したまま、学生を騙して入社させてしまったほうがトクだ、入社後に洗脳して、数年で辞める奴がいても、使い捨てて、また次を採用すればよい、と考えているのである。

厚労省の担当者は「離職率が開示される世の中を目指す」と取材で答えている。たぶん現場の役人は、本当にそう思っている。政権与党の自民党も、共産党がブラック企業批判などで躍進した前回衆院選(2014年12月)結果をふまえ、何かしらの対策を打ち出しておきたい。でも、支持母体である経団連はじめ経済界は、余計な情報提供を義務付けられるのは絶対反対だ。

その結果、すっかり骨抜きされた「やったふり」法案になり、相変わらず、国がブラック企業をかくまっている構図が続く。正直に情報を開示したら若者を採用できなくなった、隠しておいたほうがよかった、という結果を招きかねない、「正直者がバカを見る」という構図になっている。

民主党政権時に、役員報酬額の公開(有価証券報告書)が義務付けられたが、連合の支持を受ける民主党も、労働環境に関する情報開示はやる気がない。なぜなら、ユニクロやナガセをはじめ、ブラック企業には労組なんか最初からないからだ。

連合は、カネと雇用には興味があるが、労働時間や離職率には興味がない。大企業労組の年寄り集団である連合にとって、若者の労働環境など優先順位の一番下のほうだ。

この法律に対する姿勢をみれば、その政党が主に誰の利益を代弁するのか、がはっきりわかる。一番ダメなのは、やったふりすらしなかった民進党。自民はやったふり法案を施行しただけマシだが、経団連の利益を優先し、「努力義務」以上には改善されそうにない。現状、若者の利益を代弁する政党が、共産党以外にないのは問題だ。おおさか維新あたりは、ぜひこの問題に取り組んでほしい。

答えはわかっている。「努力義務」ではなく、以下情報を「重い罰則つきの開示義務」とし、上場企業については有価証券報告書への掲載を義務付ける。そのように変えるだけで、この法案は、ブラック企業問題の解決におおいに役立つものとなる。

【開示を義務付けるべき情報】

・新卒採用数とその3年後までの離職者数を過去3年分
・過去1年の残業時間の分布と全体平均
・過去1年の有給休暇消化数と消化率の分布と全体平均
・過去1年の育休、育児短縮時間勤務の取得者数
・過去10年の労災認定事項すべて

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就活生は無知2017/05/27 14:55
電波オークション2016/04/24 12:05
 2016/04/20 23:54
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