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休日が受験勉強に消えるID社の強制“自己研鑚” ITエンジニアを追い詰める“資格ハラスメント”の実態

情報提供
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東京都千代田区にある、インフォメーション・ディベロプメントの本社(撮影=筆者)。
 合格率10~20%台と難関ながら実用性については疑問の声も多い、IT技術者のための国家試験「情報技術者試験」。特定派遣業を営むIT企業「インフォメーション・ディベロプメント」(JASDAQ上場)では2012年11月、「社員の自己啓発」を建前に、この資格取得を人事制度に導入した。受験番号の会社への報告まで求められ、試験に合格できなければ降格となり、受かるための対策コース受講費や受験料も全額、社員の自腹。180~200時間を要する試験勉強は、あくまで業務時間外に行うべし――。こうした一方的な命令によって、社員たちは土日祝日も受験勉強に追い立てられ、疲弊しきっているという。「賃金も下がって蓄えもできない。辞めるに辞められず、地獄のような状況」と嘆く同社の現役社員に、シカハラ(資格ハラスメント)の実態を聞いた。
Digest
  • 国家資格試験不合格で降格処分に
  • 「自己啓発」と謳いつつ事実上強制
  • 合格率10%台の難関試験
  • 「実務には役立たない資格」と仕分け人も指摘
  • 「試験勉強は業務時間外に」
  • 「自宅への立ち入り調査」も強要か

国家資格試験不合格で降格処分に

「平日の夜は残業で勉強の時間などめったに取れませんし、必然的に土日や祝日を資格試験の勉強に充てなければならなくなりました。家族と過ごしたり、心身を休めるための時間は、もう2年近く持てていません。正直、今は毎日がつらいです。何を希望に生きていけばいいのか、わからなくなっています」

沈鬱な表情でそう呟くのは、中堅社員のITエンジニア・中西さん(仮名)だ。

中西さんの勤めている株式会社インフォメーション・ディベロプメント(本社東京都千代田区、舩越真樹代表取締役社長、以下ID社)は、IT関連のエンジニアを雇用し、メーカーなどクライアント企業に派遣する特定派遣業者。グループ全体で2000人を超す従業員を抱え、2013年3月期には164億4603万円の連結売上高を達成、04年にはJASDAQ上場を果たしている。

そのID社に11年12月19日、「キャリアパス制度」なる人事規程が導入された。ID社では従前より、派遣するエンジニアを技能レベルごとに6階級でランク分けする「等級制」を実施。賃金もそのランクに応じて支払っていた。「キャリアパス制度」の導入によって、この昇格、降格に関するルールが、全面的に改められたのである。

そしてこの査定においてとりわけ重視されるようになったのが、「基本情報技術者」「応用技情報技術者」など、経済産業省が検定する「情報処理技術者」の資格(ITの国家資格)だった。ID社では社員ごとに取得すべき資格を会社側が指定。エンジニアの場合、最も低い6等の社員であっても「基本情報技術者」を取得しなければならないとされ、取得しないうちは昇格対象にすらならなくなった。

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53人の降格者を出した際の通達。4等級→5等級への降格が一番多い。昇格者も96人いるが大半は一番下の5等級への昇格。

また6等から5等への昇格には「応用情報技術者」、4等級への昇格にはネットワークや情報セキュリティの「高度スペシャリスト資格」と呼ばれる資格が必要とされ、その時点ですでに5等以上の社員がこれらの資格試験に落ちた場合は、下の等級への降格もありうる、と通達された。

実際にID社では、導入から1年を過ぎた2013年7月1日の辞令で、96名が昇格した一方、降格処分となった社員も、実に53名に達している(左記「通達」参照)。

ID社は筆者の取材に対し、「試験の不合格により降格処分になった社員もいるのは事実」と認めているが、一方で「弊社の人事権の裁量の範囲内で行ったものであり、不利益変更にあたるものではない」との認識だという。

「自己啓発」と謳いつつ事実上強制

降格も伴う人事考課の根拠として、現に資格の取得が機能しているにもかかわらず、ID社は筆者の取材に対し、「(資格の取得は)社員自身が個々に行う自己啓発であり」「社員のキャリアアップに役立つものとして推奨している」、「強制にあたるものではない」などと主張している。

だが中西さんらID社の社員にとっては、これは会社から命じられて受けた、業務命令以外の何物でもなかった。

「キャリアパス制度導入の通達が出された翌2012年1月には、品質管理部から資格試験の通信教育・eラーニングを受講するよう求める新たな通達も出されました

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「有料」の研修に参加を要請するかのように読めるアンケート。

情報技術者試験が俎上に載せられた、2011年11月23日の行政刷新会議「事業仕分け」の模様。写真はU-STREAMの行政刷新会議のチャンネルより。

早期退職の募集告知

「自宅への立ち入り調査」を認めさせる誓約書

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hitoriyokozuna2014/04/20 16:50

合格率一割弱。実際この稼業は土日が稼ぎどきやのに日曜開催、しかも年に二回って、ほんま職人なめくさってますわ。

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jt_noSke2013/07/26 06:09

ふーむ

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匿名2013/12/26 12:09
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