My News Japan My News Japan ニュースの現場にいる誰もが発信者のメディアです

ニュースの現場にいる誰もが発信者のメディアです

健全な社会とは 『13歳のハローワーク』

情報提供
ReportsIMG_I1084619615026.jpg
 幻冬舎刊『13歳のハローワーク』が100万部を突破するベストセラーとなった。昨年11月末に発行されたこの本は作家村上龍氏が514の職業を紹介している。やりたいことを仕事にする、がテーマ。この本の主張から見られるのは逆に今の社会の閉塞感だ。

村上龍『13歳のハローワーク』の売れ行きが好調だ。5月14日には100万部を突破したことが報道された。《「いい大学を出て、いい会社に入れば安心」という時代は終わっている。好きなことを仕事にして人生を充実させるために》と帯にあり、各学校教育機関が購入したこともベストセラー入りを後押しした。

この本には514の職業が紹介されている。しかし、そこから見えてくるのは結局のところ成功・自己実現のためには職業しかないという固定された価値観だけだ。自分とは何か?という問いに対しての回答は職業だけではないはずだ。

例えば、いま芸術家を目指す人間は少ない。なぜならそれは職業にすることは難しいからだという。ヨーロッパでは素質のある若者にはパトロンがついたり、芸術的素養を伸ばすために国や、企業からのバックアップがつく。しかし、日本ではそれは不可能なことだろう。なぜなら働くことが当然のこととされ、働かず文化的な行為をすることは無駄なこととされる社会だからだ。

働かない、職業から外れることは異質なことだろう。日本では異質なものを排除しようという傾向が非常に強い。それはオウム事件を生んだ土壌をみればあきらかだ。そして社会というものは本来であればそういった異質なものを受け入れる受け皿をもっていなければならない。進路を選ぶ際にも抜け道が多ければ多いほど、その社会は健全で開放されている社会と言える。この村上氏のいうような『好きなことを仕事に』という価値観は、もしそれが仕事にできなかった場合に勝ち組と負け組に別れさせてしまう危険性をはらんでいる。

 仕事に興味をもっていなくても、それがその人にとって間違いであるということにはならないはずだ。嫌々仕事をしている人でも、その人の人生が価値のないものだということにはならない。そしてそのことを本当にいわなければならないのは、日本の高度経済成長を支え、好きでもない労働を過酷に続けてきた中高年の世代なのだ。

はてなブックマークコメント

もっと見る
閉じる

facebookコメント

読者コメント

清水みなほ2015/12/28 12:40
清水みなほ2015/12/28 12:34
ネコロンブス2009/01/16 08:55
日本のビール2008/02/01 02:51
恭介2008/02/01 02:51
ゲルソン博士2008/02/01 02:51
安全で美味ければ良し2008/02/01 02:51
yuu2008/02/01 02:51
ちょうさん2008/02/01 02:51
二日酔いは2008/02/01 02:51
体質によるのでは2008/02/01 02:51
まさひろさんへ2008/02/01 02:51
まさひろ2008/02/01 02:51
疑問です2008/02/01 02:51
ほう2008/02/01 02:51
読者A(その4)2008/02/01 02:51
読者A(その3)2008/02/01 02:51
読者A(その2)2008/02/01 02:51
読者A(その1)2008/02/01 02:51
傍観者2008/02/01 02:51
居酒屋おやじ2008/02/01 02:51
hiro2008/02/01 02:49
ria2008/02/01 02:49
取材不足本2008/02/01 02:49
※. コメントは会員ユーザのみ受け付けております。
もっと見る
閉じる
※注意事項

記者からの追加情報

職業カタログとしては非常に有効な本であるし、良書ではある。ただアイデンティティーの確率を職業に固定化する風潮には違和感を感じる。